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» 2021年02月09日 09時50分 公開

Dialog買収でIoTを強化、「短期間で成果出す」ルネサスIntersil、IDTに続く大型M&A

ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2021年2月8日、英Dialog Semiconductor(以下、Dialog)を買収することで合意したと発表した。Dialogの発行済みおよび発行予定の普通株式全てを取得し、完全子会社化する手続きを開始する。1株当たり67.50ユーロで取得する予定で、買収総額は約4886万ユーロ(約6157億円)となる見込みだ。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

アナログ/コネクティビティを強化

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2021年2月8日、英Dialog Semiconductor(以下、Dialog)を買収することで合意したと発表した。Dialogの発行済みおよび発行予定の普通株式全てを取得し、完全子会社化する手続きを開始する。1株当たり67.50ユーロで取得する予定で、買収総額は約4886万ユーロ(約6157億円)となる見込みだ。

 2020年9月時点における直近12カ月の売上高は、ルネサスが7160億円、Dialogが1380億円。営業利益率はルネサスが18.4%でDialogが21.1%である。買収が完了すれば、売上高規模は8540億円(約81億3800万米ドル)となる。

ルネサスおよびDialogの主な業績(2020年9月における直近12カ月の業績)と買収完了後の効果 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

 ルネサスの社長兼CEOを務める柴田英利氏は同日に行われたオンライン会見で、「Dialogは低電力のパワー変換、パワーマネジメント技術に非常に強く、またWi-FiやBLE(Bluetooth Low Energy)、産業向けI/Oリンクなど、ルネサスが求めていたコネクティビティ技術のポートフォリオもそろっている」と語った。ルネサスは、DialogのPMIC(パワーマネジメントIC)をはじめとするパワー関連の製品とルネサスのマイコンやSoC(System on Chip)などと組み合わせることで、特にIoT(モノのインターネット)向けのソリューションを強化する狙いだ。

左=Dialogの製品ポートフォリオとターゲット市場/右=ルネサスとDialogの製品を組み合わせたソリューションの一例 出典:ルネサス(クリックで拡大)
ルネサスの社長兼CEOである柴田英利氏

 ルネサスは2016年にIntersil、2018年にIDTと、大型の買収を行ってきたが、これらはいずれもアナログ/ミックスドシグナルを強化する目的があった。今回のDialogで、同技術がさらに強化されることになると柴田氏は述べる。

 ルネサスとDialogは、もともと協業関係にある。2020年には、DialogのPMICである「DA90630-A」やサブPMIC「DA9224-A」を、ルネサスの「R-Car Gen 2」「R-Car-H3」向けに拡張することで、協業を拡大すると発表した。

 柴田氏は「両社は、製品、技術の面で補完的な関係にある。Dialogが加わることで、ルネサスの製品ポートフォリオは、製品別でも市場別でも、よりバランスがよくなる。人材についても、例えばエンジニアの人口構成で言えば、日本とAPAC(アジア太平洋地域)出身者が多いルネサスと、欧米出身者が多いDialogが組み合わさることで、よりグローバルな組織になり、地政学的に不安定な状況が続く中でも、成長を加速できる」と語った。

左=買収完了後のルネサスの製品構成の比率と、市場別の比率。製品構成ではアナログの比率が増加し、市場別ではIoTがかなり増えることになる/右=エンジニアの人口構成 出典:ルネサス(クリックで拡大)
DialogのCEOを務めるJalal Bagherli氏

 オンライン会見には、DialogのCEOを務めるJalal Bagherli氏も出席。既に複数のメディアで報じられている通り、今回はルネサス以外にも複数の企業から買収提案を受けていたが、「当然ながら、提案の金額、企業としての力や人材、製品プラットフォーム、過去の買収成果など、さまざまな観点で評価を行った結果、ルネサスが最も良い相手だという結論に達した」と述べた。「Dialogは、現在ニーズが非常に高い、低電力のミックスドシグナル技術を持っている。PMICのソリューションなどで以前から協業してきたルネサスとであれば、今後もコネクテッドの世界において勝ちに行くことができるだろう。ルネサスの販路や顧客サポートを活用できることも、われわれにはメリットだ」(Bagherli氏)

サイクルが短いIoTで早期に利益を出す

 今回の買収では、ソリューション提供力を強化し、クロスセルや高成長市場にアクセスすることにより、営業利益(Non-GAAPベース)で約2億米ドル(約210億円)の統合効果を見込んでいる。 柴田氏は「顧客からは、ソリューションを求める強いニーズがある。ソリューションであれば、製品単体よりも差異化を図りやすく、強みを生み出しやすいという利点もある」と意気込む。「同じパワー関連の製品でいえば、旧Intersilの技術を搭載した車載向け製品が、やっと市場で使われ出したところ。車載はとにかく時間がかかる。その点、IoT分野はサイクルが短いので、早期に売り上げの拡大が見込めるのではないか」(柴田氏)

 コスト節減については、業務効率化により、約1億2500万米ドル(Non-GAAPベースの営業利益の年間ランレート、約131億円)の削減を実現する見込みとなっている。コスト節減による統合効果を実現できるのは、買収完了から約3年以内とする。「Dialogのチップをルネサスの工場で内製化することで、コストダウンを図る可能性はあるか」という質問に対し、柴田氏は「現在、当社の8インチ工場は比較的稼働率が高い。余裕があるとすれば12インチ工場になるかと思うが、そこをアナログICの製造に使うとなると、かなりの規模で量産しなければ採算がとれないだろう。その辺りも含め、コスト節減についてはあらゆる可能性を探っていく」と回答した。

 買収完了は、2021年末までに完了する見込み。規制当局の承認について柴田氏は「軍事/防衛向けの製品も多かったIntersilに比べると、Dialogにはそうした製品はあまりないため、国家安全上の観点から見たハードルは、比較的低いのではないか。独占禁止法の点で見ても、ルネサスとDialogは補完的な関係にあり、一部の市場セグメントを独占するようなこともないので、それほどの障害はないと考えている」と語った。

 アナログ半導体市場では、Analog Devices(ADI)がMaxim Integrated Productsの買収を発表するなど、M&Aが活発になっている。ルネサスの今後のM&Aについて柴田氏は、「(買収候補となる企業の)リストは常にアップデートはしているが、まずはDialogの買収を完了させ、しっかりと統合を行うことが最優先。特定に技術のみを取り込むことはあっても、当面の間は、今回のような規模の大きいM&Aを行うつもりはない」と述べた。

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