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» 2014年08月29日 12時30分 公開

“電力大余剰時代”は来るのか(前編) 〜人口予測を基に考える〜世界を「数字」で回してみよう(4)(4/4 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]
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「電力が足りる/足りない」の論争は終えんを迎える

 このように、私の仮説とシミュレーション結果からは、「電力が足りる/足りない」の論争は終えんを迎え、「電力が余る」時代が到来するという結論が出てきてしまいました。

 冒頭での私の問いかけ「電力を現在の『3倍』使ってください」は、この2070年の電力使用量の計算結果を見て青冷めた私が、「電力使用量を、今のまま維持する未来シナリオがあるか」というテーゼの検討に、同僚エンジニアたちを巻き込んだものです。

 彼らからは、「『リニア新幹線』が使う電力はどうか(電卓を叩いてみた結果、瞬時電力は大きいけれど、電力使用量としては、1〜数%程度の増加にすぎない)」とか、「家庭向けの水資源循環装置にかかる電力はどうか(資料がないので試算を断念)」などを案出してもらいましたが、どうしても「3倍」には届かないようです。

 しかし、このような「お先真っ暗」な未来予想を公表するのは、ただの週末研究員(休日に自宅で、会社業務と無関係な、好きなテーマの研究をする人)である私でも、随分勇気がいるものです。ですから、どこか信用できる組織や機関による裏付けが欲しいと思いました。

 いろいろ探し回り、経済産業省の「2030年までの我が国のエネルギー需要の見通し」というリポートを見つけました。

 P.2にある総論「エネルギー需要の伸びは、2022年度をピークに減少傾向へと転ずる」は、私のシミュレーション結果とほぼドンピシャ(1年違い)でしたので、先ずは安堵(あんど)のため息をつきました。

 また、私のシミュレーション結果は、P.7の「リファレンス」と「低成長」モデルを混ぜ合わせたものと、概ね同じ結果といえそうです。

 ただ、このリポート、2030年以降の未来については何一つ書かれていないのです。

 経済産業省の検討チームは、2030年以降のシミュレーション結果も出していると思うのですが、これ以上は言及致しません。


 さて、前半はここまでとして一度まとめてみます。

(1)日本の人口と使用電力には相関があり、人口の増減の影響が、16年間後の電力使用量に現われるという傾向が観測された
(2)現在の少子化傾向が改善されることなく続き、上記(1)の傾向が「真」であるとした場合、2023年から電力使用量は減少に転じ得る
(3)遅くとも2030年には「電力の足りる/足りない」の議論は終焉し、電力が余る時代に突入し得る


 上記の3つの話が、江端の妄想ではなく、真実だったとしたら、そして、―― そんなことは、内閣府や省庁の官僚の方や、経済界のエライ人達は当然気がついている ―― としたら、今、大問題となっている「原子力発電」の位置付けって一体何なの? と思ってしまいますよね。

 後編では、これを数字で回してみたいと思います。

謝辞

今回のシミュレーション結果の検証作業では、貸して頂いている、大量データ処理ソフトウェア「AktblitzIII」を使わせて頂きました。この場を借りて、お礼申し上げます。


※本記事へのコメントは、江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。


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Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。



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