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車載半導体市場でスタートアップにチャンス到来既存メーカーとの競争は厳しいが(2/2 ページ)

» 2021年01月06日 15時45分 公開
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歴史的に新規参入が難しかった自動車産業

 歴史的に、自動車産業は新興企業、特にハードウェアの新興企業にとっては難しい市場だった。自動車メーカーは本質的に保守的であり、既に確固たる地位を築いているサプライヤーから部品を購入する方が、より安心だったからだ。

 とりわけ厳しい品質と供給の信頼性が求められる自動車業界において、サプライヤーが十分な資本を維持することが期待されることを考えると、こうした保守的な傾向は十分に理解できるものだろう。

 さらに、過去数十年の間、ベンチャーキャピタルは、資本集約度が低く、投資収益率の高い産業に投資することを好んでいた。自動車市場への参入を希望する半導体スタートアップ企業は、こうした厳しい現実の中に身を置いていたのだ。

 だが、最近はこの傾向が少しずつ変わり、車載半導体を手掛けるスタートアップが増えている。

 要因の一つは、約10年前には自動車業界のエコシステムでは決して主要な存在ではなかったTesla、Nio、Waymo、Bytonといった企業の台頭が挙げられる。こうした“非伝統的”なメーカーは、市場にできるだけ早く参入でき、かつ、新しいユニークな価値をエンドユーザーに与えられるなら、いわゆる車載品質に達していない製品でも採用することをいとわなかった。

 既に確立されている自動車業界において、イノベーションのプロセスを加速する必要があった、という状況も、上記のような新しい企業の台頭を後押しした。さらに、Mobileyeのような先駆的な企業の躍進的な成功と、設計方法の改善やIP(Intellectual Property)の再利用などにより、新しいチップソリューションを市場に投入するための費用が削減されたことも、大きいだろう。

 最後の要因として、エコシステムパートナーのサポートが挙げられる。エコシステムパートナーは、IPやEDAツール、製造、テストなどを安価に提供するサービスなどを始めている。そうしたサービスは、スタートアップの株式と引き換えに提供されるケースもあり、エコシステムパートナー各社が、成長が期待されるスタートアップへの“先行投資”の一環として行っていることも伺える。

 例えば、Armの「Flexible Access for Startups」プログラムでは、初期段階のSoCスタートアップにArmのIPブロックへのアクセスを無料で提供している。Armは、このプログラムによって、スタートアップの事業が軌道に乗った後も、Armのプラットフォームを利用する長期的な顧客を獲得できると見込んでいるのだ。

 Silicon Catalystのようなインキュベーターに参加することで、半導体エコシステムのパートナーを利用できるようになるプログラムもある。Silicon Catalystは、少額の出資と引き換えに、スタートアップが専門のアドバイザーや投資家、大学のネットワークにアクセスできるよう支援する。また、パートナー各社を通じて、EDAツールやテスト装置、エンジニアリングサービス、ビジネスサポートといった製品/サービスも提供する。

Silicon Catalystの投資先会社であるOwl Autonomous Imagingが手掛ける、3次元サーマルイメージ 画像:Owl Autonomous Imaging(クリックで拡大)

 ただしもちろん、こうした環境や体制が整ってきたからといって、半導体スタートアップにとって、自動車市場参入が突如として簡単になったわけではない。既存の車載半導体メーカーとの競争が厳しいということには変わりないのだ。自動車メーカーは今後も高い品質を求めるだろうし、財務面で制約があるスタートアップが、こうした要求に応え続けるのは容易ではないだろう。

 だが少なくとも、自動車メーカーやティア1サプライヤーが、革新的なソリューションを求めるようになっているという傾向は、スタートアップにとって喜ばしいことだ。もし、そのスタートアップが、既存の車載半導体メーカーが提供できないほどユニークで差異化できるソリューションを持っているならば、チャンスはある。AutoTalks、Geo Semiconductors、Indie Semiconductors、Graphcoreは、ここ数年、自動車市場で注目されるようになっている半導体スタートアップの一例である。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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