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反逆の通貨「ビットコイン」を使ってみた踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(10)ブロックチェーン(4)(6/6 ページ)

» 2021年01月28日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]
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「前編、最高です。拍手喝采です」

後輩:「それじゃあ、なんですか? 『私のコメントはいらない』って、そう言いたいんですか?」

江端:「いや、そうじゃない。2回もレビューしてもらって、コメントさせたら申し訳ないという、EE Times Japan編集部と私の配慮であってだな……」

後輩:「いや、そんな配慮は不要です。江端さんがなんと言おうが、私は言う。コメントする」

江端:「……では、お願いします」

後輩:「では言いましょう。江端さん、今回の前編、最高です。拍手喝采です。素晴らしいです

江端:「……お、おう。……ありがとう」

後輩:「江端さんの今回のコラムこそが、私たち研究員のあるべき姿ですよ ―― まずは使って試せ。そして感じろ。能書きはその後だ ――です」

江端:「うん、まったくその通りだと思う。位置情報サービスの研究をやっているくせに、スマホの位置情報アプリを使ったことがないだとか……*)、本当に「笑わせるな!」と言いたくなるような、「自称研究員」が多くてうんざりだ。特にシニアに多い」

*)参考:筆者のブログ

後輩:「そういえば、私たちは、公開鍵暗号方式やLinuxのカーネルなどのソースが公開されれば、すぐに自分のパソコンでコンパイル、ビルドして試していましたよね」

江端:「最近は、『数理解析ソフトは、どれがお勧めですか?』とか尋ねてくる若い研究員も多い。『ものぐさせんと、自力で全部のソフトを試さんか!』と怒鳴りつけるのをこらえているよ」

後輩:「今回、江端さんはビットコインの開始から使用まで、一通り、やり通しました。一方、ビットコインについて、ポジティブであれネガティブであれ、偉そうに論じているやつらの、一体何人が、ここまでキッチリ試したのか、怪しいものです」

江端:「人数は少ないと思う。参考になる記事、ほとんどなかったから。ビットコイン決済をするのに、専用アプリが必要ということも、全く分からなかったくらいだ。ともあれ、ビットコインを実際に使ったこともない奴が、ビットコインの論文を量産しているのかと思うと、正直、腹が立つ

後輩:「というか、その情報量の少なさこそが、ビットコインが“決済手段”として使われていない証拠でしょう。要するに、ビットコインは、もはや“通貨”としての利用価値はなく、“暗号資産”としての価値しかないのでしょう」

江端:「まあ、ビットコインの取り扱い店舗の対応が、“あれ”ではねえ……」



後輩:「ところで、ここだけの話ですが、年始めから現在に至る、ビットコインの乱高下 ―― 仕掛け人は、江端さんですか?

江端:「は?」

後輩:「いや、江端さんの過去3回のコラムを読み直してみると、江端さん、ビットコインの信用失墜に全力を注いでいたじゃないですか?」

江端:「逆だ!逆!! 私は、ビットコインを、リアル世界の決済手段と切り離して、ネット世界の新しい決済手段として使いたいんだ。それはもう、何度も言ってきたじゃないか」

後輩:「そうです。だからこそ、私には、江端さんが、ビットコインの『グレート・リセット』を画策しているような気がして仕方ないんです」

江端:「3700円分のビットコインごときで、相場を操作できるか!」

後輩:「でも、江端さんならやりかねない、と思えてしまうんですよね。なにしろ、江端さんの、システムへの『ハッキング……もとい、プライベートな改良』に関するネタには、事欠きませんからね」


Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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