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ビットコインの運命 〜異常な価値上昇を求められる“半減期”踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(8)ブロックチェーン(2)(2/10 ページ)

» 2020年11月27日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「信用」こそが最大の価値

 こんにちは、江端智一です。

 今回は、「踊るバズワード 〜Behind the Buzzword」の「ブロックチェーン」シリーズの第2回です。

 本来、ブロックチェーンの技術的な話から、バズワード批判を行うのが、この連載の目的なのですが、今回もまた、前回に引き続いて、ブロックチェーン技術のベースとなったビットコインについて、多くのページを使わせて頂く予定です。

 実は、ブロックチェーンも、ビットコインも、そして通貨も、目指しているのは「信用」です。”1”と”0”だけからなるビット列の通信や無体物を取り扱うインターネットの世界においては、「信用」こそが最大の価値があるものなのです。

 身近な例で言えば、指1本でコピペが作れる電子情報財(単に”デジ絵(デジタル絵画)”でいい)のオリジナルを、どうやって証明するか、です。これを仮想通貨にあてはめれば、「コピペで無限の複製が可能な仮想通貨の最初の1枚をどうやって証明するか、いかにして世界に納得させるか」ということです。

 しかし、貨幣における「信用」とは、そのような「最初の一枚」の「信用」とは、全く違った「信用」なのです。

 今回は、このお話をさせてください。

なぜ「エバコイン」は、うさんくさいのか

 さて、冒頭の、「エバコインは信用できない」の話に戻ります ―― ウザいかもしれませんが、ちょっと我慢してお付き合いください。

 「ビットコイン」は、最初から今の「ビットコイン」として存在した訳ではありません。「ビットコイン」は、10年の月日を経て、「今のビットコイン」になっていったのです。

 「エバコイン」が「うさんくさい」のは当然ですが、忘れないでいただきたいのは「エバコイン」は「ビットコイン」の初期状態である ―― つまり、ビットコインも「うさんくさい」からスタートしたのだということです。

 ちなみに私、今回、ビットコインの論文を一通り読みました。この論文にPoW(プルーフ・オブ・ワーク)(前回ご参照)の話が登場してこないこととか、それがブログの方で展開されているとか ―― なんというか、フィールド系の「研究者」や「開発者」としての、同じニオイを感じました。

 「うさんくさい」のではなくて、そもそもビットコインの論文の目的は、アカデミズムやエンジニアからなる小規模な世界でのPoC(Proof of Concept: 検証のために行う社会実証実験)が目的だったのではないか、と思えるのです(後述します)。

 下記の表は、エバコインを頭の中で鋳造/印刷することで、「エバコイン(=初期のビットコイン)」が、どうして「うさんくさいか」を記載したものです。

 引っくり返せば、上記の「エバコイン」の問題点こそが、「信用」の混乱の源(みなもと)になっているということです。

そもそも「貨幣」とは?

 まず、「貨幣」とは何かという、超基本的なお話から始めたいと思います。

 貨幣とは、まあ、レンタカーのようなものとして把握しても良いと思います。

(1)誰でも利用可能な「財産的価値」という荷物を乗せる自動車(ビークル)であり、
(2)走行距離を単一の単位(km)で測定でき、
(3)双方の合意だけで、所有者を換えることができる

という3つの条件がそろえば、成立します。

 で、この通貨の3定義に対して、いわゆるビットコインなどの仮想通貨がどうなっているかというと、立派に貨幣の条件を満たしています*)

*)実は、最近の法改正によって、「仮想通貨(Virtual Currency)」は、国際的に共通の名称として、「暗号資産(Crypto Asset)」と名称変更されています。これは、日本円やドルなどの法定通貨との混同を回避することが目的なようです。本連載内では、「仮想通貨」で統一することとします。

 ただ、「権力の干渉を受けない自由な通貨」という、うたい文句は既にボロボロです。まあ、これは法定通貨との交換とのバーター(交換条件)と思えば、やむを得ない(というか当然の)ような気もしますが。

 実は、各国は、国家や権力の手を離れた「影の銀行(シャドーバンキング)」によって、既に危機的な状況にあります(後述)。「影の銀行」の市場規模に比べれば、ビットコインの影響などは取るに足らないものですが ―― しかし、1980年代、その「影の銀行」も、「取るに足らない」と嘲笑されていたのです。

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