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光トランシーバーForm Factorの新動向(2) 〜PCB上に搭載する光伝送技術を知る(13) 光トランシーバー徹底解説(7)(3/3 ページ)

» 2020年09月28日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]
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光インタフェースの定義

 光インタフェースの定義面、いわゆるMedium Dependent Interface(MDI)はフロントパネルに設置される光コネクターの接続面である。MDIは光コネクター種類とファイバーの光信号の配置で定義される。COBOではピッグテールあるいはパッチコードで光送受信部とフロントパネルが接続されるため、MDIの自由度が高い。このため、さまざまな光インタフェースを想定して定義されている。

 光コネクターとしてはMPO(12芯)、MPO Two Row(24芯)、MPO-16(16芯)、MPO-16 Two Row(32芯)、Dual LC、Dual LCx2、CS、CSx2を使用できる。またそれぞれのファイバーの光信号の配置も定義している。それには双方向光通信のBiDiも含まれる。図13にSingleの場合の光信号の配置を示す。図13では16ch パラレル光インタフェースの標準がないため定義されていない。しかし、必要となれば32芯MPO(MPO-16 Two Row)の適用が容易に想像できる。図にはしなかったが、Dual Independentの場合も類似の配置が定義されている。

図13 光コネクターと光信号の配置 (クリックで拡大)

 COBOでは、Management InterfaceにSFP系列と同様の2-wire Interface(TWI)を採用しており、SFF-8636が参照されている。Memory mapはCommon Management Interface Specifications, CMIS(CIS)で定義されている。

Form Factorが多いCOBO

 以上がCOBOの概略だが、Form Factorが多いことに気が付く。

 Microsoftは100Gを使用したAzureデータセンターでRegionalというコンセプトを導入し、ハイパーデータセンター間を、いわゆるData Center Interconnect(DCI)としてDWDM高速ネットワークで接続した。その時、DWDM光トランシーバーをデータセンター内の100Gと同じForm Factor、QSFPで実現することを要求した。柔軟なシステム運用を実施するために、Regionalを実現するスイッチのスロットにDCIかDC内光トランシーバーかの区別をつけず、その時の最適なネットワークを構築したり拡張したりできるようにしたのだ。

 同じコンセプトで400Gデータセンターを実現しようとすると、DCIにはデジタルコヒーレント受信方式(単にコヒーレントという)の導入が必須であった。当時、高速DSPを使用するので消費電力が30Wとも50Wとも言われた400Gコヒーレントを、400G FP Pluggableで実現するのはかなり困難と考えられていた。まして、さらに先の800G、1.6Tでは不可能と思われた。

 そこで、サイズ2×3インチの低消費電力短距離からサイズ5×6インチの大消費電力長距離の光トランシーバーを同じ基板上に搭載できた、300-pin MSAのコンセプトを導入することにしたのだ。このため、COBOではコヒーレントとデータセンター内光トランシーバーのForm Factorが議論された。

 そうして30Wまで許容できる8ch COBO仕様が出来上がることになる。400GZRではDSPの消費電力がQSFP-DDやOSFPに搭載できるほど低減されたが、800G、1.6Tでは、恐らくまだ難しいだろう。この時にはCOBOしか解がないかもしれない。

 だが、消費電力の大きなコヒーレントと共通仕様にするために、データセンター内のトランシーバーとしては小型とは言えず、32個を搭載するにも苦労するサイズとなってしまっている。類似のことは300-pin MSAでもあり、小型の200-pin MSAが結成されたがこの時は主流にはなれなかった。これを踏まえ、冷却系の見直しや高速小型コネクターの採用などで“小型化OBO”の登場もあるかもしれない。これは次に述べるCo-packaged Opticsの技術開発や移行時期にもよると考えている。

 標準化されたCOBOだが、製品化の動きは小さいようだ。技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)やAOIによる試作が発表されている。いずれも、400Gあるいは800Gを狙ったものだ。図14に発表されているCOBOを示す。

 市場では400G OSFP/QSFP-DDのハイパースケールデータセンターでの大量使用が始まり、800GもOSFPあるいはQSFP-DD800で開発競争が始まろうとしている。先にも述べたがOBOはFP Pluggableの限界が見える1.6Tがクロスオーバーではないかと考える。特に、Co-packaged Opticsとの競争においては、データセンター間接続(DCI)用トランシーバーと置き替え可能であるという点から、OBOが優位にある。ハイパーデータセンターのアーキテクチャの動向にも注意が必要だ。

図14 PETRA(左)とAOI(右)によるCOBO (クリックで拡大)

(次回に続く)


筆者プロフィール

高井 厚志(たかい あつし)

 30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。

 日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。

 さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。


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