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» 2012年12月10日 09時00分 UPDATE

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(11):英語の文書作成は“コピペ”で構わない (4/6)

[江端智一,EE Times Japan]

付録1:江端的最終手段――「神を降臨させる」

 さて、最終的な英語の文章を作成する際の私の奥義について、ちょっとお話しましょう。

 英文の作成には各種のツールを活用するというのは前述した通りですが、実のところ、今回のケースばかりは単なる道具論では解決できないことも確かです。

 また、「集中力」というような安易な言葉で解決できるものでもありません。なぜなら、「集中力」というには、その前提として「しかるべき英語の文章を作成する能力」が備わっていることが必要なのですが、私たち英語に愛されないエンジニアにはそもそも、そのような能力が「ない」のです。

 存在しない能力を使って、その能力を前提とした仕事を成し遂げようとすることは、完全に矛盾しています。英語に愛されないエンジニアである私が「英語の文章を書く」ということ自体が、もはや自然法則への挑戦、因果律への反逆といってもいいでしょう。

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 ならば、私も科学常識を越えたものを憑依させて、対抗するしかありません。

 「神を降ろす」のです。

 ブログのコラムであれば、1日で10本以上を生産できると思っているこの私ですが、英文のフルペーパーは範囲外。しかも書いている私ですら、いまひとつ納得できていない論文です。そこに「英語」と言うフィルターが入っているのですから、「論文」として印刷されてしまった暁には、トイレの紙としてすら使えない紙資源が世界中にばらまかれることになるのは、火を見るより明らかです。

 しかし、論文であれ、提案書であれ、特許出願の拒絶理由に対する意見書であれ、英語で記載されているものは、全て私が書いているのではありません。

 実は、「神」が私に書かせているのです。いや、本当に。うそじゃないのです。降りてくるのですよ、神が。

 状況としては、

(1)極限まで疲労し尽くし、
(2)論理を展開する知力が完全に枯渇し、
(3)上司に理不尽な命令を受けた

などの諸条件がうまくそろった、主に深夜、誰もいなくなったオフィスにいる私に、神が降りてきます。

 するとですね、私は、200m先に視点を合わせるような表情で、もちろんまばたきなどもせず、背中からは黒いどんよりしたオーラを発しながら、ものすごい勢いでキーボードをたたきはじめるのです。もしその時、誰かが「江端さん」と声を掛けても、振り向くのは目をつり上げて薄笑いをする「神」です。同僚は皆、戸惑った笑いのまま後ずさり、全力疾走で去っていきます。

 こういう状態になった私は、いつもに比べて10倍以上のスピードでキーボードをたたき、いつのまにか執筆が終わっていることがあります。ただ、いかんせん、「私の神」の英語ですから、英語も私と同じ程度にデタラメです。ともあれ、最後のページにたどり着くことだけはやってくれるのです。

「神降ろしの場所」

mm121210_eae_fig5.jpg 写真はイメージです

 10年くらい前の話です。私は1人でサーバ室にこもっていました。

 サーバ室では、約50台にも及ぶ研究用サーバのHDDやファンの音が、抑揚なく常に騒音をかき立てており、おまけに遮光用にブラインドが下ろされていて、怪しい雰囲気満点です。サーバ室は高度なセキュリティシステムを備えており、電話もなく、私の上司も、その上司の上司すらも、踏み入ることはできません。

 「神降ろし」の場として私が最終的に選んだのが、このサーバ室でした。

 たとえ私が奇声を発しようとも、壁をたたきながら泣き出そうとも、床に寝転んで転がり回ろうとも、誰も入ってはこられない。神聖不可侵にして、絶対的結界であるサーバ室。神を降ろすためには、神に降りていただく「場」を準備することが必要だったのです。

 あなたは、英語の文章を作成するのではなく、神託の自動書記たる預言者となります。少なくとも、そのように自分をトランス状態にまで持ち込んだら「勝ち」です。

 しかし、このような狂乱の精神状態で作成された英語がまともな英文になるわけがないのは、百も承知です。この狂乱状態における執筆の目的は、「正しい英語」を記載することではありません。神の言葉を、最後のページまで書き切るということです。

 そして、あなたの最後の仕事は、その神託を正しい英語の文章に直すことで完了します。ただし、これもかなり難しい仕事です。なぜなら、神託は神の言葉で記載されており、私が経験した限り、それは日本語でも英語でもない「何か」だからです。

 繰り返しますが、重要なことは最後のページにたどり着くことです。あとは何とかなります。きっと、誰かが何とかしてくれることでしょう。

 だって、神さまが“ついて”いるのですから。

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