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» 2020年10月08日 11時30分 公開

大きなけん引役:5Gが開くメモリの市場機会

DRAMおよびNAND型フラッシュメモリ企業の幹部は、メモリ市場の未来が次世代の携帯電話にいかにけん引されるかについてよく語っている。現在、大きなけん引役となっているのは5G(第5世代移動通信)だ。

[Gary Hilson,EE Times]

 DRAMおよびNAND型フラッシュメモリ企業の幹部は、メモリ市場の未来が次世代の携帯電話にいかにけん引されるかについてよく語っている。現在、大きなけん引役となっているのは5G(第5世代移動通信)だ。米国の市場調査会社であるObjective Analysisのプリンシパルを務めるJim Handy氏によると、「5Gの導入はある技術から次の技術への移行であるにもかかわらず、それによってスマートフォンのメモリ容量は着実に増加している」という。

Objective AnalysisのJim Handy氏

 Handy氏は、「次世代ワイヤレス技術への移行の根拠となっているのは、ウェブベースのコンテンツへのアクセスを高速化できることだ。これによって必然的に、携帯電話のストレージの必要性が少なくなるはずだが、NANDの容量は増加の一途をたどっている。この2つを調整するのは難しい」と述べている。

 DRAMの容量が増えると、消費電力も増え、バッテリー寿命が短くなる。

 しかし、5Gに求められるのは、スマートフォンに動画をより高速にダウンロードすることだけではない。バックボーンのメモリ要件は、信頼性と耐久性にも関係している。場合によっては、5Gネットワークインフラのメモリ要件は、スマートフォンよりも自動車や産業分野との共通点が多いかもしれない。これらのメモリデバイスが、通信機器の中でもかなり長い時間、接続を持続する必要があるからだ。

 米国の組み込みメモリベンダーであるVirtiumでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるScott Phillips氏は、「現時点では、5Gに対応しているスマートフォンは少ないが、通信事業者による5Gネットワークの展開に伴って、(ほとんどの人)が大きな成長を予測していなかった製品ラインに新たな需要が生まれている。その需要は非常に多岐に及んでいる」と述べている。

 Phillips氏は、「実際に、5Gはバックボーンからデータセンターに至るまで、新旧の技術が混在して実装されるだろう」と予想している。同氏は、「モバイルバックホールではメモリの需要が見込まれるが、必ずしも最新のDRAMだとは限らない。4GやLTE電話と5Gバックホール間のギャップがある場合は、DDR3やDDR4が使われている」と説明している。

 ただし、5Gがさまざまな種類のメモリやストレージの市場機会を生み出すのは、スマートフォン分野だけではない。Phillips氏は、「機械学習などのAI(人工知能)技術を採用した自動運転車やファクトリーオートメーションの導入には必ず、大量のデータが必要である。5Gはデータを非常に迅速に送信することができるが、それでも大容量のメモリキャッシュが必要である」と述べている。

 つまり、大規模なデータセット(クラウドに送信する前にエッジデバイスで分析されるデータも含む)をネットワークに移動させるために、高速DRAMの市場機会が開かれることになる。Phillips氏は、「干し草の山の中で針を探す代わりに、干し草の山ごと送信しようとしている」と表現している。

 Phillips氏は、「法人顧客によるエッジコンピューティングの活用が進むのに伴い、エッジのキャリアベース基地局は産業用途に耐えうるメモリの装備が求められている」と述べている。エッジデータセンターの場所によっては、データセンターの冷却やエアフィルタリングが難しい場合もあるため、メモリの堅ろう性が重要になる。

 この要件によって、堅ろうなSSDを介するメモリとストレージに向けた産業グレードのフォームファクタが開発された。Virtiumは最近、高性能エッジコンピューティングソリューションを手掛けるイスラエルのSolidRunと提携して、Virtiumの産業グレードSSD「StorFly M.2 SATA」と、DDR4メモリモジュール、SSDソフトウェア「StorKit」を5Gで動作するエッジコンピューティングプラットフォームに組み込むことを発表した。

 また、不揮発メモリベンダーのMacronixでマーケティングチーフを務めるAnthony Le氏によると、同社は5Gインフラの長寿命化と信頼性への投資が功を奏し、健全な成長を遂げているという。大手通信事業者は、大型の基地局とスモールセルとを組み合わせて使用しており、プロセッサとイーサネットコントローラーがNOR型フラッシュメモリの密度要件をけん引している。

 Le氏は、「これらのシステムは10年以上稼働しており、これまで故障したこともない。これらのケースでは信頼性と長寿性が非常に重要だ」と述べている。ブートデバイスには、ネットワークセキュリティを強化するための特別なキーが保存されている。「これらのシステムの登場と共に、セキュリティは非常に大きな問題になっている」とLe氏は強調した。

 Macronixも、Virtiumと同様に、5Gを単にスマートフォン向けのモバイルネットワークではないと考えている。Le氏は、「数十億台のIoT(Internet of Things)エッジデバイスが、産業用や自動車用に展開される可能性が高い」と述べている。

 「5Gがなければ、自動運転レベル5はもちろんのこと、レベル3や4も実現できない。より高速なネットワークインフラが必要だ」(Le氏)。5Gの容量が拡大すれば、帯域幅とメモリ要件は急増する。

 米国のファブレスチップベンダーであるRambusで製品マーケティング担当シニアディレクターを務めるFrank Ferro氏は、「AppleとSamsung Electronicsが5G対応スマートフォンの開発を進める中で、スマートフォンのメモリアーキテクチャと接続性が急速に融合した」と指摘している。Rambusは2017年から5Gインフラ向けチップの開発に取り組んでおり、「両社がこれらの5Gインフラ向けにどのようなメモリアーキテクチャを検討しているかについて、かなり明確な見通しを持っている」と述べている。

 Ferro氏は、「5Gでは当面の間、アプリケーションに応じてレガシー技術から先端技術までの幅広いメモリオプションが混在する状態になる。5Gの構築が進めば、ネットワークの使用方法が一変する」と予測している。4Gがモノリシックなネットワークであるのに対し、5Gには論理ネットワークと仮想ネットワークの両方があり、データセンターのエッジクラウド上でより多くのアプリケーションを直接実行する。

 5Gへの移行は、高性能なGDDR(Graphics DDR)やHBM(High Bandwidth Memory)も大きな役割を果たすようになるとみられている。Ferro氏は「HBMを搭載することで、より小型なフットプリントで多くの処理ができるようになっている」と述べる。

 Ferro氏は「5Gの要件を満たすべく、既存のメモリを補う新しいメモリが出てくるだろう。メモリの高速化は必須だ。新しいメモリアーキテクチャを開発する必要もあるだろう」と付け加えた。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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