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» 2017年06月29日 09時30分 UPDATE

福田昭のストレージ通信(57) 強誘電体メモリの再発見(1):強誘電体メモリが再び注目を集めている、その理由

FeRAM(強誘電体不揮発性メモリ)の研究開発の熱気は、2000年代に入ると急速に衰えていった。だが2011年、その状況が一変し、FeRAMへの関心が再び高まっている。そのきっかけとは何だったのだろうか。

[福田昭,EE Times Japan]

強誘電体材料に起こったブレークスルー

 強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の研究開発が、熱気に包まれている。微細化が可能な、新しい材料が発見されたからだ。しかも幸運なことに、新材料は半導体製造にとって珍しくない材料だった。

 それは、ハフニウム酸化物(HfOx)である。ハフニウム酸化物は、高い誘電率を特徴としており、金属ゲートのMOSFETにゲート絶縁膜として大量に使われている。DRAMのキャパシタ絶縁膜にも採用された実績がある。このハフニウム酸化物に特定の添加物を入れたり、製造工程を変えたりすると、特定の条件下では強誘電体になることが分かってきた。しかも、厚みを10nm以下に加工しても、強誘電体としての性質(強誘電性)が失われないことが実験によって確認された。

 この結果、ハフニウム系酸化物材料を使った強誘電体不揮発性メモリの研究に、「再び」火が付いた。「再び」と書いたのはそれまで、強誘電体メモリ(FeRAM)の微細化に関する研究は「火が消えていた」からだ。従来のFeRAMは、圧電セラミックス系材料の強誘電性を利用していた。この材料には、厚みが100nm〜200nmを下回ると、強誘電性が急速に失われてしまうという弱点がある。厚みの制限は、横方向(水平方向)の微細加工寸法の制限に直結する。設計ルールに換算すると、130nm世代が限界である。これでは、Gbitクラスの大容量化はとうてい、望めない。1990年代には「火が付いていた」研究開発の勢いは、2000年代に入ると急速に衰えていった。

 このくすぶった状況が一変し始めたのは、2011年のことである。先ほど述べたハフニウム酸化物が強誘電性を備えることが、2011年12月に国際学会IEDMで発表された。このときの厚みはわずか7nm〜12nmである。この発表は、強誘電体材料の研究開発コミュニティーに大きな衝撃を与えた。

国際学会IMWで強誘電体メモリのチュートリアルを開催

 それから5年余りが経過し、ハフニウム系酸化物薄膜の強誘電性に関する研究は一種のブームになりつつある。既に小容量ながら、FeRAMシリコンダイが試作されている。

 そこで半導体メモリの国際学会である「国際メモリワークショップ(IMW)」は2017年5月の開催に合わせ、強誘電体メモリをテーマとするショートコース(チュートリアル)を設けた。本コラムではショートコースの講演内容を参考に、強誘電体メモリを基礎から、最新の研究成果まで、解説していく。

強誘電体メモリをテーマとするショートコースの講演一覧。ショートコースの配布資料から(クリックで拡大)
講演タイトルの日本語訳(クリックで拡大)

 ショートコース(チュートリアル)では30分ずつ、4件の講演があった。はじめに強誘電体の基礎知識と従来の強誘電体メモリを解説している。次の講演では、ハフニウム酸化物の基礎知識と物理的な性質、強誘電性を引き出すための最適化を説明していた。3番目の講演では、ハフニウム酸化物を応用した2種類のメモリ、すなわちFeRAMと不揮発性DRAMを解説した。最後の講演では次世代トランジスタへの応用の可能性を説明した。トランジスタに強誘電性を持たせた1トランジスタ・メモリと、負性容量を備えたトランジスタである。

(次回に続く)

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