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» 2019年02月26日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15):外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」 (6/10)

[江端智一,EE Times Japan]

超タカビーな募集要項

 ぶっちゃけて言えば、非常にタカビーな視点の募集要項です。しかし、それでも、正直に記載している点は高評価です。日本国内のブラック企業の経営者は、この日本政府に習って、ここまで正直に記載すべきだと思います。

 外国人労働者の条件の良さ(?)をピラミッド型で記載してみると、こんな感じです。

 基本は、家族(配偶者と子)の取り扱いが大きく違っていることです。帰化した人は日本人ですので、日本人全く同じ権利が発生します。定住者は、家族も日本に永住できる権利を得ることができます(できない場合もあります)

 特定技能1号、2号の位置付けは ―― もうお分かりでしょうが ―― 「出稼ぎ」です。2号は家族を連れてきてもいいですが、1号にはそれができません。

 家族を引き連れてきた場合、帰国後の居所が保証されませんし、5年間も外国に住めば、帰国したくなる家族が出てくるのは当然です*)

*)私も2年間の米国滞在の経験がありますが、嫁さんの反対がなければ、米国の永住権を求めて動き出していたに違いない、という確信があります。

 留学生については、家族うんぬんの話は論外ですし、そもそも、学生は学業が本分ですので、労働時間も厳しく制限されているくらいです。

必要なのは「現場で汗を流してくれる人」

 さて、この「特定技能1号」「特定技能2号」を従来の外国人労働者の制度と比較してみると、我が国の「ブラック国家戦略」の姿が際立って見えてきます。

 つまり、これまでの外国人労働者というのは、日本国に国益をもたらす「エリート労働者」でした。上表の対象業務を見ていただければ明らかですが、明らかに知的レベルの高い、高給の対象となる職種ばかりです。

 ところが、今、我が国に本当に必要なのは、そういう類の労働者ではなく、「現場で、汗を流してくれる人」なのです。

 学歴不問、実務経験不問という条件が、それを示しています。その一方で、日常会話ができるレベルの日本語スキルは要求されています。これは、政府または企業に、日本国内での日本語教育を行う意思が全くない、ということです。

 実際に、対象職業は、現場で仕事を覚える実地訓練(OJT: On-the-Job Training)タイプの職種に限定されています。

 以上をまとめますと、「特定技能1号」「特定技能2号」の外国人労働者の労働環境とは、

・語学(日本語)はもちろん、IT、法律、制度、資格取得などの教育を行う意思もなく、
・専門知識を有するスペシャリストや、将来の幹部候補のジェネラリストとしての育成の意思もなく、
・出世とか昇進とかの概念が、一切ない

ということです。もうこれは、

―― どこからツッコんだらいいのか分からないくらい、完璧なブラック企業戦略

と言えます。

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