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グラフェンデバイスの量産を目指す、英新興企業約17億円を調達

英国の新興企業であるParagrafは、グラフェンベースのセンサーを市場に投入すべく、1280万英ポンド(約17億1420万円)の資金を調達した。Paragrafは、さまざまな種類の基板上にグラフェンを用いることで、グラフェンデバイスの量産を実現することを目標としている。

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 英国の新興企業であるParagrafは、グラフェンベースのセンサーを市場に投入すべく、1280万英ポンド(約17億1420万円)の資金を調達した。

 Paragrafは、さまざまな種類の基板上にグラフェンを用いることで、グラフェンデバイスの量産を実現することを目標としている。今回調達した資金は、同社にとって最初となる製品の市場投入に使われる予定だ。この製品は、高感度の磁界検知デバイスで、既存のデバイスでは達成できていない温度範囲や検知範囲、電力範囲で動作すると、Paragrafは主張している。

インジウムをグラフェンに置き換える研究も

 同社は、政府機関であるUK Research and Innovationからも50万英ポンドの助成金を得たが、こちらの資金は、電子機器に使われているレアメタルのインジウムをグラフェンに置き換えるための研究に用いられる。1年間にわたる英Queen Mary University of Londonとの共同プロジェクトとなる。

 インジウムは「EU Critical Materials List」に記載されたレアメタルであり、産業や社会で欠かすことのできない役割を担っているといわれている。インジウムの主な用途は、ITO(酸化インジウムスズ)だ。ソーラーパネル、スマートフォンやTVのディスプレイ、LED、タッチパネルなど幅広い製品に使われている。InP(リン化インジウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)も、フォトニクスのアプリケーションに用いられている有用な半導体だ。

 インジウムの産出量が最大の国は中国で、現在中国は、世界のインジウムの半数以上を供給している。

 ITOは電気伝導性と透明性に優れているが、インジウムは非常に高価な材料だ(1kg当たり約300米ドル)。ITOの世界的需要は年間26億英ポンドで、増加の一途をたどっている。そのため、より継続的に供給できる代替材料が求められている。

 炭素シートであるグラフェンは非常に薄く、厚さはわずか炭素原子1個分しかない。だが、ITOと同様に優れた電気伝導性、高い透明性、そして柔軟性という特長を持っている。だが、2004年に初めてグラファイトからグラフェンを分離することに成功したものの、グラフェンを用いた電子機器は製品化されていない。大面積のグラフェンを量産できるレベルにするのが難しいからだ。

8インチグラフェンウエハーを製造

 だがParagrafは、新しいCVD(化学気相成長)プロセスを用いて、8インチのグラフェンウエハーの製造に既に着手している。


Paragrafが製造した8インチのグラフェンウエハー 画像:Queen Mary University of London

 通常のCVDプロセスでは、グラフェンを銅ホイルの上で成長させる。その後、銅ホイルを剥離したグラフェンシートを任意の基板に移すが、このグラフェンシートにはどうしても銅に汚染されてしまう。それ故、このプロセスでは、ITOをグラフェンに置き換えることは難しかった。一方、Paragrafが開発した新しい手法では、例えばシリコン基板上で直接、グラフェンを成長させるというものだ。金属による汚染がなくなり、ITOの代替品として機能するものとなる可能性があるという。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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