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光トランシーバーForm Factorの新動向(4) 〜ハイパースケールデータセンターとCPO実用化の行方光伝送技術を知る(15) 光トランシーバー徹底解説(9)(3/3 ページ)

» 2021年01月18日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]
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ハイパースケールデータセンターの動向

 最初のハイパースケールデータセンターは、2010年前後から検討され、2014年前後に完成した。徹底した仮想サーバを実現するため、CLOSスイッチを参考にノンブロックのデータ交換システムを構築し、20年使うインフラと世代ごと(約4〜5年)に入れ替えるフロア装置に分けるといった基本構造がデザインされた。現在もその基本構造はほとんど変わらない。

 15年後の更新時の搭載光インタフェースは当初の64倍(当時の40Gが2.5Tに)を予測し、Single-Mode Fiber(SMF)をインフラに採用した。その時の光トランシーバーはFP Pluggableが想定されている。このため、少なくとも2025年ごろの更新までは、FP Pluggableが続くことが望ましい。1.6Tはもちろん3.2TまでFP Pluggableが要求されるかもしれない。

 20年使用する予定のインフラを有する運用中のハイパーデータセンタ構造を想定した。図3の左が2013年に作成した構造図であるが、右にそのインフラをそのまま生かした構造図を作成した。重さや太さ、伝送距離制限といった点で、電気インタフェースであるDirect Attach Cable(DAC)の実装が難しいとされており、All Opticalの構成も考えられている。ToR(Top of Rack)スイッチとLeafスイッチ間はSMFとなり、ToRとサーバ間はMulti-Mode Fiber(MMF)になるということだ。ToR/サーバ間にMMFを用いた場合、それぞれのラックにスイッチを置く必要はなく、専用ラックにまとめることができる。

 また、今後サーバの消費電力が増大することも予測できるので、ToRを別のラックに置くことは熱対策にもなる。ちなみにToRという記述は正しくないので、図ではEnd of Row(EoR)としたが機能は同じである。

図3:ハイパースケールデータセンターの変化予測例

 例えばこの5年以内に建設されたデータセンターは、将来の更新時にCPOを想定する必要があるだろう。CPOは装置内に搭載されるため(In-Box Optics(IBO)とも呼ばれる)、従来とは違った運用が求められるので何らかの変更が必要となる。

 ToRを省き、サーバからLeafへ直接接続する方式も提案されている。Leaf/Spineネットワークでは1本のファイバーに詰められるだけ詰めてデータを交換するという要求は変わらない。そこにまずCPOが導入されるだろう。

 一方、ムーアのスケール則が飽和傾向となっている中、Disaggregation Serverが検討されている。これは、計算、記憶、通信といったそれぞれの専用機能を多数集積化したチップを用い、それを収納したBoxなどを組み立て/交換できる単位とし、その間を光で高速/低レイテンシで接続することで高性能化を実現するものだ。

 図4にDisaggregation Serverを使用したハイパースケールデータセンタの予想図示す。サーバの機能別Box間は光接続され、他のDisaggregation Serverと通信するNetwork BoxからLeaf/Spineネットワークに同じ高速光インタフェースで接続される。Network Box間は速度変換することなく、回線交換的に情報がやりとりされる。この時の光モジュールはCPOであることは疑いないと考えている。

図4:Disaggregation Server時代のハイパースケールデータセンターの予想図

 この方式では必要なBoxだけを組み立て/交換すればよいので柔軟で無駄がなく、コストを最小化できる。Rack丸ごと更新する現在の方式(フォークリフト交換という)から、Rack内の全てのBoxを交換する必要もなく、Re-Useを前提としたシステム更新方式となるであろう。電源や冷却系もRe-Use可能でありコストが低減できる。これを実現できるかどうかはDisaggregation Server内の高速/低レイテンシ光配線の実用化にかかっている。

 光技術は“縁の下の力持ち”であり、このようなシステムの要求に沿って答えを出していくことになる。新技術が登場、台頭し始めた時は、将来本道を歩むユーザーとの会話が必須であり、これによってイノベーションのジレンマを回避することができると考えている。

(次回に続く)


筆者プロフィール

高井 厚志(たかい あつし)

 30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。

 日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。

 さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。


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