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» 2019年01月16日 10時00分 公開

ADLINKジャパン 社長 服部幹雄氏:AIとの関わり強めるIIoT、カギはリアルタイム伝送

組み込み型コンピュータを軸に事業拡大を続けるADLINK。インダストリアルIoT(IIoT)市場においても人工知能(AI)との関わりが、より強くなる。評価用に用意した産業用ROS開発キットが自動車メーカーなどから注目されている。ADLINKジャパンの社長を務める服部幹雄氏に、今後の事業戦略などを聞いた。

[PR/EE Times Japan]
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Armコア搭載プロセッサも積極的に活用

――2018年の状況を教えてください。

服部幹雄氏 2018年は、その前年と同様に25%の成長を見込んでスタートした。結果として、ほぼ予想通りに推移した。日本法人の売上高は約3600万米ドルで、ADLINK全社の中で、日本が最も高い伸長率となりそうだ。

 基本的なビジネスモデルや製品構成は、これまでと大きく変化することはない。エンベデッドコンピューティングやモジュールコンピュータなど、組み込み型コンピュータが核となる。こうした中で、COM(コンピュータオンモジュール)製品などに搭載するプロセッサはこれまで、Intel製が中心であった。今後は、用途に応じてArmコア搭載プロセッサも積極的に活用し、事業の軸となる製品の1つに育てていく。

 例えば、準天頂衛星システム「みちびき」による測位サービスに向けたゲートウェイ製品がある。当社でもArmコアベースのプロセッサを搭載した車載向けゲートウェイ製品の開発を完了した。自動車のIoT(モノのインターネット)化は、実現する機能によって進化の度合いが異なる。新たな機能が要求される領域にフォーカスして、車載ビジネスを展開したい。

DDSを技術基盤としてAI処理を展開

――足元の事業環境に変化はありますか。

服部氏 以前から、『これまでの延長線上にない、さまざまなブレークスルーが起こる可能性が高い』と申し上げてきた。現実の問題として、インダストリアルIoT(IIoT)市場においても、ディープラーニング(深層学習)など人工知能(AI)との関わりが、より強くなってきた。当社もエッジ側のコンピュータにAI処理機能を搭載するため、パートナー企業との連携などを進めている。

――具体的な取り組みを教えてください。

服部氏 ADLINK製品が高く評価されている理由の1つにDDS(Data Distribution Service)技術がある。この技術を用いるとネットワーク上でほぼリアルタイムにデータ伝送が可能である。信号遅延は最大数十マイクロ秒レベルと極めて小さい。DDSの技術基盤を活用することで、エッジ側コンピュータでもAI処理を容易に実行することが可能となった。

 エッジ側のコンピュータにAI機能を組み込みたい顧客にとっては、DDSで実現するリアルタイムのデータ伝送技術と、長年蓄積してきた熱対策技術などのソリューションが魅力的に映っているようだ。

 DDS技術は、ロボット用アプリケーションフレームワーク「ROS(Robot Operating System)/ROS 2」に通信ミドルウェアとして標準実装されている。ROS/ROS 2は既に、宇宙航空システムやロボットシステムなど、高い信頼性を必要とする用途で、多くの採用実績がある。

Intel MovidiusとNVIDIA製GPUを搭載した開発キット

――ROS 2をミドルウェアとした産業用ROS開発キット「Neuron」も用意されています。

産業用ROS開発キット「Neuron」のボード

服部氏 Neuronは、Intel x86プロセッサに加え、AI処理に特化したプロセッサ「Intel Movidius」やNVIDIA製GPU、センサー用インタフェースなどを、外形寸法が170mm角のボード上に実装している。RTOSやROS 2.0を搭載しており、放熱特性などにも優れたAIコンピューティングプラットフォームである。ユーザーはNeuronを活用することで、ビジョンシステムや自律的なナビゲーションシステムなどのアプリケーション開発に特化することができ、開発したシステムの動作確認や評価を容易に行うことができる。

産業用ROS開発キット「Neuron」の構成

 Neuronはこれまで、主要な展示会で紹介してきたこともあり、大きな反響を得ている。有料セミナーを受講した自動車メーカーの担当者などから、リアルタイムのデータ伝送などに関する技術的な問い合わせが相次いでいる。

――AI機能を搭載したIIoTについては、競合各社も取り組みを強化しています。他社との違いはありますか。

服部氏 当社はIntelのIoTソリューションアライアンスにおけるプレミアメンバーであり、Intel製Movidiusを活用して最適なAIソリューションを提案してきた。そして新たに、NVIDIAとも提携することになった。これによって、NVIDIAからGPUを当社のボードに直接実装して、組み込み用途に最適化することが可能となった。

 NVIDIA製GPUはこれまで、グラフィックスカードの形状でないと入手できなかった。当社が産業用組み込み機器開発でさまざまな経験と知識を持ち、小型ロボットなどへ多くの採用実績を持っていることなどがNVIDIA社に評価され、両社の強力な技術を最適な形で実現できることは組み込み業界のAI化に向け競合他社を大きくリードできると確信している。

 今後は、ビジョン系などに用いられるほとんどの組み込み型コンピュータには、Intel MovidiusやNVIDIA GPUを実装して、AI機能を標準搭載することになるだろう。

――AI機能を実装するとなると、ソフトウェア開発も難しくなります。

服部氏 具体的なビジネスモデルによって、当社単独で対応できるケースもあれば、連携するパートナーが変わることもあるだろう。顧客の要求を慎重に聞きながら、状況に応じて最適なソリューションを提供したい。

西日本支社の売上高、数年後には逆転も

――2019年の事業見通しを聞かせてください。

服部氏 2019年の事業計画でも、2018年同様に20〜30%の成長率を見込んでいる。組み込み型コンピュータなど既存ビジネスに、IIoTビジネスが上乗せされる感じだ。AI機能を備えたIIoTビジネスは、まだコンセプトを提案するレベルであり、実際に量産ベースで軌道に乗るのは2020年以降となるだろう。

 新たに期待できるビジネスとしては、防衛システムなどの市場である。ADLINK本社では実績のある分野だが、日本ではまだ手を付けていない。DDSの特長を最も生かせる分野の1つでもあり、日本の顧客からは製品の引き合いも増えている。2019年から本格的に市場の開拓に乗り出したい。

 名古屋や関西地区を中心に中部地区以西を担当する西日本支社の業績も好調だ。2017年10月に名古屋地区へ開設したが、日本における売上高の3分の1を占めるまでになった。商談件数や市場のポテンシャルを考えると、数年後には東京地区の売り上げ規模を上回る可能性もある。事業規模の拡大に向けて、AI技術に対応できるエンジニアの強化や専門知識を有するパートナー企業との連携なども検討している。

 医療機器分野にも力を入れる。当社にとってはまだ事業規模の小さい市場だが、着々とビジネスは拡大してきた。ディープラーニングを活用した医療機器の開発など、PoC(Proof of Concept)レベルの相談が増えている。このうちの数件は2019年にも成果に結びつく可能性がある。

――セキュリティ対策やクラウドとの連携サービスはどのようにされていますか。

服部氏 セキュリティ対策はこれまでも取り組んできた。詳細にコメントすることはできないが、極めてミッションクリティカルな部分に利用されるセキュリティ技術に関して、その仕組みづくりに取り組んでいるところだ。これを実現するためのシナリオもいくつか出来上がっている。

 ハードウェアを中心としたこれまでのビジネスに加え、クラウドサービスを含めたIoTソリューションのサポートにも取り組んできた。既に各事業部門で、さまざまなクラウドサービスに対応できるソリューションを提供できる体制が整った。


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提供:ADLINKジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月15日



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