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» 2021年04月21日 11時30分 公開

半導体不足は「ジャストインタイム」が生んだ弊害、TSMCが急所を握る自動運転車湯之上隆のナノフォーカス(37)(3/5 ページ)

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

田んぼのあぜ道を時速100kmでぶっ飛ばすTSMC

 ある知人から、半導体の微細化について、次のような例え話を聞いたことがある。

 「10年位前の微細化は、欧州のアウトバーンを時速200kmでぶっ飛ばしているような感じだった。その後、微細化がスローダウンしてきたのは事実だが、それでもTSMCは田んぼのあぜ道を時速100kmでぶっ飛ばしていて、そのあぜ道の幅が年々狭くなってきており、ちょっと運転を間違えると田んぼに転落してしまうほど危うい。しかし、依然として時速100kmでぶっ飛ばし続けている」

 4月15日に2021年第1四半期の決算報告を行ったTSMCは、台南に3nmの工場を建設していること、新竹に2nm用の工場用地を確保し、着工を控えていることを明らかにした。

 TSMCのテクノロジーノードごとの半導体出荷額をみると、最先端5nmの出荷額が2020年第4四半期より少なくなっているが、米Appleの「iPhone」用アプリケーションプロセッサの生産が本格化する第2四半期以降に、再び5nmの出荷額が増えると予測される(図7)。

図7:TSMCのテクノロジーノードごとの半導体出荷額 出典:TSMCのHistorical Operating Dataを基に筆者作成(クリックで拡大)

 さらに、信頼できる筋からの情報によれば、3nmのリスク生産は既に開始されており、来年2022年には量産が始まるという。そして、2nmの立ち上げも既に秒読み段階である。田んぼのあぜ道の幅は、どんどん狭くなってきているが、微細化の速度がスローダウンする気配はない。

 このTSMCの微細化に追随できる半導体メーカーは、世界に一つもない(図8)。そして、世界中のファブレスメーカーがTSMCの生産キャパシティの争奪戦を行っている(図9)。

図8:ロジック半導体の微細化(7nm以降はTSMC1人勝ち) 出典:TrendForceの図に筆者が加筆(クリックで拡大)
図9:TSMCの生産キャパシティを巡るファブレスの争奪戦(クリックで拡大)

TSMCの分野別半導体の出荷状況

 図10に、TSMCの分野別半導体の出荷額割合と出荷額を示す。出荷額の割合では、スマートフォン用が50%前後で最も大きく、次いでHigh Performance Computing(HPC)が30%以上になっている(図10A)。

図10:TSMCの分野別半導体の割合と出荷額 出典:TSMCのHistorical Operating Dataを基に筆者作成(クリックで拡大)

 一方、TSMCにおける車載半導体の割合は、コロナ前の2020年第2四半期で、わずか4%しかない。それが同年第3四半期に2%に半減している。これが、クルマの減産を受けて、Infineon、NXP、ルネサスなどがTSMCに車載半導体をキャンセルした影響である。そして、同年第4四半期に3%まで回復したが、あと1%が足りない。

 これを車載半導体の出荷額で見てみよう(図10B)。コロナ前の2020年第2四半期の出荷額は4.15億米ドルで、これが第3四半期に2.43億米ドルに落ち込み、第4四半期に3.8億米ドルまで回復した。しかし、コロナ前に比べると、3500万米ドル足りない。

 TSMCの半導体出荷額において、たった1%、出荷額にして3500万米ドル足りないだけで、2021年1月に日米独の各国政府が台湾政府に車載半導体の増産を要請する異常事態になった。これが、リードタイムが3〜4カ月の半導体に、ジャスト・イン・タイムの生産方式を適用した結果である。半導体は機動的に出荷個数を増減させることができないのである。

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