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SoC設計者が“ポスト・ムーアの法則時代”を生き抜く術「ムーアの法則」はもう何もおごってくれない!(1/4 ページ)

チップ設計者に「タダ飯」をごちそうしてくれた“ムーアの法則”がなくなろうとしている。これからチップ設計者が生きていくには性能向上と消費電力低減を実現する革新的方法を自ら生み出していくしかない。

» 2014年12月24日 10時10分 公開

 さあ認めよう、半導体業界は、ムーアの法則に「タダ飯」をおごってもらっていたということを――。

 そして、ムーアの法則が死に絶えようとしている今、SoC設計者はどうやって生き延びていくかを考えるべきでしょう。

 言い換えれば、「タダ飯」をおごってもらえなくなった時、チップ設計者はどんな戦略を持っているのでしょうか? トランジスタの進化がもはや「タダ」ではなくなった時、どのように市場に価値を提供し続けていくのでしょう? 「ムーアの法則」がもたらした「ぬるま湯状態」からどうやって脱するのでしょうか?

 プロセスノードが進むたびにトランジスタが高価になっていく中で、チップ設計者のスキルはますます重要になってくるに違いありません。

 ムーアの法則が奇跡的に生き永らえることを願っている多くの人々は、その願いが無駄に終わるという証拠を目にすべきでしょう。20nm未満のプロセスノードでは、トランジスタがさらに高価になるのは明らかなのです。

 トランジスタが高価になってもプロセスノードの進化が、より楽な設計につながるなら、それはそれでいいのかもしれません。もし、そうでなくても悲観することはありません。SoC設計者は設計を整理し直し、より効率的な計算アーキテクチャに切り替え、オンチップ通信を強化さえすれば、将来のチップ設計においても性能の向上と消費電力の低減を実現し続けられるのです。

ムーアの法則がハードウェア設計を「怠惰」に

 今までのSoC設計は、物理学と経済学に頼っているだけで、次世代システムの性能を向上させ、機能を増やし、消費電力を低減し、コストを削減することができました。18〜24カ月間ごとにパフォーマンスが2倍になり、消費電力が低減していたときは、製品の市場投入を急ぐだけでよく、わざわざIC設計を効率化させる必要はさほどありませんでした。

写真はイメージです

 事実、企業は全てのバグが取り除かれる前に、製品を強引に出荷することがあり、この「出荷してしまおう」という態度は大抵、「それはソフトウェアで解決しますから」というメンタリティにつながっていました。そして、製品の性能や消費電力に問題が生じると、設計者は都合よく、より小さく、より速く、より効率的なトランジスタを搭載したチップを作るという名目で次世代製造プロセスに移行していきました。プロセスの「微細化」は、いつだって数多くの設計上の「罪」を埋め合わせることができました。

 こうした「タダ飯」を食べている間に業界は太り、怠慢になっていきました。時間を割いてオンチップシステム全体を最適化することもなく、人々は自らの設計に機能を追加するため無計画にIPブロックを増やしていきました。

ソフトウェア開発も「怠惰」に

 ムーアの法則時代にはソフトウェアコードも肥大化していきました。「Windows Bloat(Windowsの肥大化)」という言葉が日常用語になっているのはそのためです。Windows Bloatについて詳しく知りたければ、ZDNetのEd Bottが2006年に書いた記事「Windows bloat? It’s always been that way」を読んでみるといいでしょう。彼はこの記事の中でWindowsからVistaまでの歴史を概説しています。

 定期的なPCアップグレードのサイクルを先導したいわゆる「Wintel(ウィンテル)計画」のせいにしたい人たちもいるでしょうが、実際には、私たちの誰もが市場投入を急がせるプレッシャーにさらされ、私たちの誰もが新バージョンのソフトウェアをどうにか動かせる速くて新しいプロセッサを当てにしていたのです。

 結果的に、サポート、メンテナンス、アップグレードの問題がソフトウェア業界をコードリファクタリングプロセス(内部構造の見直し作業)に追いやり、ソフトウェアの振る舞いを変えることなく、効率性、保守性、拡張性を高めるためにソフトウェアを定期的にアップデートするプロセスとなりました。これでコードサイズ、パフォーマンス、消費電力の改善が見られたことはよいことでした。面白いことに、リファクタリングが今やハードウェア業界を“タダ飯時代”から脱却させようとしているのです。

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