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» 2019年08月20日 10時00分 公開

イータス 佐藤義彦氏&後藤朝之氏:ETASが提案する「バーチャライゼーション」と「コネクティビティ」そして、包括的な「セキュリティ」

自動車業界では、完全な自動運転を目指した車両の開発が一段と進む。センサーやECUの搭載数は増え、データ処理量は膨大となる。ネットワーク端末としての機能も要求される。ETAS(イータス)は、車載システムの開発効率を高めるキーワードとして、「バーチャライゼーション(仮想化)」と「コネクティビティ」を挙げる。包括的な「サイバーセキュリティ」対策も自動運転には欠かせない。

[PR/EE Times Japan]
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「バーチャライゼーション」が検証作業を加速する

技術サポート部長 佐藤義彦氏

――自動運転の実現に向けて、車載システムは一層複雑となり高度化しています。ETAS(イータス)は車載ソフトウェアの開発を効率よく行えるツール群で強みを持っていますが、その基盤となる技術を教えてください。

佐藤義彦氏 「バーチャライゼーション(仮想化)」を挙げることができる。自動運転のみならず急激に変化する市場要求に対応するため、車載システムは極めて複雑となり、これを確実に検証するのは大変な作業となる。

 検証作業を効率的に行うために、「仮想化」の手法が一般的に用いられるようになった。ECU(電子制御ユニット)を始め、全てのコンポーネントを仮想化できれば、開発の早い段階でシステムの弱点や問題点を発見できる。その上、リアルタイムで動作する実機よりも、一段と高速に動作検証を行うことが可能となる。

 これを実現するためには、ECUを含め第三者が提供するモデルも組み込んで、異なるプラットフォームで開発されたモデル同士を容易に接続できるオープンな開発環境が求められる。バーチャルで検証した結果は、最終段階でリアル(実機)に落とし込む必要がある。実機検証で発見された不具合を仮想環境において再現および、対策の検討を行い、効率的な実機検証を行う。

――さまざまなモデルを柔軟に組み込むことができる統合開発環境「COSYM」も、シミュレーションとテストの工程で一貫性を確保するために、重要な役割を果たしています。

佐藤氏 COSYMは、コンポーネントモデル「MiL(Model in the Loop)」やソフトウェア「SiL(Software in the Loop)」および、「HiL(Hardware in the Loop)」の違いを認識することなく動作検証を行うことができる。ASCETやSimulink等で記述された制御モデルを始め、ASCMOモデルやOEMのプラントモデルなど、さまざまなモデルを組み込むことができるのが特長である。これによって、個々に行われていた検証作業を統合し、車両1台分の全ECUの検証を同時に行うことができる。

――ドライブレコーダー「ETAS ES820」の拡張オプションとして「リモートキャリブレーション」機能が追加されました。ソフトウェアの検証作業はどのように変わりますか。

佐藤氏 ES820は、車載制御ユニットの計測や適合、故障診断の統合制御開発環境である「INCA」に対応した製品である。実験走行中の車両などに搭載し、ECUやバス、ネットワーク、センサー、計測機器などから送られてくるデータと信号を長時間記録することができる。

「ES820」の拡張オプション「リモートキャリブレーション」の概要 (クリックで拡大)
遠隔で走行中の車両からデータをほぼリアルタイムで収集、確認できる他、遠隔から車両のソフトウェア設定を変更、書き換えも行える。

 リモートキャリブレーション機能を追加すると、技術者は事務所にいながら、インターネット経由で遠隔地に設置されたES820へリモートアクセスし、試験中の車両から、ほぼリアルタイムにデータを収集することができる。

 車載ECU内部に搭載したソフトウェアのパラメーター変更や制御プログラム自体を書き換える調整作業なども、事務所の机上から行うことができる。このため、さまざまな条件下でテスト走行を繰り返し行い、多くのデータを効率よく収集できる。その上で制御パラメーターなどを最適化していくことにより、早期に車両の完成度を高めることが可能となる。

 これまでは、テストドライバーと専門技術者がともに、中国や欧州の実走試験に出向いていた。そして、試験走行を終了した後に、収集したデータの分析/解析を技術者が現場で行い、必要に応じてパラメーターの設定を変更し、試験走行を繰り返し行っていた。事務所に戻ってから、不具合を示すデータが発覚することもあり、実機によるソフトウェア検証の作業が非効率となるケースも多かった。

 リモートキャリブレーションと仮想化技術を併用することにより、実走試験で発見された不具合発生走行パターンを仮想環境で再現、対策の検討を行う。仮想環境下で検証済みの対策プログラムを、遠隔地にある実機のECUに書き込み実機検証を行うことでより効率的に開発を行うことができる。

単なるツールベンダーではなく、問題を理解し解決する企業として

――イータスは、ECUソフトウェア開発工程をトータルにサポートできる企業として、自動車業界から高い信頼を得ています。

佐藤氏 これからは、単なる車載ソフトウェア開発のツールベンダーではなく、顧客が抱える問題点を理解し、それを解決するためのソリューションを提供できる企業に進化していきたい。

車両サイバーセキュリティへの対策は万全か

――セキュリティ事業は大きな成長が見込まれています。今後の取り組みなどを教えてください。

サイバーセキュリティソリューションズオートモーティブ&カスタマイズエンジニアリング/テスト/コンサルティングシニアダイレクター 後藤朝之氏

後藤朝之氏 ESCRYPT(エスクリプト)は、組み込み機器向けセキュリティのコンサルティングサービスを行う企業として2004年に設立された。2012年にイータスがESCRYPTを買収した。現在はイータスの一部門として、「コンサルティングサービス」と「ソフトウェア製品、ソリューション開発・販売」の業務を行っている。

 日本市場では、コンサルティングサービスとソフトウェアの事業比率がほぼ半分ずつである。コンサルティング業務では、セキュリティの脅威リスク分析から、コンセプト/仕様設計、実装、テスト、運用、エンドオブライフに至るまで、一貫したサービスを提供している。

 コンサルティングサービスとして、3つの点に注力していきたい。1つは「サイバーセキュリティ戦略の立案」である。OEMの要求仕様を満たす「管理態勢」、「リスク回避」、「法令順守」に沿った戦略作りを支援する。2つ目は、「サイバーセキュリティロードマップ、プロセスの構築」である。現状分析と、目標を達成するためのプランを提案する。3つ目は「サイバーセキュリティにおける強み形成」であり、エキスパートによる支援やトレーニングの提供をする。これらを通じて、顧客との協業関係をより一層深めていきたい。

 またセキュアな環境を構築するためのソフトウェアビジネスの倍増と運用に深く関わるバックエンド側セキュリティに関しても注力していきたい。

――自動車のセキュリティ対策について、業界の動きはいかがでしょうか。

後藤氏 国連欧州経済委員会(UNECE)傘下の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)や、車両サイバーセキュリティに関する国際標準規格「ISO/SAE 21434」など、さまざまな団体から車両サイバーセキュリティに対する指針やガイドラインが公開され、これらの法令化や標準化が着々と進んでいる。各OEM、サプライヤーもその動静を横目で見つつ、テスト、対応を進めている状況だ。

マイコンレベルから外部コネクティビティまで

――ソフトウェアの販売状況はいかがですか。

後藤氏 ECUに搭載されるマイコン向け製品から、外部コネクティビティの領域をカバーできる製品、ソリューションまで、包括的にカバーできるポートフォリオを持っている。そこが当社の強みであり、他社と差別化できる点だと認識している。

ESCRYPT(エスクリプト)が提供する自動車向けセキュリティソリューション (クリックで拡大)
ECUに搭載されるマイコン向けのセキュリティIPからセキュリティオペレーションセンター(SOC)向けのソリューションまで、コネクテッド時代の自動車に対するあらゆるセキュリティソリューションを提供している

 例えば、組み込みシステム用暗号ライブラリー「CycurLIB」や、マイコンのプログラムや暗号鍵などを守るハードウェアセキュリティモジュール「CycurHSM」がある。既に、InfineonやST Microelectronics、ルネサス エレクトロニクス、NXPといった主要半導体メーカーの車載マイコンに対応しており、これらの半導体メーカーがCycurHSMを搭載可能なマイコンを供給している。

 その他、CANバスをモニタリングし、異常な通信やメッセージなどを検知する「CycurIDS」、セントラルゲートウェイ向けのファイアウォール「CycurGATE」、バックエンド側でサイバー攻撃の分析、攻撃種類を分析する「CycurGUARD」などを用意している。防御、検知、対応、予測のプロセスと多層防御のコンセプトは自動車セキュリティでも必須であり、セントラルゲートウェイ装置でのセキュリティ対策は一層重要となる。また、スマートキーソリューションとして「CycurACCESS」を提供している。スマートフォンを利用してイグニッションのオン/オフ、ドアの開閉制御を行うなど、完全なキーレスとシェアリング環境を実現できるソリューションである。さらにOTA(Over the Air)に向けたセキュリティ機能として、「CycurTLS」や「CycurKEYS」を提供している。

――OEMごとに異なる鍵管理仕様を、単一システムで対応可能なシステムも提供されています。

後藤氏 現在はOEM毎に鍵管理の仕様が異なる課題や、複数の「暗号鍵」を複数の管理組織:「IT部門」「工場部門」「開発部門」がバラバラに管理しており、今後ますます複雑化することが、課題となっている。イータスは、次世代の鍵管理システムを開発中であり、これまで分散していた鍵管理を統合、集約することができ、拡張性を保ちながら柔軟に対応することができるソリューションを提案したい。


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提供:イータス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月19日


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