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埋め込みMRAM技術がフラッシュとSRAMを置き換えへ福田昭のストレージ通信(103) GFが語る埋め込みメモリと埋め込みMRAM(3)(1/2 ページ)

今回は、GLOBALFOUNDRIESが提供する埋め込みMRAMマクロの概要を解説する。

» 2018年05月25日 12時00分 公開
[福田昭EE Times Japan]

2種類のCMOSプラットフォームに2種類のMRAMが対応

 半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前日に「ショートコース(Short Course)」と呼ぶ1日間のセミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、「Memories for the future: device, technologies, and architecture(将来に向けたメモリデバイスの技術とアーキテクチャ)」と題したショートコースが開催された。このショートコースでは6本の技術講座が午前から午後にかけて実施された。

 その中から、埋め込みメモリ技術(CMOSロジックとメモリを同じシリコンダイに混載する技術)に関する講座「Embedded MRAM Technology for IoT & Automotive(IoTと自動車に向けた埋め込みMRAM技術)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者はシリコンファウンダリー(半導体製造請負サービス企業)大手のGLOBALFOUNDRIESでeNVMフェローを務めるDanny P. Shum氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前回は、埋め込みフラッシュメモリの微細化限界と、MRAM(磁気抵抗メモリ)による置き換えの可能性を論じた。今回は、GLOBALFOUNDRIESが提供する埋め込みMRAMマクロの概要を解説する。

 前回で述べたようにGLOBALFOUNDRIESでは、2xnm以下の技術世代に向けた大容量の埋め込み不揮発性メモリとして、MRAMを考えている。提供する埋め込みMRAMのマクロには、2種類のバージョンがある。埋め込みフラッシュメモリの置き換えを想定したMRAM(eMRAM-F)と、埋め込みSRAMの置き換えを想定したMRAM(eMRAM-S)である。

 GLOBALFOUNDRIESはCMOSロジックのプラットフォームとしては、2種類のプラットフォームを微細化していくことを公式に発表している(参考記事:EUVと液浸、FinFETとFD-SOI、GFの強みは2点張り)。1つはサーバやネットワーク、グラフィックスなどの高性能プロセッサに向けたプラットフォーム(高性能プラットフォーム)で、バルクシリコンとFinFETの組み合わせを基本とする。もう1つは低消費電力のモバイルやウエアラブル、IoT端末などのマイコン(マイクロコントローラ)やSoC(System on a Chip)などに向けたプラットフォーム(低消費電力プラットフォーム)で、完全空乏型SOI(FD-SOI)とプレーナーFETの組み合わせを基本とする。

 そしてバルクシリコンとFinFETを基本とする高性能プラットフォームには、埋め込みSRAMを置き換えることを想定したMRAM(eMRAM-S)マクロを提供する。このSRAMあるいはMRAMは、ワークメモリとして機能する。高速のデータ書き換えが頻繁に発生するメモリである。MRAMはメモリセルがSRAMよりも小さいので記憶密度が向上する他、待機時の消費電力が減少する。

GLOBALFOUNDRIESが提供する2つのCMOSプラットフォームと埋め込みMRAMの位置付け (クリックで拡大) 出典:GLOBALFOUNDRIES

 またFD-SOIとプレーナーFETを基本とする低消費電力プラットフォームには、埋め込みフラッシュメモリを置き換えることを想定したMRAM(eMRAM-F)マクロを提供する。このフラッシュメモリあるいはMRAMは、CPUを動かすプログラムコードを格納する。メモリには大きな記憶容量と不揮発性、長期間のデータ保持を要求される。フラッシュメモリでは微細化が困難な22nm以降のプラットフォームで、MRAMは大容量のコード格納用不揮発性メモリとして使われる。

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