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» 2018年01月22日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(46) 働き方改革(5):あなたは“上司”というだけで「パワハラ製造装置」になり得る (7/12)

[江端智一,EE Times Japan]

“個人”で闘うしかないセクハラ

 しかし、ここまでの検討は、もっぱら「パワハラ」に関することであり、「セクハラ」とは本質的に違うように思えます。

 「パワハラ」は不適切な業務命令によって発生します。一方、「セクハラ」も同様に「上司は、業務以外についても逸脱した行為(わいせつ行為など)が、ある程度認容される」という錯覚から生じていると考えて間違いありません。

 「セクハラ」が『社内コミュニケーション』だの、『恋愛の自由』などという、勝手な思い込みから起因していることは明らかなのですが、「セクハラ」は、どこからどう検討しても、明らかな犯罪行為です(が、今回はこの手の話は割愛します。別段、私が書かなくても(以下省略))。

 そこで、今回、私は、この「セクハラ」(に加えて「マタニティハラスメント(マタハラ)」と「パワハラ」が、法律上どのように規定されていて、どのように運用されているのかを調べてみました。

 民法には「パワハラ」に相当する文言はありませんし、「セクハラ」と「マタハラ」を定義しているといわれている(本当に多くのメディアがそのように書いている)、男女雇用機会均等法の第11条、第11条の2にも目を通しましたが、そんな記載は一切ありませんでした

 各条文の第一項を抜粋したものを以下に示します。

 一体、どうやって、こんな法律で「まだ結婚しないの?」とか「産休って迷惑だよな」というセクハラ発言を抑止し、発言の当事者を罰することができるのか、私にはさっぱり分かりませんでした。

 さらに、この法律の罰則規定(第33条)を見て、私はがく然としました(本当)。

 男女雇用均等法の罰則対象は、法人格である「会社」だけです。この法律では、「セクハラ」「マタハラ」「パワハラ」の当事者(個人)を罰することはできないのです。

 となれば、結局のところ、ハラスメントの被害者は、ハラスメントの加害者に対して、現行法を使った通常の手段を用いて、「個人(部下)」対「個人(上司)」あるいは、「個人」対「法人(会社)」という、当事者同士で闘うしかありません ―― つまり、ハラスメントに特化した救済機関や特別法などは存在しない、ということです。

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