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» 2020年10月14日 11時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(31):Lam Researchが打ち立てた金字塔、“1年間メンテナンスフリー”のドライエッチング装置 (4/6)

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

Lamが開発した絶縁膜ドライエッチング装置

 絶縁膜ドライエッチング装置の分野で、TELの後塵を拝していたLamは、どのような新装置を開発したのだろうか? 

 Lam Japanの元取締役兼CTOの野尻一男氏が2020年に出版した改訂版の『はじめての半導体ドライエッチング技術』(技術評論社)注1)によれば、Lamの絶縁膜ドライエッチング装置は、チャンバ内に設置したリングにより、物理的にプラズマを閉じ込める構造になっている(図9)。12インチに大口径化した点を除けば、従来品から変化した点は、たったこれだけである。しかし、この1点により、ドライエッチング技術が劇的に変ぼうした。

注1)10月24日に出版される野尻一男氏の『はじめての半導体ドライエッチング技術』(技術評論社、改訂版)では、新たにAtomic Layer Etching(ALE)、Self-Aligned Double Patterning(SADP)、Self-Aligned Quadruple Patterning)(SAQP)、HARC、Critical. Dimension(CD)均一性等が加筆されている(文献1)。特筆すべきことは、ALEを解説した単行本としては、菅見の限りで本書が世界初である。


図9:Lamが開発した絶縁膜エッチング装置 出典:野尻一男、『はじめての半導体ドライエッチング技術−改訂版』(技術評論社、2020年10月24日出版)の図4−4を基に筆者作成(クリックで拡大)

 チャンバ内にリングを設置したLamの装置によって、絶縁膜加工がどのようなシーケンスに代わったかを、以下に示そう(図10注2)

図10:Lamが開発した絶縁膜エッチングのシーケンス 出典:野尻一男、“Electronic Journal 90th Technical Symposium, p89“(2004)を参考にして筆者がシーケンスを作成(クリックで拡大)

(1)まず、クリーンなチャンバがある
(2)ダミーラン無しで、いきなり製品ウエハーを着工する
(3)エッチング後、酸素プラズマによってアッシングを行う。または、ハードマスクによるエッチングの場合は、ウエハーを取り除いて酸素プラズマを生成する。この酸素プラズマにより、チャンバ内に付着した反応生成物は全て除去される。Lamは、この技術を“Wafer less Auto Cleaning”(WAC)と呼んでいる
(4)クリーンなチャンバで製品ウエハーを着工する
(5)酸素プラズマによるアッシング、またはWACにより、チャンバ内に付着した反応生成物を全て除去する
(6)クリーンなチャンバでエッチング→酸素プラズマによるアッシングまたはWACを可能な限り繰り返し、例えばエッジリングなど消耗部品を交換する際には、大気開放を行う

注2)このシーケンスの記述にあたっては、以下の論文を参考にした(文献2)。野尻一男、「Lam Researchの65-45nm対応のデユアルダマシンエッチング技術」(Electronic Journal 90th Technical Symposium、 p89 、2004)


 このように、1本のリングでプラズマを物理的に閉じ込めたLamの新型絶縁膜ドライエッチング装置では、100〜200枚の強制的なダミーランは必要なくなり、常にクリーンなチャンバでエッチングすることができるため、エッチング速度も安定化した。加えて、エッチングチャンバ内で連続して、酸素プラズマによるアッシングが可能になった。

 特に、同一チャンバ内でエッチングとアッシングが連続して行うことができる効果は絶大だった。絶縁膜エッチング装置とアッシング装置の合計で、その“ご利益”を、従来装置と比較してみると次のようになる(図11)。Lamは、圧倒的なパフォーマンスと投資効率を実現した注3)

図11:Lamの絶縁膜ドライエッチング装置を使うメリット 出典:1〜5は、野尻一男、“Electronic Journal 90th Technical Symposium, p89 (2004)のデータによる。また、6のデータは筆者の調査による(クリックで拡大)

(1)合計の装置台数は、従来の60%に削減された
(2)合計のチャンバ数は、従来の70%に削減された
(3)合計の装置の専有面積は、従来の50%に減少した
(4)合計の投資は、従来の70%に削減された
(5)エッチングとアッシングのサイクルタイムは従来の40%に短縮された
(6)連続稼働日数は約1週間から約90日に向上した

注3)(1)〜(5)のデータは、文献2を引用した。(6)のデータは、筆者の調査による。


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