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» 2020年04月28日 11時30分 公開

経済学者の見解を知る:中国は本当にAI先進国なのか (2/3)

[Junko Yoshida,EE Times]

AI開発、3つの原動力

 Ernst氏は、中国のAI開発を推進している主な原動力を3つ挙げている。

a)公的な研究機関

 1つ目は、公的な研究機関や大学、強大な国営企業などの国家関連の施設である。これらの施設は、中国の「次世代AI開発計画(New Generation Artificial Intelligence Development Plan:AIDP)」に概説されている目標に従ってAI研究を進めているという。

 しかし、Ernst氏は報告書の中で、一つの懸念材料として、「業界全体が、例えば学術論文などの出版物や特許など、さまざまな研究成果に確実に触れられるようにするための体系的な取り組みが、ほとんどなされていない」という点を取り上げている。

 また同氏は、「われわれの研究チームが、中国のAI企業とのインタビューの中で得た回答から判断すると、公的な研究機関と知見を交換する重要性が増してきたのは、つい最近のことであるようだ」と指摘する。

 「AI関連の出版物や特許に関しては、公的研究機関と業界全体との間の連携が依然として限定的だ。AI関連の多くの知識が、大学や研究機関で活用されないままの状態にある」(Ernst氏)

b)デジタルプラットフォームのリーダー企業

 2つ目として、HuaweiやAlibaba、Tencent、Baidu、Lenovoなど中国のデジタルプラットフォーム分野のリーダー的企業を取り上げている。これらの企業は、その規模やリソースなどから、中国におけるAI研究開発の未来に向け、重要な鍵を握る存在となっているようだ。

 だが、Ernst氏はインタビューの中で、「これらの国家的リーダー企業は、最優先事項として、AIアプリケーションへの投資を掲げている。その一方で、アルゴリズムやAIチップ開発への投資は、少な過ぎて不十分だと考えているようだ」と述べる。

米国が供与しているライセンス数。ピンクの部分が中国への供与だが、2018年になって大幅に減少していることが分かる 出典:「Competing in Artificial Intelligence Chips: China’s Challenge Amid Technology War」

 興味深いことに、同氏の研究チームは、「米中ハイテク戦争がぼっ発してからというもの、公的なAI研究機関との密接な連携の重要性は高まる一方だ。中国企業は現在、貿易や技術戦争の激化により、これまで米国企業が比較優位を持つとされてきた分野において、イノベーションを実現しなければならないという状況に追い込まれている」と述べる。

c)AI関連のユニコーン企業

 3つ目がAI関連のユニコーン企業である。Ernst氏は、膨大な数のユニコーン企業を、2つのカテゴリーに分類している。1つ目は、主にニューラルネットワークをはじめとする既存の機械学習アルゴリズムを使用して、AIアプリケーション向けソフトウェアの開発を手掛けている企業。2つ目は政府から膨大な支援を受けてAIチップの開発を手掛けている企業である。

 同氏は、「われわれが中国で行ったインタビューから、1つ目に分類されるAIユニコーン企業が、中国市場で急激に増大するAIアプリケーションの需要に対し、ほとんど対応できていないという事実が明らかになった」と述べている。

 これらの企業は、アプリケーション市場で先手を打つべく、中国全土から若い工学系の新卒者をできるだけ多く採用しようとしているとErnst氏は述べる。「また、海外からの経験豊富で優秀な人材を求めて、し烈な競争を繰り広げている」(同氏)

 よく議論されるように、ほとんどの中国のAIスタートアップは、最先端技術に十分な投資をしていない。Ernst氏は、中国の証券取引所の特殊性に触れている。米国とは異なり、中国の証券取引所では、IPO(新規公開株)を行う前に少なくとも3年間は利益を出している必要がある。これは、研究開発費が多い中国のAIスタートアップにとって不利になっている。そのため、多くの企業はより簡単な方法、つまりAIアプリケーションに目を向けるようになっているという。

 中国のデジタルプラットフォームベンダーは、AIスタートアップの買収に意欲を示している。例えば、TencentによるSuiyuan Technologyへの投資、AlibabaによるC-Sky Microsystemsの買収などが挙げられる。だが、これらの買収や投資の結果は「まだ不明だ」とErnst氏は結論付けている。同氏は「麦ともみがらを分けるには、時間がかかるだろう」と記載している。

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