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» 2021年03月22日 11時30分 公開

【付録】あの医師がもっと伝えておきたい“9個の補足”世界を「数字」で回してみよう(67)番外編(5/9 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

(付録E)武漢で実施されたPCR全数検査について

 武漢の場合は徹底したロックダウンの最終段階として、背景の感染者数とRtを極端まで下げた後の流行の完全制圧を目標に全数検査を行いました(シバタ主観)。

 報道によれば2020年6月、武漢の人口約1100万人のうち、990万人が20日程度でPCR検査を受け、300人の無症状患者が発見され、1174人の濃厚接触者を含めて隔離した、と報じられています。

 ちなみに、費用は9億元(136億円)と書かれていました。人件費的な問題はありますが、日本も規模に応じて単価を値切れば上記の計算よりも、もう少し安くできるかもしれません。

 結果として(中国の言い分を信じるならば)その後しばらく武漢はほぼコロナフリーの時期が続いたことになっています。計算上は武漢における全数PCRにおいて200人程度の陽性患者がすり抜けているはずです。

 厳戒態勢の当時の武漢のRtがどれほどだったか分かりませんが、残りは行動変容によってなんとか感染連鎖を防ぎ、都市内をほぼ完全鎮圧状態にこぎ着けた、ということだと思います。

 もちろん、中国国内の感染者数がゼロを維持したわけではありません。しかし、(報告が正しければ)武漢より後はほぼ1年を通して1日の感染者数が1桁〜2桁前半という非常に少ない患者数で推移しました。また、都市内でクラスターが発生した事例がぱっと報道を振り返っただけで2020年10月の青島と2021年1月の遼寧省瀋陽市の2回ありましたが、中国はこれらを全数PCRを採用し制圧したというニュースがありました。

 結果として中国はこの1年、モニタリングと全数検査の組み合わせにより、武漢以後の1日の感染者数を(報道が真実ならば)ほとんど1桁〜2桁台に保ち続けました

 人口が日本の10倍にもかかわらず、です。

 徹底した人民統制と強制的な全数PCRが可能なら、全数PCRは選択肢に挙がるかもしれないと感じさせてくれます。もちろん、「報じられている数字が本当ならば」とか「一党独裁の強権発動の下で」という前提条件がつきますので、果たして効果や数字をうのみにできるのかどうかは分かりません。



 武漢を参考に日本での実際の運用方法を考えた場合、実際には「有症状患者のPCR結果に閾値をもうけて〇〇人以上の感染が地域内に発生したらその地域内で全数検査を実施」という感じになるでしょうか。

 東京圏で実証実験を行うことは規模が大きすぎて難しそうです。大阪圏、もっと小さく、名古屋圏や九州圏、北海道などでの実証実験を行ってみるというのは、もしかしたら選択肢の一つなのかも知れません。

 秋の国政選挙でどなたか公約に掲げてみてはいただけないでしょうか?集票には結び付くかどうかはお約束できませんが……。

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