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IPC規格、接続信頼性の試験時間を大幅短縮NASAやJAXAの担当者が講演(1/3 ページ)

IPCとジャパンユニックスは、宇宙航空向け機器で高い信頼性を実現するために活用されている、品質標準規格「IPC」の追加規格や応用事例を紹介するセミナーを開催した。

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宇宙航空用途向け追加規格を解説

 IPCとジャパンユニックスは2018年9月3日、「IPCスペースエレクトロニクスセミナー2018 in 東京」を東京都内で共同開催した。このセミナーでは、宇宙航空向け機器で高い信頼性を実現するために活用されている、品質標準規格「IPC」の追加規格や応用事例を紹介した。

 IPCは、電子機器製造における設計や材料、回路基板、実装といった領域で、品質管理の国際標準規格を策定しているグローバルな業界団体である。IPCにはエレクトロニクスや航空宇宙、自動車といった業界の主要企業が参画している。

 今回は、宇宙航空産業にフォーカスして実施した。関連する追加規格の概要を解説するとともに、宇宙航空技術をけん引するNASAや宇宙航空研究開発機構(JAXA)の担当者が、品質に対する考え方や最新の管理事例などについて語った。本稿ではこれらの概要を紹介する。


IPCのTerasa M Rowe氏

 冒頭、IPCのTerasa M Rowe氏が、「宇宙航空産業におけるIPCスタンダード」と題して講演。IPC宇宙航空用途向け追加規格の要求事項や活用方法、産業界の課題について説明した。IPC規格は、より多くの要求事項を含んだ基本文書と、これを補完あるいは一部置き換える事項を含む追加規格からなる。ただし、追加規格は単独の文書として使用されることはないという。

 Rowe氏は、基本文書と追加規格の活用方法について、3つの事例を交えて紹介した。1つは「IPC-6012D」(リジッドプリント基板の適格性認定および、性能仕様)である。「3.2.4金属箔」や「3.3.3ホール内のメッキポイドおよびコーティングポイド」「3.5.4.5ディウェッティング」について、追加規格による変更点などを紹介した。

 もう1つは「I-STD-001G」(はんだ付けされる電気および、電子組み立て品に関する要件事項)である。「4.15.3乾燥/脱気」「5.5端子へのはんだ付け」「7.1.3リードの変形」に関する追加規格について解説。3つ目は、「IPC/WHMA-A-620C」(ケーブル・ワイヤハーネス組み立ての要求事項および、許容基準)である。「1.5.1.6特定されていない状態」「4.2.1材料、部品、機器−金除去」「5.3機械加工端子」に関する追加規格を紹介した。これらは一例だが、追加規格がリリースされたことで、基本文書と大きく要件が異なることもあり、十分に理解する必要があると指摘した。

 次にRowe氏は、電子機器製造業が直面する課題についても触れた。講演では「組み立て工程の変更」に伴う新たな材料やプロセスの選択、「鉛フリーはんだ」への対応などを挙げた。これに対してRowe氏は、「綿密な計画と確実なプロセスを用意して打開すること」と述べた。

作業負荷と環境負荷を理解する


NASAゴダード宇宙飛行センターのBhanu Sood氏

 続いて登壇したのは、NASAゴダード宇宙飛行センターのBhanu Sood氏である。「ミッションクリティカルなプリント回路組み立て品信頼性評価のための故障物理に基づく仮想適格性評価方法の適用」と題して講演した。故障物理(PoF:Physics of Failure)に基づく信頼性評価のために、NASAがIPC規格をどのように活用しているかを紹介した。

 Sood氏によれば、信頼性評価のための故障解析プロセスは、「インプット」「解析」「アウトプット」に大別できるという。インプットの工程は製品構成や作業負荷、環境負荷などに分けることができる。「故障物理で重要となるのは作業負荷と環境負荷で、これを十分に理解することが大切」と話す。


信頼性評価のための故障解析プロセス (クリックで拡大) 出典:NASA

 解析の工程では、熱や振動衝撃などの応力解析、ストレスマージンやライフマージンを概算するための信頼性評価、システムレベルへの集約そして、製品の信頼性がどのように変化するかを見極める感度解析がある。アウトプットの工程ではこれらの解析に基づき、潜在的な故障メカニズムや位置のランキング、加速度試験を行う条件などが出力されるという。

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