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» 2020年09月24日 10時45分 公開

「工場建設が最善策なのか?」:米国製造業の国内回帰、活発化の一方で疑問の声も

米国の半導体製造の復活に向けて補助金の水準や研究資金の割り当て方法を検討する議会が開催される中、連邦政府の助成金と税控除を受けるためのロビー活動が活発化している。ただし、米国の半導体製造の復活に向けた取り組みは超党派から支持を得ているにもかかわらず、観測筋からは、「米国の工場新設に助成するよりも、次世代半導体技術に焦点を当てた研究の方が投資対象として優れている」という見解が示されている。

[George Leopold,EE Times]
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 米国の半導体製造の復活に向けて補助金の水準や研究資金の割り当て方法を検討する議会が開催される中、連邦政府の助成金と税控除を受けるためのロビー活動が活発化している。

 米国の厳格な輸出規制によって本格化したこれらの取り組みは、製造工場の設備改革や、新しい工場の建設といった“対抗措置”とともに、中国の半導体産業の強化を阻止することを狙いとしている。

 ただし、米国の半導体製造の復活に向けた取り組みは超党派から支持を得ているにもかかわらず、観測筋からは、「米国の工場新設に助成するよりも、次世代半導体技術に焦点を当てた研究の方が投資対象として優れている」という見解が示されている。米国国防総省の研究プロジェクト「Electronics Resurgence Initiative(ERI)」は、ムーアの法則の先を見据えている一方で、兵器にも注力している。

 いずれにせよ、米国の半導体セクターの復活に向けた法案と業界のロビー活動は、「半導体技術における米国のリードは失われつつある」という地政学的な現実を浮き彫りにしている。

 米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)や情報技術イノベーション財団(ITIF:Information Technology & Innovation Foundation)などの業界団体は最近、米国の半導体製造強化に向けた法案「CHIPS for America Act」のような提案を最終段階に進めるための取り組みを強化している。

 ITIFが発表した報告書は、「半導体の技術革新と製造にかかる費用や複雑さ、規模は増大しており、一国や一企業だけで取り組むのは不可能だ」と締めくくっている。

 ITIFのグローバルイノベーションポリシー担当バイスプレジデントで同報告書を作成したStephen Ezell氏は、「中国からの課題に直面する中で、半導体分野での同盟国との協力が非常に重要になっている」と付け加えた。

 SIAは別の調査報告書で、「製造拠点の減少や縮小に伴って、米国の半導体産業は、人工知能や量子コンピューティングを実現する次世代半導体の開発に不可欠な製造プロセス技術やアーキテクチャ、材料の最前線を維持するのが難しくなると予想される」と述べている。

 SIAによると、米国では現在、70の商用向け半導体工場が稼働しているという。これらの施設は、米国内のウエハー生産能力の約44.3%を占め、その多くはフロントエンドの半導体製造に分類される。しかし、米国を拠点とする工場の生産量は世界の半導体生産量のわずか12%で、1990年の37%から減少している。

 SIAは報告書の中で、「連邦政府が強力なインセンティブを付与することで、米国内に19もの大規模半導体製造施設を生み出すことができる。そのためには、米国は合計500億米ドル規模の製造助成金の支給と税控除を実施する必要がある」と主張している。

 一方、ITIFは、欧米諸国間の協力的なアプローチを提唱している。「志を同じくする国々で、貿易を開放し、公正な経済競争を行い、それぞれの半導体産業の競争力を集団的に強化する方法で協力すべきである」とEzell氏は述べる。

国内回帰を疑問視する声も

 だが一部の業界観測筋は「製造業に重点を置くのは見当違いだ」と主張する。

Chris Miller氏

 米Tufts UniversityのFletcher School of Law and Diplomacyで助教授を務めるChris Miller氏は、「より多くのインセンティブがあれば、製造業においてより多くのオンショアが奨励されることは間違いない」と述べつつ、「問題は、これが正しい目標かどうかだ」と付け加える。

 「米国の半導体製造拠点が強化されれば、エコシステム全体にとって良いのは明らかだ。だが、長期的に米国の半導体産業を促進するために資金を配分する必要があるならば、限界的なドル(marginal dollars)を工場への助成金として使用するのが果たして最善の策なのかは分からない」(Miller氏)

 Miller氏は、1980年代の米国におけるDRAM市場からの撤退を例に挙げている。例えばIntelは、プロセッサのような(当時の)新興市場に集中すべく、DRAM事業で助成金を得るのではなく、DRAM事業を手放した。

 「Intelなどは、より付加価値の高い製品に注力し、数十年にわたる米国チップの優位性を確固たるものにした。米国の技術的地位を強化したいならば、どこに競争上の優位性があるのかを考慮する必要があるのではないか」(Miller氏)

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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