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2016年半導体業界再編を振り返る2015年に続いて、やまぬM&Aの嵐(4/6 ページ)

» 2016年12月27日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

ADIがLinear Technologyを買収=買収額148億米ドル

 ソフトバンクによるARM買収発表からほぼ1週間後の2016年7月26日(米国時間)、さらに半導体業界を驚かす、大きな買収が発表された。

 アナログ半導体大手のAnalog Devices(ADI、アナログ・デバイセズ)が、競合のLinear Technology(LTC、リニアテクノロジー)を148億米ドルで買収すると発表したのだ。

 LTCは、業界でも有名な高収益企業であり、常に営業利益率4割以上をキープしている。そのような“超”の付く優良半導体メーカーが、買収されるとあって、大きな驚きを業界に与えた。

 市場調査会社であるIC Insightsによると、2015年におけるアナログICサプライヤーの売上高ランキングでADIは4位、Linearは8位。合併が完了すると、新生ADIはTexas Instruments(TI)に次いで、世界第2位のアナログ半導体メーカーになる見込みだ。

 アナログIC分野は、昨今の再編で寡占化が進むLSIやメモリ分野と異なり、多くのメーカーでシェアを分け合う構図が続いている。シェア首位で2011年にNational Semiconductorを買収したTIでも、世界シェアは18%にとどまる。2015年にInternational Rectifierを買収したInfineon Technologiesが現状、第2位だが、その世界シェアは6%しかない。そのため、ADIによるLTC買収は、新たなアナログIC業界再編を告げる号砲と捉える関係者も多い。

 なお、ADIによるLTCの買収完了予定は、当初、2017年上期中としていたが、順調に各国独禁当局の承認を得ている模様で、早ければ、2017年年初にも完了する見込みだ。

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TDKがTronicsを買収=買収額約55億円

 TDKは2016年8月1日、フランスのセンサーメーカーである「Tronics Microsystems」(以下、Tronics)を買収すると発表した。買収総額は、約4865万ユーロ(約55億円)。

 Tronicsは、慣性センサーとMEMS技術に強みを持つ企業。TDKはTronicsを買収することで、慣性センサーという市場で新しい機会を獲得し、センサー事業の拡大を目指す。

 TDKは2015年12月にも、磁気センサーメーカーMicronas Semiconductorの買収で合意(2016年3月買収完了)し、センサー分野で積極的なM&A戦略をとっている。

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ルネサスがIntersilを買収=買収額約3200億円

 経営再建を遂げ、成長軌道への回帰を図るルネサス エレクトロニクスは2016年9月、次なる成長への一手として、アナログICメーカーであるIntesilの買収を選んだ。買収額は約3200億円。

 かねてより、手元資金約4000億円を元手にM&Aの実施を歴代CEOが示唆してきたルネサスだが、2015年12月に当時のCEOだった遠藤隆雄氏が就任からわずか半年で辞任するなど、成長に向けた一手を打てずにいたルネサス。実質的な遠藤氏の後任として、2016年4月に入社した呉文精氏(同年6月CEO就任)は、M&A候補企業リストを作成し、買収候補との交渉に入ったという。

 そうした複数の候補の中から選んだのが、電源ICを主力にするアナログICメーカーのIntersilだった。ルネサスの主力であるマイコンと、Intersilの電源、ミックスドシグナルICを組み合わせた販売が行えるという製品面でのシナジーへの期待感や、Intersilも近年、人員削減や非採算事業の整理を行い再建を遂げ、境遇が似ているなどの点で選んだという。

 ただ、再編が徐々に進みつつあるアナログIC業界において、ルネサスとIntersilのアナログICシェアを合わせても、3%程度とみられ、業界にインパクトを与えるほどの統合ではないことも確かだ。競合が積極的なM&Aを仕掛ける中で、資金が限られているルネサスは、どう対応していくのか。呉氏は、「今後もM&Aを検討していく」とする。なお、ルネサスの大株主である産業革新機構は、ルネサス株の売却先を探している状況。2017年は、ルネサスの経営環境が大きく変わる可能性もある。

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ON SemiconductorのFairchild買収が完了=買収額24億米ドル

 ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)によるFairchild Semiconductor(フェアチャイルド・セミコンダクター)の買収が2016年9月9日に完了した。買収額は24億米ドル。

 この買収は、2015年11月に発表され、2016年4〜6月に完了する予定だった。しかし、買収発表直後から、中国政府系企業がFairchildに対し、対抗買収案を提示。ON Semiconductorを上回る買収額を提示し、一時、Fairchildの経営陣が対抗買収案を検討する事態となった。

 その後、中国当局の合併承認の取得が進まず、当初計画よりも遅延したが、ON Semiconductorが、Fairchildを傘下に収めた。

 Fairchildは世界初のICメーカーを起源に持つが、ON Semiconductorは“Fairchild”のブランドは使用しないと表明。歴史あるFairchildの名称は消えることになった。

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