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「ブロックチェーン」に永遠の愛を誓う 〜神も法もかなわぬ無敵の与信システム踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(11)ブロックチェーン(5)(4/7 ページ)

» 2021年02月08日 12時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

直接会わずに家が借りられる「スマートコントラクト」

 さて、ブロックチェーンを使った契約(スマートコントラクト)について、もう少し具体的な例で説明してみたいと思います。

 こちらの事例は、借家の契約の開始から完了までを、関係者(貸し手Aさん、借り手Bさん、保守管理者Cさん)が一度も顔合わせすることなく完了してしまう、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートコントラクトの一例です。

 まず、技術的な前提として、スマホで開錠/施錠ができるスマート鍵があるものとします。このスマート鍵は、ネットワーク経由で第三者に転送が可能であり、最後に受けとった人だけが利用できます。

 貸し手Aさんは1年間の海外出張のため、自宅を貸し出すことにしました。そこでAさんは、自宅のスマート鍵をブロックに添付し、借り手が現われるのを待ちます。

 そこに、ブロックチェーンを見ていた、借り手Bさんが、2カ月間の貸与契約と電子マネーをブロックに添付します。さらに、そのブロックから連絡を受けた保守管理者Cさんが物件のチェック(貸与前のダメージチェック等)を行い、ブロックが生成されます。

 次に生成されるブロックから、借り手Bさんにスマート鍵が送付されて、貸与期間が開始します。Bさんは予定の2カ月前に退去が決まり、鍵を返却し、保守管理者Cさんが、貸与後の借家のチェックを完了することで、ブロックが生成されます。

 期間前の貸与による残金からダメージによる物件の現状復帰に必要な金額を差し引かれた金額(3.5万円)が、電子マネーで元借り手のBさんに返金されて、ブロックが生成されます。

 帰国後、貸し手Aさんにスマート鍵が返却されて、ブロックが生成され一例の処理が完了します。

 ―― ぶっちゃけ、これ、普通のワークフローシステムでもできるよね

と言われれば、その通りだと思います。

 これは別段ブロックチェーンでなくても、スマート鍵の配送さえできれば、実現できるような話です。しかし、この方式の特徴は、『人間は、ブロックチェーンプログラムの中に記載されているオブジェクトの一つ』であり、そのメリットは『関係者が所定の場所に集って、契約書を取り交さなくても、条件に応じて契約条件が履行されていく』という点にあります。



 問題は、このブロックチェーンの契約が法的な効力を持つか、あるいは、契約不履行の場合、例えば損害賠償の訴訟における証拠能力を有するかということにあります。

 Google scholarで「ブロックチェーンと裁判」でちょっと検索して、いくつか論文を読んでみたのですが、「そんなもん大丈夫に決まっとろうが」という楽観論ものから、「裁判官がブロックチェーンプログラムコードを理解する必要があるのではないか(そんでもって、『それは絶望的だ』という主張)」という悲観論まで各種ありますが、現時点では過去の判例はないようです。

 エンジニアとしての私は、「そんなもん大丈夫に決まっとろうが」という楽観論派です。根拠は上記で説明した、 ―― 契約書Aを改ざんする現実的な手段を考えるくらいなら、全面核戦争を引き起して人類を「最初からなかったこと」にした方が簡単 ―― と、思っているからです。

 ただ、裁判所において、裁判官、検察、弁護人、そして傍聴者に対して、「ハッシュ関数」「公開鍵」「秘密鍵」「電子署名」を含めたブロックチェーン技術を、分かりやすくプレゼンしろ、と裁判所から命令されたら、全力で逃げます



 さて、先ほど、「某国の元大統領が実施し続けた、証拠が添付されていない『盗まれた選挙』の主張の繰り返し」について述べました。

 『証拠なしで訴状を出すなどということを、現職大統領の法務担当チームがする訳ない』と思っていましたので、私は、訴状と証拠が開示されたら、その全文を読もうと腹を括っていました。(「英語に愛されないエンジニア」の私にとっては、おそろしくツラい作業になるとは思いましたが)。

 ですが、現時点でも、訴状の内容の開示は確認できておりません(私が見落していたら、誰か教えてください)。原告(元大統領)に訴状の開示義務はありませんが、訴状を公開することによって、裁判所の理不尽な”却下”を、世間に訴えることもできただろうに、と、不思議に思っています。

 あと、私にできそうなことと言えば、投票結果から、統計を使って不正投票の可能性を調べることです*)ちなみに「日本の大相撲が八百長である」という事例が、米国の統計学のテキストの演習問題で使われているそうです。

 この「統計を使った不正投票の可能性」についてはEE Times Japan編集部からGoを貰えれば、調査を開始したいと思っています。

 閑話休題。

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