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» 2012年08月22日 10時00分 UPDATE

LED/発光デバイス 有機EL:有機ELディスプレイ、「日本に勝機は必ず訪れる」 (1/3)

2012年内にも、SamsungとLGから、50インチを超える大型有機ELテレビが市場に投入される予定である。いまや韓国勢が先行する有機ELディスプレイ市場であるが、「材料面では日本がリードしている」と専門家は語る。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]
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 Samsung ElectronicsやLG Electronicsは、2012年内に55インチの大型有機ELテレビを発売する予定である。製造面で韓国が先行しているのは間違いないだろう。だが、九州大学の安達千波矢教授は、「有機ELディスプレイの発光材料面では日本がリードしている。しっかりとした基礎技術を確立すれば、ビジネスチャンスは必ず日本にやってくる」と語る*1)

*1)本稿では、単に文字や映像を表示する装置を指す場合を「ディスプレイ」、ディスプレイとチューナで構成される、いわゆるテレビ受像機を指す場合を「テレビ」とする。

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「夢の薄型テレビ、大型有機EL」 →記事全文はこちらから



 大型有機ELディスプレイの製造/量産には何千億円という資金を投じなければならないため、技術的な問題のみならず、経営的な判断が必要になる。パナソニックとソニーは、大型有機ELテレビの量産技術を2013年に確立することを目指している。2012年の夏から秋にかけて大型有機ELテレビを発売する予定の韓国勢に比べると、この時点で約1年半の差があることになる。ただ、2012年6月にパナソニックの新社長に就任した津賀一宏氏が「(パナソニックとソニーは)大型有機ELテレビをいかにリーズナブルな価格で作れるかということにフォーカスはしているが、それが1年でできるのか、2年なのか、3年なのかは、やってみなければ分からない」と述べていることから分かるように、その“1年半”がどの程度の差であるのかは、まったくの未知数だ。「ビジネスチャンスは必ず日本にやってくる」という安達教授の言葉通り、日本メーカー逆転の可能性は大いにあると考えられる。

 有機ELディスプレイ市場で戦う日本メーカーにとって、立ちはだかる壁は3つある。低価格で大型のディスプレイの製造技術、ディスプレイを作りやすい材料、そして先行する韓国メーカーの存在だ。

photophoto 「2012 International CES」で展示された韓国メーカーの大型有機ELテレビ(左はSamsung Electronics製、右はLG Electronics製)

なぜ、液晶から有機ELへの移行が必要なのか

 有機ELテレビが、市販品として最初に登場したのは2007年12月のことだ。ソニーの11インチ有機ELテレビ「XEL-1」である。以来、携帯電話機やスマートフォン、タブレット端末、ゲーム機など、3〜10インチの小型有機ELディスプレイを搭載した製品は毎年のように登場しているものの、テレビについては音沙汰がなかった。だが2012年になり、SamsungやLGが55インチの大型有機ELテレビの発売を発表したり、ソニーとパナソニックが大型有機ELディスプレイの開発で提携を発表したりと、大きな動きが出てきている。

 では、そもそも、ごく単純な疑問として、なぜ、大型有機ELテレビが注目を集めているのだろうか。

 大型テレビ市場では、依然として液晶テレビがシェアの大半を占めている。液晶テレビの画質は数年前に比べて格段に向上しているし、30〜40インチの大画面テレビが10万円を切る価格で購入できる。また、DisplaySearchが2012年7月に発表したリポートによると、2012年のテレビの市場規模は前年比で1.4%縮小するにもかかわらず、液晶テレビの出荷台数は5%増加するという。液晶テレビで十分なのではないか――。こう思う消費者もいるだろう。

 だが、実際には、液晶テレビに使われる液晶ディスプレイは、輝度やコントラスト、応答速度、消費電力といった点で欠点が多いことも事実なのである。その液晶ディスプレイに置き換わる“次世代ディスプレイ”の筆頭に挙げられるのが、有機ELディスプレイだ。

 有機ELディスプレイは、画素そのものが発光することから、高輝度、高コントラストのディスプレイを実現できる。また、バックライトが不要のため、液晶ディスプレイよりも薄型化できることに加え、消費電力も大幅に削減できる。さらに、応答速度が液晶ディスプレイの1000倍といわれており、3Dテレビへの応用もしやすい(詳細は文末の囲み記事を参照)。

 さらに、有機ELディスプレイの用途は、携帯電話機やタブレット端末、テレビだけにはとどまらない。2012年6月にパナソニック社長の津賀氏も、「有機EL技術を採用すると、薄型化/軽量化を図れるだけでなく、曲面などフレキシブルなディスプレイも実現できる」と、将来に大きく成長していく有機ELディスプレイの可能性を示唆している(関連ニュース*2)

*2)ただし、現時点ではフレキシブルな画面を実現できるという点よりも、液晶ディスプレイに比べてより薄く、より軽くできる点が注目されているようだ。例えばスマートフォンなどの携帯電話機を例にとれば、ディスプレイを薄くすることで空いたスペースに電池を搭載でき、長時間連続利用可能な携帯電話機ができる。

 市場の期待も大きい。DisplaySearchが2012年1月に発表したデータによれば、有機ELディスプレイの売上高は、2011年は40億米ドルだったものが、2018年までには200億米ドルに達する見込みだ。

 ただし、有機ELディスプレイはメリットばかりではない。有機EL材料や製造の面で今なお多くの課題が残されている。さらに、日本メーカーにとっては、それらに加えて韓国メーカーという巨大な壁が立ちはだかっている。

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