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クロスポイント化に期待がかかる抵抗変化メモリ(ReRAM)福田昭のストレージ通信(151) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(12)(1/2 ページ)

今回は抵抗変化メモリ(ReRAM)を解説する。ReRAMの原理の他、記憶密度を向上させる手段について説明する。

» 2019年06月19日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

抵抗変化メモリ(ReRAM)の記憶原理

 2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前々回前回は、磁気抵抗メモリ(MRAM)の概要をご説明した。今回からは、抵抗変化メモリ(ReRAM)を解説する。

 抵抗変化メモリ(ReRAM)の記憶素子は、2枚の薄い電極層によって記憶層を挟んだ構造をしている。記憶層は単層あるいは2層、3層である。データの書き込みでは、記憶素子に電圧パルスを印加することによって、電極間の電気抵抗を変化させる。データの読み出しでは、書き込みよりも低い電圧パルスを記憶素子に印加することで、電流の違いから抵抗値を読み取る。

 記憶素子は抵抗値の違いによって「低抵抗状態(LRS)」または「高抵抗状態(HRS)」と呼ばれる、どちらかの状態を維持する。書き込み動作には、「セット動作」と呼ぶHRSからLRSへのスイッチングと、「リセット動作」と呼ぶLRSからHRSへのスイッチングがある。

 抵抗値を変化させる原理は、主に2つ。1つは、記憶層が絶縁層と合金層で構成されているもの。初期状態では高抵抗状態(HRS)にある。電圧パルスの印加によって絶縁層中を合金層の金属イオンが移動し、絶縁層内部に導通経路(「フィラメント」)を形成する。すると電極間の抵抗が下がり、低抵抗状態(LRS)となる。これがセット動作である。リセット動作では、逆極性の電圧パルスを印加する。すると金属イオンが合金層の方向に移動し、絶縁層内部のフィラメントが切れる。

 もう1つは、記憶層が酸化物の導電層と絶縁層で構成されているもの。これも初期状態は高抵抗状態(HRS)である。電圧パルスの印加によって絶縁層の酸素イオンが導電層に移動し、絶縁層内に導通経路を形成する。これで低抵抗状態(LRS)となる。

 またReRAMの記憶素子ではふつう、最初に「フォーミング」と呼ぶ前処理を必要とする。フォーミングとは高い電圧のパルスを印加することによって、記憶素子内部に導通経路を作り、LRSにする処理である。こうすると、セット動作を実行しやすくなる。

抵抗変化メモリ(ReRAM)の記憶素子構造と記憶原理。出典:MKW Venture Consulting, LLC(クリックで拡大)
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