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» 2016年05月13日 09時30分 UPDATE

福田昭のストレージ通信 次世代メモリ、STT-MRAMの基礎(6):磁気記憶の高密度化とその課題 (1/2)

磁気記憶の高密度化手法と、高密度化に伴う本質的な課題を解説する。磁気記憶は、高密度化と低消費電力化で矛盾を抱える――。

[福田昭,EE Times Japan]

磁気記憶が抱える本質的な矛盾

 国際会議「IEDM」のショートコースでCNRS(フランス国立科学研究センター)のThibaut Devolder氏が、「Basics of STT-MRAM(STT-MRAMの基礎)」と題して講演した内容を紹介するシリーズの第6回である。

 前回は、磁気を利用して記憶したデータの値を不安定にする要因と、10年以上の期間にわたってデータを安定に保持するための条件を説明した。今回は、磁気記憶の高密度化手法と、高密度化に伴う本質的な課題を解説する。

 磁気記憶(あるいは磁気記録)の密度(面密度)を高めることは、磁性体粒子の体積Vを小さくすることに等しい。体積Vを小さくしながら、磁気異方性エネルギーΔE(=KV)を同じ大きさに維持するには、磁気異方性定数Kを大きくする必要がある。前回に説明したようにΔEは熱エネルギーよりも、はるかに大きな値を維持しなければならないからだ。

磁気記憶の高密度化と低消費電力化の矛盾 (クリックで拡大) 出典:CNRS

 一方、データ書き換えの消費電力をなるべく低くするという観点からは、磁気異方性定数Kはなるべく小さいことが望ましい。なぜならば、磁気異方性定数Kが大きくなるほど、書き換えに必要な磁界が大きくなり、したがって消費エネルギーが大きくなるからだ。

磁気記憶の高密度化と低消費電力化が抱える矛盾を技術開発で解決する (クリックで拡大) 出典:CNRS

 このように磁気記憶では、高密度化と低消費電力化は原理的には矛盾すると分かる。さらに、高速動作や読み出し動作などの要項が磁気記憶には加わる。例えば、読み出しの感度を上げることは高速化と矛盾する。これらの相反する要素を高い水準で妥協させるのが、磁気記憶における技術開発の主な目的となる。

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