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わずか0.1mm単位の攻防が生んだiPhone Xこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(20)(1/3 ページ)

Appleが、「iPhone」誕生10周年を記念して発売した「iPhone X」。分解すると、半導体技術のすさまじい進化と、わずか0.1mmオーダーで設計の“せめぎ合い”があったことが伺える。まさに、モバイル機器がけん引した“半導体の10年の進化”を体現するようなスマートフォンだったのだ――。

» 2017年11月24日 11時30分 公開

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“伝統的なApple配置”

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 2017年11月3日、Appleから「iPhone」誕生10周年モデルとして「iPhone X」が発売された。発表は同年9月12日だったので、販売までの期間がおおよそ2カ月間あったことになる。

 実はこの間、多くの臆測が飛び交った。「iPhone Xで初めて使用する有機ELディスプレイの歩留まりが悪く、11月3日はほとんど入手できない」「顔認証に使う3D(3次元)センサーの性能に問題がある」……などの情報があちこちから聞かれた。実際、筆者が代表を務めるテカナリエにもメディア関係者、技術系の会社から上記のような情報が入ってきた。

 しかし、11月3日はそうした問題を加味して設定された日程だったのだろう。予定通りiPhone Xは販売された。

 テカナリエでは11月3日、午前8時に予定通りiPhone Xを入手し、当日午前には分解作業を終了した。既に50ページ超のiPhone X分解レポートを作成し、リリースを行っている(テカナリエレポート148号)。

 図1はiPhone Xの分解の様子の一部である。「iPhone 8」と共通形状の特殊ネジを2つ外し、ディスプレイパネルを取り外すと内部が現れる。iPhone Xでは、従来とは異なり2つの電池が配置されている。スマートフォンを年間数十台分解しているが2つ以上の電池を有したものはiPhone Xが初めてである(タブレットやPCでは事例は多い)。いよいよスマートフォンにも異形複数電池の時代が来たわけだ。

図1:「iPhone X」の分解の様子(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 電池の面積は4047mm2だ。iPhone Xの大きさは70.9mm×143.6mm=1万0181mm2なので、おおよそ40%が電池という構成になる。電池以外には、「TAPTICエンジン」(振動や触角によるフィードバックを実現する)、ステレオスピーカー、フロントカメラ、リアカメラ、情報および通信基板が搭載されている。

 こうした構造はiPhone 8と同じである。Appleは「iPhone 4」で内部の基本配置を大きく変えた。その後の全機種ともに電池と基板の位置関係は変わっていない。図1の真ん中の図のように、左側に電池、右に基板という構造だ。ちなみにSamsung Electronicsの「Galaxy」は全シリーズ、逆配置になっている。右に電池、左に基板。中国Huaweiは上に基板、下に電池である。

 その意味では“伝統的なApple配置”ともいえる電池と基板の位置関係がiPhone Xでもそのまま活用されている。

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