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ビットコインの正体 〜電力と計算資源を消費するだけの“旗取りゲーム”踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(7)ブロックチェーン(1)(3/8 ページ)

» 2020年10月30日 09時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「ビットコイン」って何なの?

 では、ここから、ビットコインの仕組み(概要のみ)のお話を始めさせて頂きます。

 まずは、定番となりました、「私(江端)のビットコインの誤解」の全公開から始めたいと思います。

 まず、私、ビットコインとは、暗号化された電子ファイル(例:zipファイル)のようなもので、メールに転送できると思っていました(#1)。この誤解については後述します。

 また、大量の電力を使って膨大な数の計算機を使って、「中国で、ビットコインのマイニング(発掘)を行っている」というドキュメンタリー番組を見て、私は、彼らが「新しい素数」を探していると思っていました(#2)*)

*)新しい素数が、そんなホイホイと見つけられる訳がないことは、一応、知ってはいたのですが(ここ10年間でも、2013年、2016年、2017年、2018年に、1個見つかっただけですし)。ただ、ビットコイン用に使えるような、何か特別な(弱い条件の)素数モドキがあるのかなぁ、とか思っていました。

 しかし、ビットコインにおけるマイニング(発掘)とは、そのような新しい数の発見ではありません。

 そして、「ビットコインは口座も特定できるので、反社会的勢力(やくざ、ギャング)のマネーロンダリングの温床となる」、というのも、ちょっと思い込みが過ぎることが分かりました(#3)。

 このようなマネーロンダリングを実現する為には、ビットコインで麻薬や覚せい剤や武器が取引できる世界を完成させないと、全く意味がありません。

 反社会勢力が、高騰と暴落を繰り返し、数年でレートが100倍以上も変化するような通貨を使って、決済を行うとは思えませんし、そんな不安定な通貨で組織運営をするのは難しいと思います。

 これを現実世界の通貨と換金するなら、結局、現実世界の方で足が付いてしまいます ―― それなら、一体何の為のマネーロンダリングか、訳が分かりません。

 私は今回も、バズワードについて盛大な誤解をしていた訳ですが、多くの人にとっても、「ビットコイン」とは、この程度の認識ではないかと思って(願って)います。



 次に、現行の金融機関の送金の仕組みについて、簡単に説明したいと思います ―― ポイントは、現金も電子データも1mmも移動しない、という点にあります。

 上記の図において、まゆりからクリスへの送金で行われていることは、ただ一つ。「台帳の記載」だけです。これは、異なる銀行で振り込みをしても、海外との国際送金についても同じです。大切なことは、1回の送金で台帳が1ページ追加される、ということです。

 この台帳の1ページこそが、「ブロックチェーン」における「ブロック」となります(今は、この言葉だけを覚えておいてください)。

 さて、ビットコインにおけるブロックとは、簡単に言えば、台帳管理を、銀行ではなく、銀行運用のノウハウもなければ、銀行業の免許も付与されていない「ド素人」がやる、ということです。

 図の中では、(冒頭からの流れで)BEATLESSのヒロイン(超高度AIのインタフェース)たちに「マイナー(miner:発掘屋)」として、登場してもらっていますが、ここでは、彼女たちは、普通の人間として振る舞ってもらいます(自分のPCを操作するだけ)*)

*)ちなみに、ここで、マイナー(発掘屋)として、彼女達を登場させた理由は、アニメ「BEATLESS」の中で、彼女達が、相互に戦闘を繰り広げているからです。

 別に彼女たちでなくとも、単なるエンジニアである私(江端)であっても、もちろん、この記事を読んで頂いているあなたも、自由にマイナー(発掘屋)になることができます。

 自分のPCに、ソフトウェア(マイニングソフト(多分無料))をインストールして、数十ギガ程度の世界中の台帳情報をハードディスクにダウンロードすれば、基本的には、それで運用開始できます*)

*)今調べてみたら、Amazonで、5TバイトのUSBのHDDが6000円程度で手に入るようです。

 規模にも因りますが、丸1日あればダウンロードは完了するようです(この方法については、次回以降に説明します)。

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