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» 2013年01月15日 07時00分 公開

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(12):「失敗が約束された地」への希望なき出発……海外出張は攻撃的に準備する (3/5)

[江端智一,EE Times Japan]

成田空港に無事到着できません

<トラブル事例>

 世界一緻密な運行制御を誇る日本の鉄道のダイヤは、乱発する人身事故でズタボロです。西村京太郎ミステリーは、もはや我が国では成立しなくなりました。犯人の苦心のアリバイ作りが徒労に終わることは結構なことですが、われわれの業務までつぶされてはかないません。

<準備しておくこと>

 成田空港までの全区間で、発生し得る事故を想定し、代替ルートをイメージしておくことが必要です。鉄道会社は、事故の情報を明確に言ってくれません(電車の遅延は、10分の予定が2時間になることも、またその逆のパターンもあり、どちらに転んでも客からはクレームを受けるからです)。

 このような場合はTwitterの検索機能が結構使えます。事故の情報がリアルタイムで更新される場合が多いので、代替ルートを使うべきか否かを判断しやすくなるのです。タクシーに飛び乗るのであれば、これも初動の判断で決まります。事故発生の報告から1分後には、タクシー乗り場に走っていることが望ましいです。長蛇の列になっていたら終わりです。

セキュリティを通してもらえません

<トラブル事例>

 座席番号が印刷された飛行機のチケットを受け取った。荷物も預けた。ボーディング(搭乗)まで時間がある。じゃあ、レストランで飯でも食うかと思っている人。何考えているのですか。そんな時間があったら、1秒でも早くセキュリティを通過しなければなりません。

 荷物を預けないことをポリシーとしている私の場合、PC2台が入った手荷物4つを通過させるだけでもひと苦労です。そして、たいてい、中を開けてみせろと言われ、ほぼ100%ボディチェックを受けます。

 成田空港のセキュリティゲートのアラームは、機械が金属を検知して作動しているのではなく、装置の側にいる誰かが、私の人相を見てボタンを押しています(間違いない)。成田だけではありません。米国のサンフランシスコもコロラドも、フランスのシャルルドゴールも、つい最近は中国の広州までもが、インターナショナル連携で、私の出張を妨害しました。

 私は、国際的テロリストとして指名手配されているのではないかとまで疑心暗鬼に陥っています。人相が悪いというだけで、ボディチェックを強要されていることは、私の中ではもはや確信に近いです。

<準備しておくこと>

 持ち込む荷物の数を減らし、セキュリティチェックに目(ガン)を付けられないように、爽やかで、軽やかな笑顔でゲートを抜けましょう。全身から暗黒面のフォース(またはオーラ)がにじみ出ないように、感情を抑えましょう。たとえ、あなたが、理不尽な出張命令に怒り狂っていたとしてもです。

 服装にも気をつけましょう。できるだけ色調の明るい、典型的なジャパニーズビジネスマンを装えるような服を着用するようにしましょう。

 また、政治的信念を持っていない、フツーの日本人を演じきることに全力を注ぎましょう。

 間違っても、

  • 膝まである漆黒の防寒着に、黒のキャップを着用し
  • iPodのヘッドフォンを装着し、黒のリュックサックを背負い
  • 黒のサイドバッグを肩からかけて
  • 銀色のハーフサイズのスーツケースを携行する

という、「特殊工作部隊の狙撃手」のように見えてしまう服装はNGです。

 この格好で英国はロンドンのヒースロー空港の「外」に出ようとしたところ、私は警察官につかまり、ボディチェックと全部の荷物の開示命令(つまり、職務質問)を受けることになりました。

隣の席には、「快適な空の旅」を一瞬でぶち壊すヤツが座ります

<トラブル事例>

こういうヤツです。

  • 「あんた、香水の風呂に入ってきたのか?」というような、気を失いかねないほどの強烈な香水を散乱させる米国人のおばさん
  • 「あんたはどこの国の人間だ」「学生か、社会人か」「結婚しているのか」と聞きまくり、こっちが眠そうなふりをしたり、仕事の資料を読んでいるふりをしたりしても、質問が止まらない米国人のビジネスマン。「子供はいるのか」と言われて、うかつに“Yes”と答えようものなら、自分の子供(正直、「かわいい」とは思えない肥満の子供)の写真を取り出して見せつけた挙げ句に、私に「お前の子供の写真を見せろ」と言い、「そんなものは持ち歩かない」と言うと、いきなり軽蔑したような目で私を見る「家族至上原理主義者」
  • そして、極め付けが、「あんたの腹の一部、肘かけを越えて、私の座席の1/4を占拠しているのだけど」、というような、常軌を逸した米国の「肉」

 さらに、この時のフライトが、北米の東海岸行き(当然エコノミー席)という最悪のケースで、14時間30分もの間、「肉プレス機」の中に閉じ込められるという、この世の地獄を味わいました。

 国土交通省は、かかる「肉」に対して2席分で予約を受けるような政令を制定すべきでしょうし、かかる政令がなくても、航空会社は自発的に「肉は2席分」の運用を開始すべきです。今度、あの「肉プレス機」の隣になったら、私は「肉」本人ではなく、行政庁と航空会社に対して、訴訟を起こす準備があります。

<準備しておくこと>

 まず、「香水」と「家族至上原理主義者」に対しては、アイマスクと耳栓とマスクで対応しましょう。「あんたが迷惑だ」、または、「私はアンタにコミットする気は全然ないのだ」という明示的な意思表示になるでしょう。

 一方、「肉プレス機」対策ですが、正直に申し上げて、決め手となる手段はありません。いや、あるにはあるのですが、絶対的な意味においてお勧めはしたくありません。本当に危険なのですよ、「睡眠薬とアルコール」は。

アルコールや睡眠薬は、到着直前に効いてきます

<トラブル事例>

 飛行機のハッチが閉まった瞬間、あなたは現地の時刻に時計を合わせて、直ちに現地時間の行動に合わせる必要があります。ジェットラグ(時差ボケ)防止のためです。ところが人間の体内時計は、そんなに簡単に時刻を変更できるものではありません。飛行機に乗ったら、現地時間は午前3時などというケースは結構あります。

 このような場合、可及的速やかに寝ましょう。機内食なんぞは食わなくてもよいです。この初動睡眠に成功するか否かは、現地での活動に大きな影響を与えます。エコノミー席は睡眠に適した場所とは到底呼べませんし、ましてや、前述したような「肉」プレス機に挟まれながら眠りにつくことは、至難の技です。

 話は逸れますが、「皆さま、快適な空の旅をお楽しみください」とアナウンスする旅客機の機長は、自分が「客」となって飛行機に乗ったことがないのではないかと、私は疑っています。私は、空の旅が快適であったことなど、一度たりともありません。数回のトイレタイムを除いて、飯や飲料水の給餌を受けながら、あんな狭い席に押し込まれ、同じ態勢を維持させられて十数時間。これをどういう文脈で「快適」という単語で表現できるのか、私には全く理解できないのです。

<準備しておくこと>

写真はイメージです

 睡眠薬、またはアルコールを準備しておくとよいでしょう。必要なら、着席と同時に摂取してしまうのもよいと思います。睡眠薬は、お医者さんに相談すると処方してくれます。また、外国では、信じられないほど強力な睡眠薬(睡眠導入剤?)がスーパーマーケットで売っています。私は、10瓶単位で購入してきます(ただ、手荷物検査で見つかると厄介です)。

 ただし、やってはならないのが、「睡眠薬とアルコールの同時摂取」です。タブー中のタブーで、冗談抜きで命に関わります。事実、私は死線をさまよったことがあります(次回、このエピソードを紹介します)。

 この他、「前日無理して徹夜する」などもあります。実際に出張前の準備というのは、ハンパでなく忙しいですから、それも悪くないかもしれません。ただし、空港に向かう途中、電車で寝過ごすというリスクもあります。

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