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» 2012年11月29日 10時00分 UPDATE

プラネタリウム・クリエーター 大平貴之×日本NI代表取締役 池田亮太:革新の“芽”は個人や小集団から生まれる!! ツールが死の谷を越える道筋に

常識を打ち破るプラネタリウム製作を続けているイノベータ・大平貴之氏と、革新的なツールでイノベーションを後押しするサポーター企業・日本ナショナルインスツルメンツの池田亮太氏。NIDays 2012で、現代のモノづくりを2人が語り合った。

[PR/EE Times]
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プロフィール

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大平 貴之氏 有限会社 大平技研 代表取締役/プラネタリウム・クリエーター

1970年川崎市生まれ。大学生3年生だった1991年に、それまで専門企業でなければ製作不可能といわれていたレンズ投影式プラネタリウムを個人で完成させる。大学院を修了後、ソニーに就職。生産技術のエンジニアとして勤務する傍ら、個人でのプラネタリウム製作を続け、1998年に従来の100倍以上の数に相当する170万個の星を投影できる「MEGASTAR」を発表した。その後ソニーを退社し、2005年に有限会社 大平技研を設立、代表取締役に就任。2008年6月には投影星数が2200万個の「SUPER MEGASTAR-II」を発表。インドやエストニア、ポーランドなど、海外での活動も目覚ましい。


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池田 亮太氏 日本ナショナルインスツルメンツ株式会社 代表取締役

1970年福岡生まれの42歳。米ワシントン大学 電気工学科を卒業後、1993年に米National Instruments Inc.に入社。1994年に日本ナショナルインスツルメンツに異動。1999年に事業本部長、2000年に代表取締役に就任した。野球と鉄道をこよなく愛する。





 「人間は、“可能”は証明できるが“不可能”は証明できない」――。NIDays 2012で基調講演を務めた気鋭のプラネタリウム・クリエーター、大平貴之氏の信条だ。実際に同氏は、プラネタリウムの世界で旧来の常識を覆し、かつての不可能を可能にしてきた実績を持つ。

 例えば、生産技術のエンジニアとしてソニーに務める傍ら、個人で開発した「MEGASTAR」。1998年、ロンドンで開催された国際プラネタリウム協会(IPS)の大会で発表し、世界を驚かせた。当時、プラネタリウムの業界では、投影する星の投影数は6000〜9000個で十分と考えられていた。大平氏のマシンはそれより2桁以上も多かったのである。

 こんなエピソードがある。発表前夜のレセプションで、他国の参加者から「あなたのプラネタリウムの星の投影数は?」と聞かれ、「one million(百万個)」と答えた大平氏。「尋ねた相手は、私が英語を話せないので、数の単位を間違っていると思ったようです」(同氏)。当時の英語力は、「TOEICのスコアが275点。回答マークシートをでたらめに塗りつぶしたら、だいたいこれくらいになるらしい」(同氏)というほど低かった。「翌日の発表で実際に投影した星空を見て、本当の話だったと彼は初めて分かったみたいです」(同氏)。

図1 NIDays 2012で「星空を作るという仕事〜MEGASTAR開発ストーリー〜」と題して講演した大平 貴之氏(左)。右の写真は、講演会場に据え付けられた同氏のプラネタリウム「MEGASTAR-II」である。

 ただ、エンジニアがアイデアを形にするまでの挑戦は、さまざまな困難がつきまとうものだ。そのアイデアが革新的であれば、実現のハードルも高い。例えば大平氏のMEGASTARでは、プラネタリウムが映し出す“星空の設計図”ともいえる恒星原板を製作するため、旧来とは桁違いの精度と密度の穴あけ加工が必要だった。しかし恒星原板は極めてニッチな部品。専用の加工機は世の中に存在しない。そこで大平氏は、半導体製造装置の技術を流用し、独自のマイクロプロッタを作り上げた。基幹部品であるAr(アルゴン)レーザーには、「ボーナスを2回分つぎ込みました」(同氏)と明かす。

 NIDays 2012を主催した日本ナショナルインスツルメンツで代表取締役を務める池田亮太氏は、大平氏のこうしたエピソードを受けて、「ぜひ次のバージョンのマイクロプロッタでは、大平さんに当社のソリューションを活用いただきたいと思います。さらなる自動化など、貢献できることがあるはずです」と話す。池田氏は、「現在のエンジニアは、技術革新を短期間で実現したくても、ツールに邪魔されすぎているという現状があります」と指摘。この現状を変え、エンジニアを支援することが自社の使命だという。

 世の中の常識を変えるイノベータの大平氏と、革新的なツールでイノベーションを後押しするサポーター企業の池田氏。NIDays 2012で、2人が現代のモノづくりを語り合った。



図2 有限会社 大平技研の代表取締役でプラネタリウム・クリエーターの大平 貴之氏(向かって左)と日本ナショナルインスツルメンツ株式会社 代表取締役の池田 亮太氏(右)。大平氏は基調講演の後、この対談に臨んだ。

「大組織から個人へ」進むパラダイムシフト、うまい役割分担が重要に

池田氏 それまで世の中に無かったもの、人々が想像すらしていなかったようなものを作ってしまう、しかも独力でという大平さんの成果は、本当にすごいことだと思います。

 ナショナルインスツルメンツは、個人から大企業の研究開発部門まで、幅広いユーザー層をサポートしていきたいと考えており、それぞれ事例もたくさんあります。そうした中でいま特に思いを強くしているのは、個人でも大企業でも、革新のアイデアを持っているエンジニアの皆さん一人ひとりが、もっと楽にそれを実現できるように支援したい、ということなんです。ツールが革新の実現を妨げる壁になってはいけない。

 当社(米国のナショナルインスツルメンツ)自体がもともと、現CEO(最高経営責任者)を含むわずか3名が、自分たちが欲しいツールが世の中に存在していなかったので会社から作ってしまおうと立ち上げた企業です。大平さんのモノづくりの精神にも、すごく似ているように感じました。

大平氏 私はソニーに何年か在籍しましたから、巨大企業と個人の事業の両方を経験しています。MEGASTARはソニーに勤める傍ら、個人として自宅で作っていましたが、実はソニーで事業化しようという話もありました。結果的にはうまく進みませんでしたが、それは必ずしも「大企業より個人の方が強みがある」ということではないと思うんです。個人や小規模な集団と、巨大な組織、それぞれ役割分担があるのではないでしょうか。

 現代はITやWebの進展によって、かつては個人がとても利用できなかったような技術や仕組みに簡単かつ低コストでアクセスできるようになっています。それによって、モノづくりを含むさまざまな領域で、「大きな組織から個人へ」というパラダイムシフトは確かに起きていると思います。とっぴなものを新しく作って、大企業に見えているような市場や、そうした市場のニーズとはかけ離れたところから、新しい“芽”を作る。これは、個人や小集団の方がやりやすいかもしれません。

大平 貴之氏 「大きな組織から個人へ、というパラダイムシフトは確かに起きている」と話す大平氏。

 一方で、世の中の産業がますます高度化・複雑化して、より巨大な組織でなければ対応できないような分野も出てきており、二極化が進んでいるのではないでしょうか。実際に私のプラネタリウムでも、MEGASTARの第1世代機、第2世代機くらいまでは私の独力でなんとかなりましたが、第3世代機になるとたちゆかなくなってきました。大平技研という企業を立ち上げて、小さいながらもチームワークを取り込んだからこそ、生み出せたのでしょう。それに、個人や小集団ではどうがんばっても大きな組織に太刀打ちできない、大型航空機や原子力発電所、宇宙開発などの分野もあります。

池田氏 日本ではいわゆる“死の谷”と表現される課題がありますね。研究や構想の段階にある“芽”を、商用化して社会に役立つ形までなかなか持っていけないという難しさです。

大平氏 そうですね。私自身の仕事を振り返ってみると、例えば恒星原板を加工するための装置を個人で自作したわけですが、もし組織だったら……と考えると難しかったでしょう。組織の中で取り組むには、利益などのより明確な動機付けが必要ですからね。

 もちろん技術的には、装置の仕様を達成することは可能だと思います。半導体業界の製造技術に比べれば、当時私が目指した恒星原板の加工の難易度はそれほど高くありませんでした。でも組織として着手するには、最終製品の売り上げ予測や事業計画が必要になります。世の中に存在していなかったような製品で、その市場は当然ゼロの状況ですから、組織ならゴーサインを出すことは難しかったのでしょうね。

 どうも日本では、個人と組織が対立の構図になってしまっている気がします。組織は、個人の発明を「あんなもの取るに足らない」と決めつけて見てしまう傾向がある。個人の方もなんとなく「組織には負けないぞ、独力でやってやる」と反発してしまう。こうした構図は、産業としてすごくもったいない。

さまざまなギャップを“つなぐ”ツールが鍵を握る

池田氏 個人対組織もそうですが、組織の中にも対立軸は存在しますね。当社は企業の研究部門ともやりとりがありますが、縦割りが激しいなと感じることも少なくありません。

 そこでぜひエンジニアの皆さんには、死の谷を越えるための1つのアプローチとして、当社が提供する“モノづくりのプラットフォーム”を活用していただきたいと考えています。

 これは、計測/制御用のハードウェアとソフトウェア、さらにそれらの全てに対応したシステム開発環境「NI LabVIEW」とをまとめたプラットフォームです。柔軟性と汎用性が極めて高く、広範囲なアプリケーション領域に適用でき、大規模なシステムに統合したり、機器に組み込んだりすることが可能です。これを活用していただければ、エンジニアの皆さんは自らの貴重な時間やリソースをプラットフォームの構築に割く必要はありません。その上層に位置する、革新的なアイデアを早期に形にすることに注力していただけるのです。

大平氏 そういう問題意識をお持ちだとすると、さきほど池田さんがおっしゃっていた「個人から企業まで、モノづくりをツールでサポートする」というのは、個人・小集団と大企業という役割が異なる二者を橋渡ししたり、組織の中の壁をまたいだりといった具合に、“つなぐ”ことがミッションになりそうですね。

 そういえば1つ要望したいことがあります。例えばCADツール。昔、個人でやっていたころはフリーウェアの2次元CADで図面を書いていたんですけど、今は3次元CADを使っているので、昔2次元CADで書いた図面を自動的に3次元にしてくれるツールがあったらすごく助かるなと思います。

 もちろんツールによって価格も違いますから、機能に差が出るのは当然ですが、そこで“つなぐ”役割を担っていただければ、企業が個人や研究機関の成果物を活用しやすくなると思います。死の谷を越える道筋の1つになるのではないでしょうか。

池田氏 池田氏は、「エンジニアの皆さんは、自らの貴重な時間やリソースをプラットフォームの構築に割かずに、革新的なアイデアを早期に形にすることに注力してほしい」と語る。

池田氏 そうですね、まさにそれは当社の志すところです。事例もたくさんありますが、2つだけ紹介させてください。個人の優れたアイデアを当社のプラットフォームを活用して短期間で形にした事例です。

 1つは、「OCT(Optical Coherence Tomography、光学的干渉断層撮像)」と呼ばれる技術に関する事例です。OCTは、生体組織に光を照射し、その反射光の干渉を計測して演算処理することで、生体の内部構造を非侵襲で(外科的に傷付けることなく)撮像する技術です。実用化が進めば、初期のごく小さながんの病巣も見つけ出せるようになると期待されています。

 北里大学で大学院医療系研究科の教授を務める大林康二氏は、わずか数人のチームで、OCTによる生体の3次元立体断層画像を瞬時に表示できる装置を世界で初めて開発しました。そこで活用いただいたのが、ナショナルインスツルメンツが提供するFPGA内蔵モジュール式計測ハードウェア「NI FlexRIO」です。3次元化に当たって、以前はPCを使ってソフトウェアで実行していた処理の一部をFPGAに移すことで処理性能を大幅に高めました。しかも、当社のグラフィカル開発環境を使うことで、ハードウェア記述言語であるVHDLの専門知識がなくても、FPGAに実装するハードウェアを開発できたのです(詳細記事はこちら)。

 もう1つは、京都大学原子炉実験所の粒子線基礎物性研究部門で助教を務める谷垣実氏の取り組みです。谷垣氏は、2011年3月に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故を受けて、放射線量の自動計測システム「KURAMA-I」をわずか1週間で開発しました。同氏が「自分にも何かできないか」という思いから個人でスタートしたプロジェクトです。NIが提供するハードウェアを採用し、ソフトウェアはLabVIEWで開発しました。さらに同氏のプロジェクトはその後、機能を拡張しつつ路線バスや配達用バイクに搭載できるようなサイズに小型化した「KURAMA-II」を2カ月間という短い期間で完成させています(詳細記事はこちら)。

KURAMA-II ナショナルインスツルメンツが本社を構える米国テキサス州オースチンで2012年8月に開催した「NIWeek 2012」で、京都大学原子炉実験所の谷垣実助教が震災復興の取り組みを紹介した。上段の写真中、中央に立つのが谷垣実助教である。谷垣氏の説明を受けて、聴衆からは大きな拍手が沸き起こった。下段の図は、KURAMA-IIのシステム構成を示している。(撮影:EE Times Japan)

ツールには多くの技術者の知的経験が凝縮されている

大平氏 紹介いただいた事例のように、個人や小集団で大きな成果を形にできるかどうかは、ツールが果たす役割がとても大きいと感じています。

 当社はいま社員数が10人ちょっとで、基本方針は少数精鋭です。経営者としては、なるべく1人当たりの生産性を高めたいという考えで、道具にかけるお金はあまり惜しまないようにしています。例えばPCにしても、1台の値段なんてどんなに高い機種でも人件費に比べたらたかがしれています。それなら性能の高いPCを使って、1.5倍の成果を上げてもらった方がいい。

 ツールソフトウェアも同じです。自社で短期間に蓄積することが不可能な、多くの技術者の知的経験がツールソフトウェアに凝縮されているわけですから、ユーザーである我々の生産性を、それはもう桁違いに変える力があります。

 私自身、実は新しいツールを覚えるのが非常に苦手で……。良くも悪くも、ツールを自作することに慣れ過ぎてしまっていて、既製のツールになじむのがあまり得意ではありません。CADツールは、学生のときに覚えた2次元CADを、「いまだにそんなの使っているの!?」と言われながらもずっと使い続けていました。恥ずかしながら、1年くらい前にようやく3次元CADを覚えて、業務の効率が飛躍的に高まりました。

池田氏 現代のモノづくりでは、ツールの力は確かに大きいですね。それに加えて当社は、ユーザーであり個々の領域のエキスパートであるエンジニアの皆さんが、ツールそのものを使いこなすことに時間や手間を費やさずに済むように、ツールの存在をなるべく意識せずに済むように、ツール自体を“透明化”していきたいと考えています。大平さんの今後の挑戦で、難題がありましたら、ぜひ当社もそれに応えられるようなツールを提供したいと思います。

大平氏 素敵なビジョンだと思います。当社もこれまで家内制手工業のような形でやってきたことを、組織化のプロセスの中でもっと改善し、合理化していきたいと考えているのですが、まだ自己流のところが多いと感じています。もっと外部とつながり合えるような方法論を取り込む上で、ナショナルインスツルメンツの力をお借りするという局面が多々ありそうな気がしています。

池田氏 分かりました。ぜひお任せください。大平さんの今後の挑戦が楽しみです。


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月31日

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