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SamsungのEUV適用D1z世代のDRAMを分析TechInsights

Samsung Electronics(以下、Samsung)がついに、ここ数カ月にわたり待望されていた、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を導入した「D1z」プロセスのDRAMの量産を開始した。同社は2020年初頭に、「業界初」(同社)となるArF液浸(ArF-i:ArF immersion)ベースのD1z DRAMと、EUVリソグラフィ(EUVL)適用のD1z DRAMの両方を開発すると発表していた。

» 2021年02月26日 18時00分 公開

EUV適用「D1z」世代のDRAM

 Samsung Electronics(以下、Samsung)がついに、ここ数カ月にわたり待望されていた、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を導入した「D1z」プロセスのDRAMの量産を開始した。同社は2020年初頭に、「業界初」(同社)となるArF液浸(ArF-i:ArF immersion)ベースのD1z DRAMと、EUVリソグラフィ(EUVL)適用のD1z DRAMの両方を開発すると発表していた。TechInsightsは、Samsungの最新かつ最先端のD1z DRAMデバイスを実際に見て確かめ、その適用技術に関する詳細を確認することができ、非常に興奮しているところだ。

 Samsungは今回、D1zプロセスの8GビットDDR4 DRAMと、D1zの12GビットLPDDR5 DRAM、16GビットLPDDR5 DRAMを開発した。いずれも高性能化を実現している。このうち12Gビットと16GビットのLPDDR5は、同社が2021年1月に発表したばかりの最新スマートフォン「Galaxy S21 5G」シリーズ「S21 5G」と「S21+ 5G」「S21 Ultra 5G」に搭載されていることが分かった。

 12GビットLPDDR5チップは、Galaxy S21 Ultra 5G(型番:SM-G998B/DS)の12GビットRAMに搭載されているが、16GビットLPDDR5チップは、S21 5GとS21+ 5Gの8Gビット RAMに搭載されているようだ。

 また、D1zプロセス技術の生産効率に関しては、旧世代の「D1y」プロセスを用いた12Gビット品と比べると、D1zプロセスの12GビットLPDDR5 DRAMの方が15%以上高いという。設計ルール(D/R)は、D1y世代の17.1nmから、D1zでは15.7nmまで縮小している。ダイサイズについても、D1yの時は53.53mm2だったが、D1zでは43.98mm2と、約18%の縮小を実現している(表1)。

表1:Samsung Electronicsの「D1y」プロセスと「D1z」プロセスの比較(クリックで拡大)

 EUVを適用したD1z技術で製造した12GビットLPDDR5 DRAMには、「K4L2E165YC」と刻印されている。一方、16GビットLPDDR5 DRAMチップには「K4L6E165YB」と刻印されていて、こちらのD1zプロセスにはEUVは適用されていない。

 Samsungは恐らく、まずArF-iおよびEUVの両方をベースとしたSNLP(Storage Node Landing Pad)/BLP(Bit Line Pad)リソグラフィを適用してD1z LPDDR5製品を開発し、そして現在、全てのD1z LPDDR5製品にEUV SNLP/BLPリソグラフィを適用するようになったのだろう。

 Samsungは2019年後半に、D1x EUVリソグラフィを適用したサンプルモジュールを100万個出荷した。D1zチップの製造は、韓国キョンギド(京幾道)のピョンテク(平沢)にある第2製造ラインで行われるようだ。

 同社は、D1z 12GビットLPDDR5デバイスのDRAMプロセスインテグレーションに関しては、EUVリソグラフィ技術の適用を、SNLP(SNLP on call array)/BLP(BLP on S/A)の1つのマスクだけに限定している。CD(限界寸法/ピッチ)は約40nm、S/A(センスアンプ回路)エリアのBLPライン幅は13.5nmである。

 図1の電子顕微鏡写真は、SamsungのS/A BLPパターンについて、ArF-iベースのリソグラフィを適用したD1z 16GビットLPDDR5ダイと、EUVリソグラフィ適用のD1z 12GビットLPDDR5ダイを比較したものだ。EUVリソグラフィを適用することにより、S/AエリアのBLPのLER(Line Edge Roughness)や、ブリッジ/短絡などを低減できるといえるだろう。

図1:ArF-iベースのリソグラフィを適用したD1z 16GビットLPDDR5ダイ(写真左)と、EUVリソグラフィ適用のD1z 12GビットLPDDR5ダイ(右) 出典:TechInsights

 また、競合のMicron TechnologyのD1zセル設計と比較した場合、セルサイズに関しては、Samsungが0.00197μm2でMicronが0.00204μm2、D/RについてはSamsungが15.7nmでMicronが15.9nmと、Samsungがより小型化していることが分かる。Micronは、D1z製品の全てのフォトマスク工程でArF-iベースのリソグラフィを適用しているが、当面の間、D1α/D1βなどにはEUVリソグラフィを適用しない予定だとしている(表2)。

表2:D1z世代について、MicronのLPDDR4とSamsungのLPDDR5を比較した(クリックで拡大)

 図2および図3はそれぞれ、SamsungのD3xからD1zまでのDRAMのセルサイズとD/Rに関する動向を示している。近年、DRAMのセルサイズとD/Rの縮小実現はますます困難になってきているが、SamsungはD1zのD/Rを、D1yと比べて8.2%減となる15.7nmに縮小することに成功した。

図2:SamsungのDRAMセルサイズの変化 出典:Jeondong Choe/TechInsights(クリックで拡大)
図3:SamsungのDRAMセルのD/Rの変化 出典:Jeondong Choe/TechInsights(クリックで拡大)

 Samsungは、2021年に発表を予定しているD1αや、2022年のD1βなどの次世代DRAMでも、引き続きEUVL工程を増やしていく予定だという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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