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» 2012年06月11日 08時00分 公開

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(3):エンジニアが英語を放棄できない「重大で深刻な事情」 (4/6)

[江端智一,EE Times Japan]

「生産拠点」+「消費拠点」という東・東南アジア

 今回の後半は、私たちは「『どこ』に行かされるのか。『なぜ』、『そこ』なのか」という観点から、英語を放棄することができない理由を提示したいと思います。海外出張というと、私は米国、欧州のイメージが強かったのですが、調べてみると全く違いました。

 結論から申し上げます。最も多い海外出張先は「アジア」です。それも「東・東南アジア」。この第一の理由は、日本企業の海外現地法人2万3800社のうち、その60%以上がアジアにあることです。また、短期商用・業務目的でも同じ傾向になっております(図4)。

図 図4 短期商用・業務目的渡航先

 この数値だけ見ても、アジアが日本企業の巨大な製造拠点であることは明らかです。考えてみれば、東・東南アジアは、労働力が安くて、日本から近い。原材料も地元で調達できる場合もあり、輸送費も安くて済みます。

 そして第二の理由は、アジアはそれ自体が未曾有の巨大な市場だからです。国内総生産(GDP)は、今後加速して成長していくことは間違いなく(図5)、そして、日本では誰でも持っているような製品が、まだ十分に行き渡っていません。

図 図5 各国の国内総生産

 これはつまり、日本の製品を新規の技術開発なしにそのまま投入しても、いきなり売れる(可能性がある)ということです。現在、東・東南アジア各国のGDPは小さいです(中国、日本を除く)が、人口を見ると、中国が12.5億人、インドが12億人、アジア全体では35億人(日本の1.2億人を含む)。簡単な計算ですよね。1人に個別の訪問セールスするより、34人のサークル教室に出向いた方が、効率が良いに決っています図6)。

 つまり、東・東南アジアは「生産拠点」+「消費拠点」という、1つだけでも十分においしい要素を、なんと2つ同時に持っていて、その規模が半端ではない。そんなことを考えながら世界地図を眺めていると、東・東南アジアの地域にスコーンと大きな穴が開いたブラックホールが見えてきました。

図 図6 アジアの人口

現地の言語でビジネス!?

 しかし、アジアで英語が使われている国は、インド、シンガポール、フィリピンぐらいで、多くの国の公用語は英語ではありません。本来は、その国で事業を展開するのであれば、その国の言葉を使うのが原則であるはずです。 

 「日本でビジネスをする以上、日本語を使え」と言う方は簡単で、筋も通っていますが、「スリランカでビジネスをする以上、タミル語を使え」と言われたら正直困る。いや絶対に困る。「NHKラジオ講座 タミル語」が開講される可能性はないと思いますし、相互のコスト(時間、金、新しい語学勉強)を最小にして、ビジネスを行おうと考えれば、極めて残念ではありますが、どう考えたって「英語」が一番安い

 「お互い、使いにくいし、面倒だけどさ、まあ『英語』でやろうや」と言われたら、「はあ、仕方ないですね」と言わざるを得ないでしょう。「何がなんでも日本語でやりたい」と主張しても良いのですが、それではビジネスは成立しない。「いや、何がなんでもタミル語でやりたい」と言われたら、私たちが取る立場も同じはずです。

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