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» 2019年11月07日 11時30分 公開

大山聡の業界スコープ(23):マーケティングオートメーションが半導体商社を危機に追い込む現実 (1/2)

Texas Instruments(以下、TI)は、長年にわたり販売代理店として提携してきた半導体商社との販売特約店契約の終了を相次いで発表している。長年、半導体商社との連携を重要視してきたはずのTIが、なぜこうした代理店リストラを実施しているのか。今回は、この辺りの事情と今後の見通しについて考えてみたい。

[大山聡(グロスバーグ),EE Times Japan]
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 2019年7月、Texas Instruments(以下、TI)は、長年にわたり販売代理店として提携してきた丸文との販売特約店契約を2020年9月末日に終了する、と発表した。TIの代理店リストラは日本国内に留まらず、2019年10月にはメガディストリビューターであるAvnetおよびWPGとの特約店契約を2020年12月末日に終了する、と発表した。長年、半導体商社との連携を重要視してきたTIはここ数年、直販への切り替えを強行しつつあったが、WPGとの提携も解消するとは予想していなかったのが筆者の本音である。今回は、この辺りの事情と今後の見通しについて考えてみたい。

TI、国内外で代理店リストラを決行

 丸文の2019年3月期(2018年度)売上高は3267億円。このうちデバイス事業の売上高は2751億円を占めている(丸文決算資料より)。Grossbergでは丸文のTI製品売上高を520億円と推定していて、この売り上げが2020年10月以降はゼロになる、というかなり大きなインパクトが丸文に襲いかかることになる。

 メガディストリビューターであるAvnetの2019年6月期売上高は195億米ドル、このうちTI製品の売上高は10%程度の約20億米ドル(Grossberg推定)を占めている。WPGについては、2019年12月期売上高が5451億台湾ドル。このうちTI製品の売上高は7〜8%相当の400億台湾ドル(Grossberg推定、1米ドル=30.45台湾ドル換算で13億米ドル)を占めていると見られる。これらの売り上げが、2021年初頭から全てTIの直販に切り替わるわけだ。

 あらためてTIのWebサイトを見てみると、今後の取り引きは、直販ないし、日本国内ならマクニカ、東京エレクトロンデバイスのいずれか、日本以外ではArrow、オンラインはTI store、Digi-Key、Mouser、この中から選択するように呼びかけている。

商社経由が70%、特異な日本市場

 まず業界の現状から説明すると、世界半導体製品の35%が半導体商社を経由してユーザーに販売されている(Grossberg推定)。一般に大口顧客向けにはメーカーが直販する。中小口顧客向けについては、直販で行おうとすると、営業サポートや納期管理などの手間が増えるため、半導体商社に代行してもらう、というスタイルが世界中に定着しているのである。ただし、その比率は地域によって微妙に異なる。例えば欧米市場では商社経由の売上規模は全体の40%程度だが、アジア市場ではそれが30%程度に下がる。機器生産のコストが安いとされるアジアには大規模な工場がそろいがちなので、大口顧客比率が高くなる傾向があるためだ。これに対して日本市場における商社経由売上比率は70%と突出して高い。半導体産業に限らず、日本の商習慣は士農工商の時代からメーカーと商社の役割分担が明確に分けられているためか、大口顧客でも商社経由という事例は決して珍しくない。

 日本の半導体ユーザー側としては、直販か商社経由か、ということより、きめ細かい要望をどこまで聞いてくれるか、取引先として信用できるか、といった点を重要視する傾向が強い。言い換えれば、商社が上場することでユーザーの信用を得て、メーカー以上に細かいサポートを行うことで存在意義を主張してきた、というのが日本における半導体商社業界の実情だろう。実際に日系半導体商社の多くは株式を上場しており、財務情報を公開して自社の評価査定を株式市場に委ねている。半導体商社の多くは多額の設備投資や先行開発投資などを行う必要がなく、非上場のままでも資金調達に苦労するような局面にはなりにくいのだが、「上場しているのだから取引先として信用できる」という価値観がこの状況を生み出している、といっても過言ではないだろう。

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