コラム
» 2012年02月24日 07時32分 UPDATE

ISSCC 2012 無線通信技術:SSDをワイヤレス/バッテリフリーに、東大と慶応大が新技術で狙う

両大学の研究者からなるグループは今回、新たに3つの技術を開発した。フラッシュメモリの寿命を延ばす技術、CPUと高速で接続する技術、大きな電力を高い応答でワイヤレス給電する技術である。これらを統合すれば、128Gビットを超える大容量のワイヤレスSSDを実現できるという。

[薩川格広,EE Times Japan]

 東京大学と慶応義塾大学の研究グループは、SSD(Solid State Drive)のワイヤレス化とバッテリフリー化につながる3つの新技術を開発し、米カリフォルニア州サンフランシスコで2012年2月19〜23日に開催された半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2012」で発表した。

 3つの技術とは、(1)フラッシュメモリの寿命を延ばす技術、(2)メモリモジュールとCPUの間で非接触の高速データ転送を実現する技術、(3)SSDへのワイヤレス給電技術である。これら3つの技術を統合することで、最大128Gビット以上の大容量のワイヤレスSSDを製作できるようになるという。さらに同グループは、これらの技術が将来、「バッテリフリーの小型SSDを実現するカギにもなる」と述べている。

 まず(1)フラッシュメモリの寿命を延ばす技術は、新たな誤り訂正回路を開発し、それを適用することで寿命を最大10倍に延ばせることを実験で確認した。

 一般にフラッシュメモリは、製造プロセスの微細化を進めると記録密度を高められる半面、隣接するメモリセル間で電気的な干渉が生じやすくなり、しきい値電圧が変動して誤り率が高まってしまう。そこで今回、干渉を補正して誤りを低減しながらも、高速な読み出しを両立できる新たな方式を開発した。「エラー予測LDCP(低密度パリティ検査符号)」と呼ぶ。具体的には次のような方式である。まず、メモリセルのデータパターンと、書き換え回数、データ保持時間などの情報から、あらかじめ不良率のデータベースを作成しておく。そして、あるメモリセルから情報を読み出す際には、周囲に隣接するセルについて不良率のデータベースを参照して読み出しのエラー確率を算出し、エラーを訂正する仕組みだ。

 これにより、フラッシュメモリの寿命を延ばせる上、20nm世代より進んだプロセスに微細化を進められるため、128Gビット以上の容量を実現できるようになるという。

エラー予測LDCP 開発したエラー予測LDCP技術の概要である(クリックで拡大)。出典:科学技術振興機構、東京大学、慶応義塾大学の3者による報道向け共同発表資料

 次に(2)メモリモジュールとCPUの間で非接触の高速データ転送を実現する技術では、今回はフラッシュメモリではなく、複数のDRAMを組み合わせて構成するモジュールを対象にし、1ピン当たり7Gビット/秒と非常に高いデータ転送速度を達成した。CPUを搭載するマザーボードと複数のメモリモジュールをソケット経由で有線接続する従来の方式では、バスから各モジュールに配線を分岐する部分や、ソケットが間に挿入されることで伝送路にインピーダンスの不整合が生じ、信号波形が劣化するという課題があったが、今回の技術でそれを解決できる。

 具体的には、マザーボード上に作製するメモリバスの配線パターンと、メモリモジュール側のボード上に作り込む配線パターンそれぞれを高周波伝送線路として設計し、その形状を工夫することで、両者が近接したときに方向性結合器が構成されるようにした。この方向性結合器の結合度を最適化し、各メモリモジュールに伝送される信号電力が等しくなるように設計することで、信号の波形を整えているという。その結果、ビット誤りを抑えられ、データ転送速度を高められた。

メモリモジュールとCPUの非接触データ転送 メモリモジュールとCPUを非接触でつなぐ技術の概要と伝送波形の実測データである(クリックで拡大)。出典:科学技術振興機構、東京大学、慶応義塾大学の3者による報道向け共同発表資料

 最後の(3)SSDへのワイヤレス給電技術では、最大0.52Wの電力を数μsと高い応答速度で負荷に供給できる、高効率のシステムを開発した。将来の大容量SSDでは、W(ワット)オーダーの電力を高効率かつ高い応答速度で供給する必要があり、それに応える技術だという。高い速度で大きく変動するSSDの消費電力に追従して、給電側から送信電力を高速に制御する。

 給電側コイルと受電側コイルを対向させる電磁誘導方式のワイヤレス給電システムで、給電側のスイッチング周波数を共振周波数とその分数調波(サブハーモニック)の間で変調する方式を採用した。負荷であるSSDの消費電力が数μs以内に1桁変動しても、受電側の電圧降下を最大でも2%程度に抑えられるという。

ワイヤレス給電技術 SSDへの応用を想定したワイヤレス給電システムの概要である。今回は開発したシステムをメモリカードに適用した(クリックで拡大)。出典:科学技術振興機構、東京大学、慶応義塾大学の3者による報道向け共同発表資料

 今回の研究は、東京大学 大学院工学系研究科の准教授である竹内健氏と、慶応義塾大学 理工学部の教授である黒田忠広氏、同准教授の石黒仁揮氏らのグループが実施した。科学技術振興機構(JST)が支援する戦略的創造研究推進事業(CREST)のテーマの1つ「ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術 〜ディペンダブル ワイヤレス ソリッド・ステート・ドライブ〜」の一環である。

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