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» 2019年02月26日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15):外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」 (5/10)

[江端智一,EE Times Japan]

日本政府の本音が見えてくる

 今回も、「働き方改革実行計画」をベースとして、私なりに解釈した内容を説明します。

 さて、「働き方改革実行計画」の中で「外国人」は13カ所登場します。そのほとんど(11カ所)は、「専門的・技術的分野の外国人材」「高度外国人材」に関する記述です。

 その11カ所の内容は、「優秀な人材を他国に取られる前に、早々に日本に引き抜きやすくする仕組みを作るぞ」ということであり、要するに日本国によるヘッドハンティングという理解で良いと思います。

 その一方で、残りの2カ所には、日本国政府(というか私たち自身)の生々しい本音の記述があります。

' 他方、専門的・技術的分野とは評価されない分野の外国人材の受入れについては、ニーズの把握や経済的効果の検証だけでなく、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ検討すべき問題である。 '

' 経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受け入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める。このため、移民政策と誤解されないような仕組みや国民的なコンセンサス形成の在り方などを含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていく。 '

 つまり、「優秀な人材でなくても、日本に連れてきて存分に働いてもらい、そして、その後は、とっととお帰り頂く(日本から出ていってもらう)仕組みを作るぞ」と言っている訳です。

 これって、私が前回解説した、ブラック企業の戦略「『新卒社員を、数年で使い捨てる、もしくは使いつぶす部品として取り扱う』ことを、経営戦略の根幹としている企業」と同じことを、国策として外国人労働者に対して実施する、と言っているのです。

 名付けて、―― ブラック国家戦略。

 ちなみに、私、当初は、政府(内閣府、法務省、外務省等)の資料をムカムカしながら読んでいたのですが ―― よくよく考えれば、この国策、我が国の国益にも、私個人としての私益にも叶っていると、思い至りました

 ですので、現時点の私は、この国家戦略を批判していません。ただ、呼称としては、これ(ブラック国家戦略)は、ピッタリくると思っています。

 そして、この国策は、実際に、昨年(2018年)12月に成立した「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(以後、改正入管法という)と、これを受けて閣議決定された「特定技能の在留資格に係わる運用に関する基本方針」に基づいて、現実に稼働し始めています。

 では、実に巧妙にして精緻、芸術的とも言える ―― 『日本人の、日本人による、日本人の為の、外国人労働者搾取戦略』 ―― を、可能な限り、丁寧にご紹介したいと思います。

 まず改正入管法の目的ですが、一言で言えば、外国人労働者の確保です。具体的には、「特定技能1号」「特定技能2号」というカテゴリーを増やすことにあります。

 この「1号」「2号」の募集要綱の概要は以下の通りです。

 まず、(1)の「背景」ですが、「国際的貢献」とか「技術協力」などという文言は、一言も見当りません。ひたすら我が国の絶望的な人材不足を解消するという、その一択のみで言い切られていて、実にすがすがしいです。

 暴力団のように、仁義、義理人情などというありもしない概念で違法行為(暴力)を正当化するような卑劣なことをするでもなく、体罰教師のように、たかだか「チームを強くするため」程度のことに「体罰が有効だ」と臆面もなく語るでもなく(関連記事:「忖度する人工知能 〜権力にすり寄る計算高い“政治家” 」)、なんという潔さなのか、と感動すら覚えました。

 さらに(2)の「狙い」では、技術研修等の技術教育を行う意思がないことを明確にしており、さらに(3)(4)については、職業の内容も、働く場所もお上(政府)が決定し、「職業選択の自由」が1ミリもないことも飾らずに述べている点にも好感が持てます。

 そして、(5)については、2段階の階級はあるものの、「帰国が絶対条件」としており、日本国への移民の可能性をバッサリと切り捨てております。面倒な宗教、思想、主義主張の対立に一切関わりたくない、という、村八分気質の日本人の総意が反映されていると言えます。

 なお、「1号」「2号」の外国人労働者に対しては、相当に手厚い保護が、膨大に ―― それはもう、うんざりするほど(資料の7割程度を占めるほど) ―― 記載されていますが、これは逆に「日本国の(過保護な)労働法の適用はしないよ」という意思の表れであると、私は読みとりました。

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