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» 2021年02月26日 11時30分 公開

あの医師がエンジニアに寄せた“なんちゃってコロナウイルスが人類を救う”お話世界を「数字」で回してみよう(65)番外編(1/10 ページ)

日本でもいよいよ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まりました。収束のメドが立たない現状においてワクチンが“希望の光”であることは確かですが、やはり恐怖心はそう簡単に拭い去れるものではありません。あの“轢断のシバタ先生”から、長文のメールが届いたのはそんな時でした。今回も超大作のそれには、現役医師によるワクチンの考察と分析がつづられていたのです。

[江端智一,EE Times Japan]
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日本でもいよいよ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まりました。収束のメドが立たない現状においてワクチンが“希望の光”であることは確かですが、やはり恐怖心はそう簡単に拭い去れるものではありません。あの“轢断のシバタ先生”から、長文のメールが届いたのはそんな時でした。今回も超大作のそれには、現役医師によるワクチンの考察と分析がつづられていたのです。⇒「世界を『数字』で回してみよう」連載バックナンバー一覧

ワクチン接種にモヤモヤ

 この1年以上もの間、世界で猛威を振るい続けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)*)。これまでに1億人以上の人間が感染し、250万人が亡くなっています。

*)正確には、ウイルスを”SARS-CoV-2”、感染状態を“COVID-19”と称呼すべきですが、今回は、場合によって“コロナ”も使用しています。

 この闘いの、最終兵器として持ち込まれたのが「ワクチン」です ―― もう、この切り札の後には、開発の確約の無いまだ見ぬ特効薬を待つ以外にありません。

 未来から現在を振り返ったとき「数千万人の命を左右する歴史的ターニングポイントだった」と評価される、そんな分岐点に私たちは立っています*)

*)今回は、このワクチンの名称を「COVID-19ワクチン」と称呼します。

 「COVID-19ワクチン」とは、ご存じの通り、注射器を使って体内に毒性の無いor少ないSARS-CoV-2成分を投入して、人為的にコロナに対する免疫を獲得させるものです。これは、感染防止対策(三密回避、黙食、在宅勤務、イベント中止)のような「守りの戦略」とは真逆の「攻めの戦略」と言えます。

 これは、生物が感染症にかかると、原因となる病原体(ウイルスや細菌など)に対する「免疫」(抵抗力)ができるという性質を利用するものです。免疫ができることで、その感染症に再びかかりにくくなり、かかっても症状が軽くなります。

 日本国内では、2021年02月17日から、新型コロナ対策のワクチン接種が、医療従事者を対象に始まりました ―― が、私(江端)はモヤモヤしたものを感じずにはいられませんでした

 もちろん、私たちは全員、インフルエンザ予防接種とか、その他の法定感染症などのワクチン接種を行ってきた訳です。いわば、ワクチン接種については、国民全員が経験者のはずです。

 しかし、今回のCOVID-19のワクチン接種は、(恐らくは)我が国発の「全員接種」を前提としたものです*)

*)主観ですが、我が国の1億2600万人のワクチン接種って、史上最大と言われた第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦(動員兵数200万人)に匹敵するような、大作戦だと思っています。

 そしてそのワクチンの標的となるウイルスは、わずか15分程度の会話で濃厚接触となる強烈な感染力と、ひとたび入院したら13人中1人は生還できない、通常のインフルエンザの20〜40倍という恐ろしい致死率(江端試算)を有する、最凶最悪の殺人ウイルスSARS-CoV-2です。

 もちろん、ワクチンの使用が厚生労働省で承認されるということは、その安全性について十二分の検討がされていることは分かっていますが ―― そんなウイルスの成分を体内に直接投入されるのは、めちゃくちゃ怖い ―― そう考えるのが、人情というものです。

 ところが、国内の新型コロナウイルスのワクチン接種はスムーズに進行している ―― ように見えます。

 さすがは、新型コロナ感染の最前線で闘って、この病気を知り尽している医療従事者の皆さんは、やはり、われわれとは「格」が違う、などと勝手に思っていました。

 そんな時、これまで新型コロナ関連で、私にメールでレポートを送って頂いてきた、あの「轢断のシバタ医師」から、この「COVID-19ワクチン」に関する私的なレポートが、私のメールボックスに入っていました。

 3万文字を超える、その「シバタレポート」は、 ―― 医療最前線の医療関係者の困惑、ワクチンの効果、ファイザーとアストラゼネカ、ワクチン接種シミュレーション、デマ、国の研究費、そして東京五輪に至るまで ―― 私たち一般人には絶対に知り得ない、想像し得ない、生々しい現場からのレポートと、冷徹な分析結果のオンパレードでした。

 私は、その「シバタレポート」を、メールで読み、次に印刷して読み、さらに赤ペンでキーワードを拾いつつ、考え続けていました。

 ―― このレポートを公開しないことが、人間として許されるだろうか?

と。

 今、私は、パソコンに向って、「シバタレポート」の構成変更作業を行っています ―― (EE Times Japan編集部への相談も待たずに)もう、私の中では、このレポートの公開は既定事項となっていたのです(後日、了承頂きました)。



 今回の「シバタレポートCOVID-19ワクチン編」を、これから2回に分けてお送りしたいと思います。

 皆さんが、新型コロナのワクチン接種に望む際の、判断材料となれば、シバタ先生ともども、私もうれしく思います。

 さて、今回のコラムでは、いろいろな用語が登場して混乱すると思います ―― 何しろ、執筆している私が混乱していたくらいですから。

 ですので、まず用語を整理しておこうと思います。分からなくなったら、この図に戻ってみてください。基本的には、

  • 「COVID-19を発病させるウイルス」 = 「SARS-CoV-2」 = 「テロリスト」
  • 「SARS-CoV-2を殲滅(せんめつ)する分子」 = 「抗体」 = 「対テロリスト殲滅部隊」
  • 「抗体を作るきっかけとなる弱いウイルス」 = 「ワクチン」 = 「対テロリスト殲滅部隊の育成ブートキャンプ」

という3つを覚えておいて頂ければ十分です。



 江端さん。ごぶさたしております。轢断のシバタです。ご活躍は、kobore.netで毎日拝見しております。

 さて、私が江端さんへ最初のコロナ関連のメールをお送りしてから約1年が過ぎ、早くも日本国内でワクチン接種が開始されました。

 ワクチンの話題をきっかけに、過去の記事で反省すべき点や追加で考察した方が良い点があったなぁなどと思い返しつつ、今回も医療従事者の一人として、リアルな現場や、ワクチンに関する個人的な見解をいろいろ書いてみました。

 ワイドショーレベルの話も多いですし、自分用のリンクのメモになってしまっている部分も若干ありますが、もしよろしければ、お時間のあるときにでもご一読いただけましたら幸いです。

 なお、いつも通り、本メールの公開/非公開は江端さんにご一任致しますが、今回もこれまでと同様に、江端さんのようなエンジニア的思考を有する人に読んで頂きたいです。

 具体的には、「記載された内容を、無条件に信じない」「理想論を語るだけでなく、現実をきちんと受け入れる」そして「批判に終始するのではなく、解決方法を自分で考えられる」という人です。

 それでは、よろしくお願い致します。

轢断のシバタ

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