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» 2017年08月10日 10時30分 UPDATE

福田昭のストレージ通信(68) 強誘電体メモリの再発見(12):FeRAMの長期信頼性に関する特徴 (1/2)

強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の長期信頼性を決めるのは、強誘電体キャパシターの分極特性だ。今回は、強誘電体キャパシターを劣化させる主な現象として「疲労(ファティーグ:fatigue)」と「インプリント(imprint)」について解説する。

[福田昭,EE Times Japan]

FeRAMはデータの読み出し回数にも制限がある

 前回は、強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)のメモリセルの構造をご報告した。今回は、FeRAMの長期信頼性に関する特徴を簡単に解説しよう。

 FeRAMに限らず、不揮発性メモリの長期信頼性を左右する代表的な性能は2つある。1つは、書き込んだデータをどのくらいの期間、保存しておけるかを示す指標だ。「データ保持期間(data retention)」と呼ばれる。もう1つは、データを書き込める回数を示す指標である。「書き換え可能回数(endurance)」、あるいは「書き換え可能サイクル数」と呼ばれる。

 FeRAMの長期信頼性に関する最大の特徴は、データの書き込みだけでなく、データの読み出しでも劣化が生じることだ。つまり書き込み回数だけでなく、読み出し回数にも、制限がある。このことは、強誘電体材料を使ったメモリ全体に当てはまることなので、留意しておくべきだろう。

 FeRAMの長期信頼性を決めるのは、強誘電体キャパシターの分極特性である。これを視覚化したのがヒステリシス曲線であり、製造した直後の強誘電体キャパシターは、きれいなヒステリシス曲線を示す。きれいなヒステリシス曲線は、平行四辺形に近いループを描く。

分極反転の繰り返しが残留分極を減少させる「ファティーグ」

 強誘電体キャパシターの劣化で最も良く知られているのは「疲労(ファティーグ:fatigue)」と呼ばれる現象である。分極反転の繰り返しによってヒステリシス曲線が小さくなっていく。具体的には、残留分極の大きさ(電荷量)が低下する。残留分極が低下すると、書き込める信号と読み出せる信号がともに小さくなり、書き込み不良あるいは読み出し不良へと至る。

 既に本シリーズで説明したように、FeRAMではデータの読み出し動作でも強誘電体キャパシターの分極が反転することがある。2T2C方式では、必ずどちらかのキャパシターで分極反転が起こる。データの読み出しによって分極反転が起こることは、データを読み出す度に、強誘電体キャパシターがほんのわずかだが疲労することを意味する。

 FeRAMの製品仕様では「エンデュランス(endurance)」に関し、データの書き込み可能回数だけなく、データの読み出し可能回数にも、保証値をデータシートに記載しているのが普通である。

強誘電体キャパシターのヒステリシス曲線。左のグラフは初期の曲線。平行四辺形に近い、きれいな曲線を描く。残留分極(Pr)のプロットは黒丸が初期値で、分極反転の繰り返しによって青丸から赤丸へと小さくなっていく。右のグラフは、分極反転の繰り返しによって「疲労(fatigue)」が起こる様子。ヒステリシス曲線が黒い線から青い線、赤い線へと小さくなっていく。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
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