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データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態世界を「数字」で回してみよう(35) 人身事故(2/11 ページ)

» 2016年10月21日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

希望で始まり、絶望で終わる夏休み

 ある日のこと、「自殺対策白書」のあるページのグラフを見ていた私は、家族に質問してみました。

江端:「18歳以下の若者の中で、最も自殺が多い日、分かる?」

次女(中2):「9月1日」

江端:「じゃあ、2番目に多い日は」

嫁さん:「4月の始業式あたりの、どこかでしょう?」

 それを聞いた私は、ぶすっとしながら、彼女たちに尋ねました。

江端:「なんで、そんなに簡単に正解にたどりつけるんだ」

次女:「そんなこと、当たり前じゃん。説明するまでもないでしょう」

江端:「まあな。夏休みの宿題が終わなくて、絶望的とか投げやりな気分になってしまうのは分かるよ*)

*)実際、8月25日を超えた辺りに、毎年、学校に放火する生徒のニュースが出てきます。今度、注意して見てみてください。

 嫁さんと次女は、(ああ、ダメだ。この人、全然分かっていない)という顔をしながら、言いました。

嫁さん:「『宿題』ごときで自殺なんかするわけないでしょう。最大の理由は、憂鬱な人間関係の『再開』だよ。夏休みの間会わずにすんでいた『嫌いな友人や教師』、そして『いじめ』だよ」

 そんなものかな、と思って、もう少しデータを調べてました。

 18歳以下の若者の最も自殺の少なかった日を「最も幸せな日」とし、最も自殺の多かった日を「最も不幸な日」と見なすと、

「魔法少女まどか マギカ」(新房昭之監督 シャフト 毎日放送)

―― 夏休みとは、文字通り「希望で始まり、絶望で終わる」、または「祈りで始まり、呪いで終わる」 ――

という、魔法少女*)たちや"人工知能"という正体不明の技術のライフサイクルの様でもあるということが分かります(関連記事:我々が求めるAIとは、碁を打ち、猫の写真を探すものではない)。

*)「魔法少女まどか マギカ」(新房昭之監督 シャフト 毎日放送)

 そういえば、私自身、ティーンエージャーだったころには、「夏休み」という制度を廃止し、週休3日制度とかにした方がいいと思っていたものです。嫁さんと次女に言われるまで忘れていたのですが、この私にとっても、「9月1日」は「呪いの日」の代名詞でもあったのです。

 で、私が、この導入部で何が言いたいかというと、

(1)私たちは自分自身の意思で自殺を選んでいるように見えるのですが ―― 実際のところは、時期とかイベントとか、そういう自分たちではコントロールできない何かが、自殺という手段を使って、私たちを殺しにやってくるようである

ということと、

(2)数字やグラフや表から、そういうものが見えてくる、内閣府発行の「自殺対策白書」は、入手して読んでみるべき1冊である、

ということです。

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