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» 2020年10月30日 09時30分 公開

踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(7)ブロックチェーン(1):ビットコインの正体 〜電力と計算資源を消費するだけの“旗取りゲーム” (4/8)

[江端智一,EE Times Japan]

台帳を書き換えるために「ケンカ」をさせる!?

 問題は、なんで台帳を書き換える作業をするのに、敵対する彼女たちがネットワークを組んでいるか、ということです ―― 理由は単純です。彼女たちにケンカをさせるためです。

 えっーと……、多分皆さんは、私がメタ表現として「ケンカ」という言葉を使っていると思われていると思います。しかし、これは冗談ではなく、マイナー(発掘屋)の存在理由は、"本当"にケンカをすることなのです。

 イメージ的には、「たった一つの席を奪い合うフルーツバスケット」でもいいですし、「ビーチに立てられた旗を奪い合う、ビーチフラッグ(旗取りゲーム)」でもいいです。大切なことは、「世界中で送金が行われるたびに、ケンカが発生して、そのケンカの勝者は必ず一人だけ」ということです。

 そして、ケンカに勝った唯一の一人が、台帳のページを書き換える権利を与えられるのです。

 『はあ?』って思われているハズです。「ケンカをさせられた上に、台帳ベージを書き換える仕事をさせられるの? 何だそれ? 訳分かんない」と思われているハズです。本当に良く分かります。私もそう思いますし、今でも私は気持ち悪いです。しかし、もう少しだけ話を聞いてください。

 このケンカ(旗取りゲーム)の内容は、さらに不可解です。

 何をやっているかというと、「事前に配られたゲーム機を使って、ものすごい勢いで適当な数を入力し、所定の数(例:最初の上3桁が”000”になる数字)を出すこと」をやっているだけです。

 このゲーム機は全員同じものであって(実際にはゲームソフトはPCにインストールされる)、しかも、不思議なことに、この所定の数(例:最初の上3桁が”000”になる数字)は、必ず10分以内に登場するように調整されています。

 そして、このゲームに与えられる報酬は、驚くべきことに、”6.25”という、単なる”数字”だけなのです。

 その数字は、暗号技術や電子認証技術によって、なんびとたりとも改ざんできない数字ではありますが、本当に”ただの数字”なのです。それは、美しく光るものではないし、他人に自慢して見せることもできないし、銀行の台帳に記載されるような、通貨単位もない”ただの数字”です。

 お分かりかと思いますが、このケンカは、(1)一人でゲーム機をたくさん持っている者、または、(2)超高速に数字を売打ち込める者が、勝者になる確率が高くなります

 膨大な数のコンピュータを購入し運用する資本(とノウハウ)があり、大量の電気を安く購入できる場所にいる人が有利になるわけです ―― つまり、現時点では「電気料金の安い中国(大陸の方)」在住の人が有利になっています。

 この「マイニング(発掘)という名の旗取りゲーム」の重要なポイントは、この膨大な計算結果が、その「ゲーム」にしか使われない、ということです。

  • 地球規模の温暖化問題に関する予測でもなく、
  • 将来の世界の人口問題の予測でもなく、
  • 超難解な医薬の化学構造の計算でもなく、
  • 地震発生の予知の計算でもなく、

本当に単なる「数当てゲーム」だけに使われて、その計算結果の全てが、計算機に使われる電力と引き換えに、ゴミとなって廃棄されます

 この事実を知った時、

お前ら(マイナー(発掘屋)たち)……貴重な地球のエネルギーを、一体何だと思っていやがる?

と思いました。今も本気で私は怒っています。しかもマイナー(発掘屋)の数が増えれば増えるほど程、ゴミとなる電力が増えていきます。マイナーがどれだけ増えようともゲームの勝者は常に一人だけですから。

 しかし、ビットコインの真に驚がくすべき点は、そこではありません。それは、マイナーたちに、貴重なエネルギーを消費させるに足る報酬を与えるという点にあります。

 送金要求そのものは、それが、誰から誰に、どこからどこへ、いくらで ――1万円であろうが、1円であろうが ―― 行われようが、それはどうだって良いのです。

 ポイントは、送金を契機として、意図的なケンカを発生させて、ビットコイン(BTC)を製造させる、という点にあります。

 現在の1ビットコインの円交換レートは、約120万円になっていますので、1回の送金が発生すれば、世界のどこかで120万円x6.25BTC = 750万円が発生する、という点にあるのです。

 つまり、ビットコインのシステムが本当に目指していることは、送金に関する台帳(ブロック)の書き込みなんぞは、どーでもよくて、資本と電力を振り絞った結果として得られる「”6.25”という数字 = ビットコイン」を発生させることです。

 送金とビットコインの製造(マイニング(発掘))の間には、関連はありません。

 ――ビットコインは、送金を「口実」として、生まれたがっている

 それだけです。

 そして、膨大な電力と計算機リソースによって生み出されたという事実だけが、ビットコインの価値の根拠なのです。各国の発行している貨幣が、その国家の経済状況やら未来に対する期待を根拠としていることに対する決定的な違いです。

 ならば ―― 「ビットコインとは、電気が蓄えられた蓄電池、と考えればいいのか?」とも思えますが、ビットコインをどれだけ集めようとも、電球一つ点灯させることはできません。

 ではビットコインの価値とは何か ―― 私は、この答を求めてさまざまな書籍や文献を読み漁ったのですが、見つけることができませんでした。

 私見を述べさせて頂けるのであれば、ビットコインに化体している価値とは、各国が発行している価値の「逆数」です。もっと簡単に言えば、世界規模の「通貨不安」に対する「退避所」としての価値としか考えられません。

 ところが、そのように考えても、合理的な説明ができないのです。以下に、ビットコインの誕生から今に至るまでのレートの変動のグラフを示します。

 2009年のスタートが0円でしたが、現在は現在120万円にまで高騰しています。そして、ここ4年間を見れば、1年間単位で、整数倍の高騰と暴落を繰り返しています*)

*)最初のビットコインの取引額は、25米ドル=10000BTC(2010年7月)でしたので、円換算で0.22円でした(1円にも達していない)。

 そして繰り返しになりますが、

―― ビットコインのレートの根拠が分からん

 通貨の価値というのが、一種の共同幻想であることは既にお話しましたが、共同幻想であっても幻想の根拠とするものは存在するのです(GDP、出生率、労働人口など、なんだって、ひねり出すことができます)。

 しかし、ビットコインは、それすらない ―― そして、現時点のビットコインのレートを見る限り、世界規模の通貨不安が発生していなければならないですが、別段そういうことが発生しているとは思えません。

 それと今回は説明を割愛していますが、ビットコインは、「アルゴリズム」によって通貨量に制限があります(2100万BTC)。「アルゴリズム」によって、マイニングという名のゲームの報酬(旗取りゲームの勝者に与えられる”数値”)は、これからどんどん小さくなって(25→ 12.5→6.25(今、ここ)→3.125→1.5625)いき、いずれこのゲームは世界中で一斉に、同時に終了します ―― 必ずです。

 つまり、中国の奥地の工場にある膨大な計算機(マイニング専用コンピュータ)は、全て不燃ゴミとなる運命にあるのです。

 個人的には、ゴミにせずに、IoTのエッジコンピュータとか、途上国の教育用のPCとして再利用して欲しいですが、それらの計算機は、マイニング(という”旗取りゲーム”)に特化したハードウェアとして組み込まれているので、他の計算用途としての転用はできないでしょう(参考:外部サイトに移行)。

 では、マイニングが終わった後のビットコインは一体どうなるのか? いきなり世界から消えてなくなるのか?

 実は、ビットコインのアルゴリズムには、当然それを見越した設計がされております。その抜け目のない周到なアルゴリズムの設計に、私は恐怖すら感じます(次回以降に説明します)。

 このように、ビットコインは、「人間を支配するアルゴリズム」として君臨しています。AI技術なんぞ比較になりません。そもそも、私は「人間を支配するAI技術の実例」を寡聞にして知りませんが。

 そして、今も世界中で、膨大な電力がゴミとなる「旗取りゲーム」のためにのみ使用されています*)

*)一説には、そのために使われる電力消費量は、イスラエルやバングラデシュ一国が消費する電力を越えているそうです(参考)。

 以上、かなり過激で、相当な偏見と誤解も含んでいることは承知の上で、私なりのビットコインの概要を説明しました。

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