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» 2021年02月02日 11時30分 公開

希土類を含まない新たな酸化物イオン伝導体を発見最高級の酸素イオン伝導度を示す

東京工業大学は、新しい酸化物イオン伝導体を発見したと発表した。世界最高クラスの酸素イオン伝導度を示し、希土類を含まないため安定性や安全性にも優れている。燃料電池や酸素分離膜、触媒、センサーなどへの応用が期待される。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

燃料電池や酸素分離膜、触媒、センサーなどの開発に応用

 東京工業大学理学院化学系の八島正知教授らによる研究グループは2021年1月、新しい酸化物イオン伝導体「Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05」を発見したと発表した。世界最高クラスの酸素イオン伝導度を示し、希土類を含まないため安定性や安全性にも優れている。燃料電池や酸素分離膜、触媒、センサーなどへの応用が期待される。

 酸素イオン伝導体やO2-伝導体とも呼ばれる酸化物イオン伝導体はこれまで、その多くが希土類やビスマス、鉛、チタンを含む酸化物であった。今回発見したBa7Nb3.9Mo1.1O20.05は、これらの元素を含まない、六方ペロブスカイト関連酸化物の酸素イオン伝導体である。

 研究グループは今回、「Ba7Nb4MoO20」に着目した。その理由として4つを挙げた。「構成元素が、酸化物イオン伝導体Ba3MoNbO8.5-δと同じである」「六方ペロブスカイト関連酸化物である」「構造がBa3MoNbO8.5-δと同様に、酸化物イオンが動くと期待される、本質的な酸素欠損層c′を持っている」「結合原子価法で計算した酸化物イオンの移動に対するエネルギー障壁0.21eVが、Ba3MoNbO8.5-δの障壁0.51〜0.35eVより低く、高い酸化物イオン伝導度が期待される」からである。

 研究グループは、さまざまな化学組成のBa7Nb4MoO20固溶体を合成し電気伝導度を測定した。この結果、Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05が最も高い伝導度を示すことが分かり、その電気的性質と結晶構造を詳細に調べた。

 この結果、「酸素濃淡電池で測定したBa7Nb3.9Mo1.1O20.05のO2-輸率が1に近く、全電気伝導度が極めて広い酸素分圧の領域において一定である」こと。さらに、「高い酸素の拡散係数を示し、プロトンの輸率が湿潤雰囲気でも低い」ことなどが明らかとなった。

 さらに、O2-が支配的なキャリア(電荷担体)であることが分かった。Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の伝導度は、500℃以下でYSZや六方ペロブスカイト関連酸化物Ba3MoNbO8.5-δより高く、300℃では酸化ビスマス固溶体の伝導度より高いことが判明した。

 Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の伝導度が、低温側でBa3MoNbO8.5-δより高い理由は、酸化物イオン伝導度の活性化エネルギーが低いからだという。高温かつ広い酸素分圧の領域において、酸素濃淡電池を用いた起電力測定前後で、Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の劣化や結晶相の変化は観測されず、相安定性に優れていることが分かった。

Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の酸化物イオン伝導の実証 出典:東京工業大学他
Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の高い酸化物イオン伝導度(○) 出典:東京工業大学他

 研究グループは、高い酸化物イオン伝導度の構造的要因を調べるため、大強度陽子加速器施設(J-PARC)で、800℃におけるBa7Nb3.9Mo1.1O20.05の中性子回折実験を行い、リートベルト法によって結晶構造を解析した。イオン伝導経路を可視化するため、最大エントロピー法を用い中性子散乱長密度分布も解析した。これにより、Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05が800℃で六方ペロブスカイト関連酸化物であることを確認した。

800℃におけるBa7Nb3.9Mo1.1O20.05の構造よび、中性子散乱長密度分布と酸化物イオン拡散経路 出典:東京工業大学他

 また、Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の結晶構造は、酸素欠損層(c′層、BaO2.05層)が(001)面上に存在しており、格子間八面体酸素O5と格子四面体酸素O1間に中性子散乱長密度の連続した分布を観察することができた。格子間酸素O5と格子酸素O1を経由した拡散は、準格子間機構を現したもので、酸化物イオン伝導における格子間酸素の重要性を示したものだという。これらのことから、格子間酸素量を増やすことが、六方ペロブスカイト関連酸化物イオン伝導体の設計指針になるとみている。

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