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» 2017年09月07日 10時30分 公開

福田昭のストレージ通信(74) 強誘電体メモリの再発見(18):従来型材料を使った強誘電体トランジスタの研究開発(前編) (1/2)

強誘電体トランジスタ(FeFET)の原理は比較的単純だが、トランジスタの設計と製造は極めて難しい。1990年代前半から開発が続く中、約30日というデータ保持期間を強誘電体トランジスタで初めて実現したのは、日本の産業技術総合研究所(産総研)だった。

[福田昭,EE Times Japan]

原理は単純だが製造は極めて難しい

 本シリーズの前回では、強誘電体薄膜をゲート絶縁膜に導入することで、1個のトランジスタだけでメモリセルを実現する「強誘電体トランジスタ(FeFET:Ferroelectric FET)」の基本原理をご紹介した。

 前回で説明したように、強誘電体トランジスタ(FeFET)の原理は比較的単純なのだが、トランジスタの設計と製造は極めて難しい。従来型のペロブスカイト系強誘電体材料である「ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)」と「タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SBT)」、有機高分子の強誘電体材料である「ポリフッ化ビニリデン・トリフロロエチレン(PVDF-TrFE)」を使った強誘電体トランジスタの研究開発は、1990年代前半から現在に至るまで、続いている。

 1990年代は、不揮発性メモリとしての基本的な特性すら、まともに実現できない状況が続いた。粗く言ってしまうと、トランジスタを作製しても、データを保持できない。さまざまな電極材料とゲート絶縁材料を試し、特性の良い組み合わせを模索する時期が続いた。30日前後というデータ保持期間をトランジスタで実現できたのは、2004年〜2005年のことである。

産業技術総合研究所(産総研)が2004年12月15日に発表した強誘電体トランジスタのデータ保持特性。出典:産業技術総合研究所(参考プレスリリース) (クリックで拡大)

日本の産総研が強誘電体トランジスタの研究で大きな成果

 30日前後というデータ保持期間を強誘電体トランジスタで初めて実現したのは、日本の研究機関だ。国立研究開発法人の産業技術総合研究所(産総研)である。2004年12月15日に産総研は、強誘電体トランジスタで10日間のデータ保持に成功したと報道機関向けにリリース発表した。このリリースは、同時期に開催された国際学会IEDMで研究成果を発表することを受けて発行された。

 産総研は翌年の2005年には、フルペーパーの学術論文(JJAP)で研究成果を公表した。このときには最長で37日間のデータ保持を確認するとともに、10年間のデータ保持期間を実用的な水準で実現可能との見通しを得た。

 試作した強誘電体トランジスタの強誘電体材料はSBT、ゲート絶縁材料は(HfO20.75(Al2O3)0.25、ゲート電極は白金(Pt)である。

国際学会「IMW2017」のチュートリアル講演で示された産総研による学術論文(JJAP)の抜粋。上はトランジスタの製造工程、左下はトランジスタの電流電圧特性、右下はトランジスタのデータ保持特性。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
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