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» 2018年08月29日 10時00分 公開

カーアクセスの新たな流れ:「スマホがクルマの鍵になる時代」のセキュリティ、デジタルキーの管理が肝に

スマートフォンの普及は、カーアクセスの世界に新たな流れをもたらしている。スマートフォンを「クルマの鍵」として使用するというこの技術は、ユーザーにとっても使い勝手が良く、自動車以外の業界で新しいサービスを生み出す可能性を秘める。だが、NXP Semiconductorsは、優れた利便性の裏で、スマートフォンとクルマの間のセキュリティをいかに確保できるかが課題になっていると指摘する。

[PR/EE Times Japan]
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 コネクテッドカーや自動運転車の開発が進み、一部の技術は既に市販車に搭載され始めている中、セキュリティに対する懸念の声がますます高まっている。インターネット経由でソフトウェアをアップデートしたり、制御したりするこれら次世代の自動車では、ネットワークにつながった時点で、ハッキングなどの本質的なリスクを抱えることになる。

 車載半導体シェアトップ*1)のNXP Semiconductorsの日本法人で車載アナログ製品のマーケティング部長を務める林則彦氏は、「セキュリティでは、守る側と破る側のイタチごっこが常に繰り返されている。“破られないセキュリティ”をいかに実現するかが重要になる」と述べる。

 NXPは、コネクテッドカーにおけるサイバーセキュリティ対策として、「4+1」というアプローチを提案している。「4+1」の「4」とは、「セキュア・インターフェース:ネットワークの入り口」「セキュア・ゲートウェイ」「セキュア・ネットワーク:ネットワークの経路上」「セキュア・プロセッシング:デバイス/モジュール」という4つの階層に対して、要求レベルに応じてセキュリティをかけていく仕組みを指す。

NXPは、サイバーセキュリティ・ソリューションとして「4+1」のアプローチを提案している

カーアクセスの新たな流れ

 では「+1」とは何か。これはセキュア・カーアクセスで、ひと言でいうと「クルマの鍵を守ること」である。ネットワーク上やデバイス上でセキュリティ対策を行う大前提として、まずは「クルマのドアを不正にロック/アンロックさせない、エンジンを不正にかけさせない」ようにするのだ。

 林氏によれば、クルマにアクセスする手段には、「クラシックキー」と「スマート・カーアクセス」という2つの大きな流れがあるという。

 「クラシックキー」は、トランスポンダを内蔵したイモビライザーや、鍵をポケットやバッグに入れたままドアのロック/アンロックができるパッシブ・キーレス・エントリー(PKE)がある。

 一方で、自動車メーカーが次の手段として考えているのが、「スマート・カーアクセス」である。例えば、鍵にディスプレイが搭載された「ディスプレイキー」では、クルマのバッテリーレベルやタイヤの空気圧などクルマの情報が表示されるようになっている。

 ディスプレイキーは、BMWの「BMW 7シリーズ」など一部のハイエンド車種に導入されているものの、スマート・カーアクセスとして現在のトレンドになっているのは、やはりスマートフォンの活用だ。「2〜3年のサイクルでスマートフォンを買い替えるユーザーが多く、新しい機種になるたびスマートフォンに搭載された技術も進化している。そこで、スマートフォンに搭載されているBluetoothやNFCを使ってクルマにアクセスし、ドアのロックやアンロック、エンジンスタートなどを行うスマート・カーアクセスが、トレンドになっている」(林氏)

カーアクセスの技術には、2つの大きな流れがある

PKEが抱える課題

 PKEの市場は今後も成長すると予測されているが、課題もある。

 1つがノイズだ。自動車とPKEの鍵は、125kHzのLF帯と315/434MHzのUHF帯を使って相互に通信し、認証や位置検出を行っている。ところが、今後普及していくことが予想されている、電気自動車などのワイヤレス給電にも、85kHzという同じLF帯の周波数の利用が一般的になっている。しかも、使用する電力は3kW、5kWと非常に大きい。そのため、クルマ同士の距離が2〜3mと近い場合、PKEの周波数と干渉し、ドアをアンロックできない、エンジンがかからないといった事態が発生することが報告されている。

 もう1つの課題がリレーアタックだ。通常、クルマは通信距離が数メートル程度の微弱なLF帯を発し、このLF帯の電波をスマートキーが受信した場合に、スマートキーは通信距離の長いUHF帯電波を使って応答し、アンロックされる。そのため、クルマの近くにスマートキーがないと、開錠されない仕組みになっている。しかし最近、欧州を中心に、クルマからの微弱なLF帯の電波を増幅して、遠く離れたスマートキーにまでLF帯の電波を到達させて、スマートキーを応答させ、車両を盗むというリレーアタックが社会問題化しているという。林氏は、「将来的には、リレーアタック対策を施していない自動車は盗難保険に加入できないことも十分想定できる」と述べる。

 NXPはこうした課題を踏まえ、ノイズによる影響を最小限に抑えるPKE向けチップや、リレーアタック対策を行った車載用デバイスの開発を進めている。

スマホをクルマの鍵に

 スマート・カーアクセスの手段として、最も大きなトレンドになっているのは、前述した通りスマートフォンを使う方法だ。

 このトレンドの背景には、カーシェアリングに代表されるように、自動車の所有の仕方や使い方に変化が生まれていることがある。2030年には、自動車を購入してそのクルマをいつでも使う、という現在の形ではなく、レジャーに出掛ける時、仕事で外回りをする時、買い物に行く時といったような目的に応じてクルマを選ぶ時代がくるともいわれている。

 そのような時代の到来を前に、自動車の鍵の形は大きく変わりつつある。カーシェアリングでは、1個しかない物理的な鍵を借りたり返却したりするよりも、スマートフォンに転送されたデジタルキー(暗号キー)を使う方が利便性に優れている。さらに、宅配先の個人や家庭が所有する自動車のトランクを「宅配ボックス代わり」にする試みが欧米で始まっているが、配達の際には、一度だけトランクを開けるためのアクセスキーを入手するために、スマートフォンアプリなどが使われている。

 こうした“次世代のカーアクセス”を実現する上で、Bluetooth Low Energy(BLE)とNFCの活用に注目が集まっている。

 基本的にはBLEを使い、スマートフォンの画面上でクルマのドアのロック/アンロックを行う。車内のセンターコンソールなど決められた場所(NFCが搭載されている場所)にスマートフォンを置くと、スマートフォンのNFCと相互通信して認証を行い、エンジンをスタートできる。もしもスマートフォンのバッテリーが切れBLEが使用できない場合には、NFCをバックアップとして利用し、スマートフォンをドアハンドルにかざしてロックやアンロックを行う仕組みもある。

 NXPは、ドアハンドル用に特化したNFCフロントエンドIC「NCx3320」を開発した。従来よりも高い、最大で350mAの電流を出力できるという特長がある。ドアハンドルに施されているめっきによってNFCの信号が減衰してしまうので、より高い出力が必要になるのだ。さらに、普段は省電力モードを維持し、スマートフォンを検知するためだけの信号を間欠的に発信し、スマートフォンを検知した場合は即座に高いパワーを出力する、という機能も搭載されている。

画像上:スマートフォンをカーアクセスに使用することで、新たなサービスが生まれる可能性がある/画像下:BLEとNFCを活用して、ドアのロック・アンロックやエンジンスタートを行う

 自動車市場では、BLEとNFCを使ったモバイルキー・アクセスの流れが既にある。BMWは、専用アプリ「BMW Connected」を介してスマートフォンからクルマにアクセスする技術を発表。2018年7月から導入できるようになっている。NFCを使ってドアのロック/アンロックとエンジンスタートが可能で、スマートフォンの画面にクルマのステータスが表示される。

デジタルキーの管理は、誰が行うのか

NXPジャパン アドバンスド・オートモーティブ・アナログ製品統括部 マーケティング部長の林則彦氏

 スマートフォンを自動車の鍵として使う動きは順調に進んでいるようにも感じられるが、「課題もある」と林氏は指摘する。「スマートフォンでクルマにアクセスするには、デジタルキーが必ず必要になるが、それを誰がどのように管理するのかが、まだ明確に標準化されていない」(林氏)。そのため、BLE/NFCを使ったスマート・カーアクセスは、「Samsungのスマートフォンのユーザーが、ドイツ国内のみで使える」といった限定的なものになっている。これでは、ユーザーにとって不便だ。

 この課題を解決すべく、業界団体「CCC(Car Connectivity Consortium)」では、デジタルキーの仕様策定やエコシステム構築について議論が始まっている。CCCには世界各国の自動車メーカーや半導体メーカーなど、現在約75のメンバーが参画している。NXPはCCCのコアメンバーであり、同社が持つ暗号キーのノウハウや知見を共有して、CCCの活動に貢献している。

 CCCは2018年2月、デジタルキー仕様策定のフェーズ1を完了したと発表。フェーズ1は、自動車メーカーが所有し管理しているデジタルキーを、スマートフォンにダウンロードする手法についてまとめたドキュメントである。林氏によれば、既に議論が始まっているフェーズ2では、クルマとスマートフォンとの通信について規定される予定となっている。

クルマで最も地価が高い場所にNFCを搭載

 NFCの使い道はカーアクセスだけではない。スマートフォンにワイヤレス給電する際の、カード検出にも使うことができる。

 通常、ワイヤレス給電器は、電力損失検出方式(PLD)によって硬貨などの金属部品を検出し、異物がある場合は給電しない仕組みを備えている。だが、スマートフォンケースに納められたクレジットカードや免許証、銀行カードなどは、金属の含有量が少ないので検出が難しい。そこで、まずNFCを使ってこれらのカードを検出し、検出されたら給電しないようにするのだ。

 NFCがクルマのセンターコンソールに搭載されれば、こうした機能を活用しやすくなる。ドライバーから手が届きやすいセンターコンソールは、技術を導入する場所としては競争率が非常に高い場所だ。いわば、クルマの中で“最も地価が高いスペース”なのである。

 そのため、「エンジンスタートだけ」「ワイヤレス給電だけ」という単一の用途では効率が悪いが、センターコンソールにNFCを搭載し、そこにスマートフォンを置くことで、「スマートフォンによるエンジンスタート」「スマートフォンの安全なワイヤレス給電」「NFCにより置くだけでBLEのペアリングを行い、スマートフォン・コンテンツを転送」「NFCによる決済」などの複数機能を実現できるならば、価値はぐっと上がる。

 NXPは、セキュア・カーアクセスのためのPKE、そしてドアハンドル用に特化したNFCフロントエンドIC「NCx3320」車載向けのNFCコントローラー「NCx3340」を提供し、NFCタグ用のデバイス「NCJ3310」を開発している。さらに車載向けBLE対応のマイコン「Kinetis KW36/35」もラインアップしており、セキュア・カーアクセス、ならびにスマートフォンを利用したスマート・カーアクセスの包括的なソリューションを提供する。

 NCx3340は、NFCフロントエンド回路と32ビットマイコンを組み合わせた製品で、NFCのリーダー/ライターモード、P2P(ピア・ツー・ピア)モード、カードエミュレーションモードの全てをサポートしている。NCx3340を使うことで、エンジンスタート、ワイヤレス給電の際のカード検出などが全て可能になる。NFCタグ用のデバイスであるNCJ3310は、カードエミュレーションモードでNFCを使うためのデバイスとなる。

 スマートフォンの普及によって、自動車の鍵は次世代へと変わりつつある。デジタルキーの管理を含め、自動車を取り巻くネットワークや通信のセキュリティを強化するには、CCCが取り組んでいるように、自動車メーカーを中心に、自動車業界で早急にエコシステムを構築する必要がある。林氏は、そうしたエコシステムの中で、「NXPの役割は、自動車とスマートフォンの間のセキュリティを強化するデバイスを開発することだ」と強調した。


【出典】
*1)Strategy Analytics「Automotive Semiconductor Vendor 2017 Market Shares(2018 Apr)」

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提供:NXPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月28日

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