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» 2012年07月26日 10時30分 UPDATE

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―:若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜 (3/4)

[江端智一,EE Times Japan]

第2の戦略 「温厚」

 エンジニアにとって温厚であることは極めて重要です。こちらも、「誠実」と同様、モラルとしての価値なんぞは、どうでもよいことです。ただし、「温厚」という戦略は、上司に対しては必要ありません。同僚または後輩、部下に対してこそ発揮する必要があります。

 この理由のメインは、同僚や後輩が、あなたを追い抜いて出世するからです。新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手の皆さんは、「先輩と後輩」というのは「指示」や「命令」の流れる方向を示すベクトル程度のものであると認識していると思います。これは無理のないことなのです。なぜなら、小学校から大学に至るまでの全期間において、このベクトルが逆転する機会はなかったからです。間違えても、公の場で先輩を呼び捨てにすることはなく、また先輩が後輩を「さん付け」で呼ぶことはなかったはずです。しかし、会社は違います。

図 写真はイメージです

 あなたより優秀な後輩は、あなたの後に山ほど入社してきて、簡単にあなたの上司となります。優秀な人が出世するのは当然です。入社年度の古さなど、全く問題になりません。あなたが、学生時代の体育会のようなノリで、理不尽な命令をしていた後輩は、あなたの上司になった後、正当な命令指揮系統にのっとり、理にかなった命令を下します。その命令を受け取るあなたの気まずさは、半端ではありません。

 私の場合、いわゆる「体育会系のノリ」(先輩に過剰なほど丁寧にあいさつするとか、後輩に対して使い走りをさせるとか)というのが、嘔吐(へど)が出るほど嫌いでした。私は、会社という組織の構成員を、「たまたま同じ組織に属した、赤の他人の集合体」と認識しており、過度に上司にこびることなく、また、不要に部下に威圧的になることはなく、淡々と社会人生活を過ごしてきました(そう思っているだけかもしれませんが)。このことは、私にとって非常に運が良かったことだと思っています。

 新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手の皆さんにとっては、この指揮命令のベクトル逆転現象は、まだよく見えないと思います。だからからこそ、今のうちに、私は声を大にして申し上げたいのです。長期的に会社に所属して生きていく予定があるなら、「上司なんぞはぞんざいに扱ってもよい。何よりも誰よりも、後輩を大切にせよ」と。

第3の戦略 「寄生」

図 写真はイメージです

 エンジニアにとって、安易に退職しないことは極めて重要です。その理由は、もちろん精神的な側面や経済的な要素もありますが、最も重要なことは、エンジニアの財産が「技術」であるからです。「人脈」でも「ノウハウ」でも「腹芸」でも「根回し」でもなく、「技術」という無体財産は、この「先の見えない時代」において、強力な武器になります。

 私の姉は「あんたはいいわね。明日クビになっても、あさってには再就職できるんだから」と言います。姉は昨今のエンジニアの再就職の状況を少々誤認していると思いますが、世間一般の「エンジニア」に対する1つの認識であると認められます。

 しかし、問題は「安価な技術」は短い時間で取得可能であり、それゆえに価値が低いことです。我々が目指すのは「高価な技術」です。新卒から入社5年目くらいまでの期間であれば、まずまずの値段の技術を最低でも1つは取得できると期待できます。もちろん、厳しくて辛い時期を凌ぎながら技術を取得することは、大変なことだと思いますし、加えて、うんざりするほどの英語文献を読まされ、理解しなければなりません。全く迷惑な話としか言いようがありませんが、しかしですよ、強制的であれ、暴力的であれ、こんなに英語に接するチャンスを与えられる業界は珍しいです。

 これをチャンスと考え、気の合わない同僚や上司との付き合いなど無視して、ひたすら技術の取得に努めましょう。「寄生」は戦略です。「技術」という名の小銭をせっせと稼ぎつつ、いつでもすぐに飛び出せるその日のための戦略です。

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