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» 2020年07月30日 17時00分 公開

製品分解で探るアジアの新トレンド(47):宣伝文句に踊らされるな! 分解するから分かる“中身との差” (3/3)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
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“AI”は、一体どこに……?

 図6に開封したSOP8チップの外観、顕微鏡で拡大したチップメーカー(チップコーナーに搭載されている)、チップ型名の文字情報を示す(詳細は有償のテカナリエレポートに掲載)。実際には鮮明な写真だが、一部にぼかしを入れてある。

図6:蚊よけブレスレットに搭載されているチップを開封した様子 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 蚊よけブレスレットに採用されているSOP8のチップは、メーカー情報やチップ型名情報から、4ビットのトイ製品向けマイコンであることが判明した。多くのおもちゃ(音声を発する)に採用されているチップである。他の製品での採用実績も多い。データシートなども入手可能なものだ。蚊よけブレスレットの宣伝にあるようなAI機能は搭載されていない。

 昨今のAIブームで、「AI」を名乗る製品は多いが、AIの定義が曖昧なので、中には名ばかりのAIも多数紛れ込んでいることは事実である。だが、それを差し引いてもトイ向けの4ビットマイコンをAIと名乗るのには無理があるのではないか。まず、SOP8ピンのチップでは電源、クロックなどで最低でも3端子を使ってしまうので残り5端子では、AIのような処理を行うことは難しい。しかも、そもそもこの製品には入力データ(外部センサーなど)がないので、何をAI処理しているのかも不明だ。

 図7に、宣伝文句と分解結果の違いをまとめた。再度申し上げるが、目的は、あくまでも宣伝と実体に差があることを明確にするためで、批判や揶揄では決してない。宣伝と実体の間に、解釈だけで済まない差があったので取り上げたわけである。

図7:分解で明らかになった、宣伝文句との差 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 電池容量や周波数は、使用者には分からない部分である。一般的には数字が大きいほど性能が高いので、実際よりも大きい数字(倍以上の差)を宣伝に使用した場合は、やはり「誤情報」として取り上げるべきものだろう。4ビットマイコンも人工物で何らかの処理ができるので、それをAIだと言われれば「そうですね」と言えないこともないが……水掛け論になってしまうかもしれない。

 誤(4)に関しては多くの情報があるので、ぜひ気になる方はご自身で調べてみていただきたい。

 外部と内部の不一致、宣伝と実体に差があることは古今東西、常にあることである。弊社では最先端の調査を中心に行っているが、今回報告のような「不一致」についても調査を行っている。もしも気になるものがあればぜひ問い合わせいただきたい。内容によっては無償でチップ開封などを行います。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


⇒「製品分解で探るアジアの新トレンド」連載バックナンバー

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