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» 2020年11月30日 10時30分 公開

皮膚に貼り付け表情を検知、ALS患者用の薄型センサーMITの研究チームが開発

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、表情の変化を確実に解読し、顔の動きを予測できる薄型のウェアラブル圧電センサーを開発した。同チームは、筋萎縮性側索硬化症(ALS、運動ニューロン疾患またはMNDとしても知られている)の患者を対象にテストを実施している。

[John Walko,EE Times]

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、表情の変化を確実に解読し、顔の動きを予測できる薄型のウェアラブル圧電センサーを開発した。

 同チームは、筋萎縮性側索硬化症(ALS、運動ニューロン疾患またはMNDとしても知られている)の患者を対象にテストを実施している。ALSは、筋肉をコントロールする力が低下したり失われたりするため、次第にコミュニケーションが困難になる。

 同センサーは、患者の顔に貼り付けて、笑顔や筋肉の収縮などの微小な動きを計測できる。現時点では残念ながら、こうした機器は分厚かったり、高価だったり、操作が非常に困難だったりするが、MITのセンサーによって、患者がより自然な方法でコミュニケーションを取れるようになると期待される。

筋肉のわずかな動きを検知するセンサー 画像:MIT

 動きを読み取る同センサーは柔らかく、貼り付けていることがほとんど分からないようにもできる。さらに重要なのは、「同センサーに使用されている全てのコンポーネントは量産しやすいので、コストを約10米ドルにおさえられる」(MITの研究チーム)点だ。

 MITのMedia Arts and ScienceのLG Electronicsキャリア開発教授で、Conformable Decodersグループで同プロジェクトを率いるCanan Dagdeviren氏は、「既存の方法は、顔の筋肉をコントロールする神経の電気活性度を測定している。われわれが開発した技術は、こうした方法と比べて利点が多い」と述べている。

 Dagdeviren氏は、「既存のデバイスは非常に硬い平面状の箱型で、信頼性に大きな課題がある。同じ日に同じ患者で測定しても、一貫性のある結果が得られない場合もある」と述べている。

 同プロジェクトには、米University of Buffalo(ニューヨーク州立大学バッファロー校)とシンガポールのA*STAR Institute of Microelectronicsの科学者も参加している。

 この研究の初期成果は、Nature Biomedical Engineering誌の最新号で紹介されている。それによると、笑顔と唇をすぼめた状態、口を開けた状態の3つの表情を75%の精度で区別できたという。

 初期の研究では、2人のALS患者(ジェンダーバランスのために男女1人ずつ)を対象にテストが実施され、報告された結果から、同デバイスがこれら3つの表情を正確に区別できることが分かった。

 同デバイスは、薄いシリコンフィルムに4つの圧電センサーが埋め込まれている。窒化アルミニウム製のセンサーは、皮膚の変形を検出して電圧に変換する。

MITが今回開発した薄型センター 画像:MIT(クリックで拡大)

 MITの研究者らは、デジタル画像相関法を採用し、健康なボランティアに手伝ってもらってセンサーを配置するのに最適な場所を探したという。

 研究チームは、顔にランダムな白黒の点を描き、被験者が微笑んだり、頬を動かしたり、口を特定の形に開けたりする画像を、複数のカメラで撮影。それらの画像を専用ソフトウェアで処理し、点の動きを正確に解析することで、画像のゆがみ(=皮膚のゆがみ)を判定した。

 このようにデータを蓄積して、さまざまな動きの組み合わせに対応するフレーズや単語のライブラリを作成していくという。

 Dagdeviren氏は、「われわれは、患者ができる動きに基づいて、カスタマイズ可能なメッセージを作成できる」と説明する。「技術的には何千ものメッセージを作成できる。これは、現時点ではわれわれ以外の技術ではできないことだ」(同氏)

 センサーからのデータは、ハンドヘルド処理ユニットに送られ、顔の動きを区別するために学習させたアルゴリズムによって分析される。

 研究チームによれば、現在のプロトタイプでは、処理ユニットはセンサーと有線で接続されているが、将来的にはワイヤレスで接続できるようにしていくという。

 研究チームのメンバーの1人であるFarita Tasnim氏は、2018年に亡くなったStephen Hawking博士(スティーブン・ホーキング博士)に出会ったことがきっかけで、このセンサーの開発に至ったという。Hawking氏は20代前半にALSを患い、頬の動きを感知する赤外線センサーを利用して、コンピュータを操作し文字入力などを行っていた(赤外線センサーは眼鏡のつるに取り付けられていた)。Tasnim氏は、「この方法では機器がかさばる上に、文字入力なども難しく、時間がかかる作業だと感じた。もっと簡略化できる方法が必要だ」と、開発を決意したという。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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