2011年に二酸化ハフニウム強誘電体が公表されて以降、わずか6年ほどの間に、これだけの研究成果が発表されてきたのは、すごいことだ。そして発表された研究成果、具体的にはキャパシターやトランジスタなどの試作結果がかなり良好であることも、驚くべきことだといえる。通常は、新しい材料によって作製したデバイスの特性は、非常に貧弱であるからだ。
もっとも、初めからかなり良好な結果が得られた理由は、推測できる。最も重要なのは、二酸化ハフニウムと二酸化ジルコニウムが、既に半導体の量産に使われている材料だという事実だろう。これは原料の純度が、半導体の量産に適用できる水準までに高いことを意味する。新しい機能を実現する新しい材料は、半導体の量産には使われていないことが多い。この場合、原料の純度が低い。つまり、成膜の品質が低い。このため、素子本来の実力を発揮できない。
ところが二酸化ハフニウムと二酸化ジルコニウムには、材料が新しいのではなく、既に使われていた材料で新しい性質を見いだした、という事情がある。裏返すと、原料の純度を高めることによる、性能の向上が期待できないのではないか、という懸念が存在する。
当面の大きな課題は、書き換え寿命が低いことだろう。従来材料であるPZTを使ったFeRAMに近い水準にまで、書き換え寿命を伸ばしたい。実現するかどうかは、まだ分からない。
もう1つの大きな課題は、研究の広がりである。現在は実質的に、1つの共同研究グループが研究開発を進めているに等しい。世界各地域の大学や研究機関、企業などが研究を手掛けることで、知見が広がり、データに厚みが出る。そのことによって、二酸化ハフニウムと二酸化ジルコニウムの限界が明確になってくる。
発見が公表されてから、まだわずかに6年ほどである。しばらくは強誘電体メモリの研究開発コミュニティーで、二酸化ハフニウムと二酸化ジルコニウムが最も注目すべき材料である時代が続くだろう。今後の研究の発展を、大いに期待したい。
(次回に続く)
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