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» 2018年11月12日 11時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(6) ドライエッチング技術のイノベーション史(6):アトミックレイヤーエッチングとドライエッチング技術の未来展望 (1/5)

ドライエッチング技術のイノベーション史をたどるシリーズの最終回は、アトミックレイヤーエッチング技術に焦点を当てる。さらに、今後の展望についても考察する。

[湯之上隆(微細加工研究所), 有門経敏(Tech Trend Analysis),EE Times Japan]

14Åの微細加工も可能か

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 1973年に日電バリアンの松崎と細川が発明し、IBMがRIEと名付けて普及させ、日米が総力を結集してチャージング・ダメージの問題を解決したドライエッチング技術は、45年の歳月を経て、今年2018年に、マルチ・パターニングによる10〜7nmの微細パターン形成や、アスペクト比(AR比)70を超える深孔(HARC)加工を実現させている。

 ベルギーのコンソーシアムimecは2017年に、2025年以降には「半導体の微細化が14Å(オングストローム)になる」というロードマップを発表した(図1、EE Times Japan 2017年5月24日『IMECの半導体ロードマップ展望』)。

図1:ベルギーのコンソーシアムimecのロードマップ(クリックで拡大) 出典:EE Times Japan 2017年5月24日『IMECの半導体ロードマップ展望』

 半導体は、1世代ごとに70%ずつ微細化していく。2nmの70%は1.4nmで、imecは単位を変えて14Åと書いたにすぎない。しかし、Åは原子の世界の単位であるため、imecのロードマップは半導体業界に衝撃を与えた。

 しかし、今年ブレークしそうな波長13.5nmのEUV露光装置とマルチ・パターニングを使えば、14Åの微細加工が実現してしまうかもしれない。くしくもドライエッチング業界では、原子を一層ずつエッチングする“アトミックレイヤーエッチング(Atomic Layer Etching、ALE)の研究開発が大ブームとなっているからだ。

 本稿では、まず、ALEの歴史を概観する。次に、ALEの原理を説明し、実際に半導体デバイスに適用された事例を紹介する。その上で、現在のドライエッチング技術の課題を論じ、その未来を展望する。

ALEの発明

 1975年11月25日にヘルシンキのTuomo SuntolaとJorma Autsonが、“Method for Producing Compound Thin Films”という特許を米国出願し、1977年11月15日に成立した(US 4,058,430)。

 これは、原子を一層ずつエピタキシャル成長させる発明で、後にアトミックレイヤーデポジション(ALD)に発展することになった。「原子を一層ずつ取り扱う」という意味において、Suntolaの発明は画期的であったといえる。

 その10年後の1987年8月31日に、米海軍のMax. N Yorderが、 “Atomic Layer Etching”の米国特許を出願し、1988年7月12日に成立した(US 4,756,794)。これが、世界初のALEの発明である。その特許明細書の冒頭に、以下の記述がある。

“An apparatus, and method therefore, for removing a single atomic layer from the surface of a crystalline diamond.”

 Yoderは、図2のFig.3の装置を使って、ラジカルとして窒化酸化物をダイヤモンドの表面に吸着させ、そこに希ガスと塩素の混合プラズマから発生するイオンをパルスとして照射した。そして、図2のFig.4に示したように、ラジカル吸着(0.5秒)→パージ(0.5秒)→イオン照射(0.5秒)→パージ(0.5秒)を1サイクルとして、ダイヤモンドの原子を一層ずつエッチングする手法を発明した。

図2:M.N.YoderのALEに関する米国特許(クリックで拡大)

 この手法は、現在10〜7nmの最先端半導体の微細加工に使われているALEと同一である。従って、Yoderは、対象こそダイヤモンドという半導体デバイスにはあまりなじみのない材料ではあったが、ALEの手法を世の中に初めて提供したことになる。

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