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» 2020年01月31日 11時30分 公開

江端さんのDIY奮闘記 介護地獄に安らぎを与える“自力救済的IT”の作り方(4):見せろ! ラズパイ 〜実家の親を数値で「見える化」せよ (1/6)

介護にまつわる話題において、よく聞かれるのが「誰にも迷惑をかけたくない」という言葉です。この“迷惑”という観念に対する対処法を考える時に、外せないのが「尊厳死」と「安楽死」です。被介護人が、全く意思疎通ができない“ブラックボックス”のような状態になった時、あなたならどうするでしょうか。そして、自分がその立場ならばどうされたいでしょうか。後半では「ラズパイ」を使い、実家の親の日常を数値とグラフで「見える化する」方法をご紹介します。

[江端智一,EE Times Japan]
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人材不足が最も深刻な分野の一つでありながら、効率化に役立つ(はずの)IT化が最も進まない介護の世界。私の実体験をベースに、介護ITの“闇”に迫りつつ、その中から一筋の光明ともなり得る、“安らぎ”を得るための手段について考えたいと思います。⇒連載バックナンバーはこちらから





父の他界にまつわる私の決断

 私の父が死亡したのは、2018年7月28日でした。

江端智一

2018年7月28日(土) 7:26

To 江端家メーリングリスト

本日、6時頃、じいちゃん逝きました。

お通夜は、明日の予定です。

本日は皆通常通り過ごして下さい。

追って連絡致します。

パパ


 上記は、父が亡くなったとの連絡を受けた私が、家族のメーリングリストに送付したものです。私は、新横浜駅に向かうJR横浜線の中で、姉から知らされました。

 電車の中での電話はマナー違反だったと思いますが、『そうか……、じいちゃん(父)、逝ったか……』と呟くようにしゃべっていた私を、とがめる人はいませんでした。



 私の日記の内容を、以下に掲載します。

父は、(2018年)5月頃から食欲が激減し、7月には、栄養補給飲料を、一日で湯呑み一杯飲むのがやっとという状態になっていました。

その後、父が、ヘルパーさんに、無理矢理に、お粥を食べさせられている姿をみて、私は、ショックを受けました。

姉に、そのことを告げたら『世の中の介護の現場のほとんどは、そんなもんだ』と言われて、さらにショックを受けたのを覚えています。

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父は、7月に食物摂取ができなくなり、病院に入院したのですが、7月下旬、病院から電話があり、『父が、食事、水はもとより、点滴ですら、苦しむようになってきた』と、報告してきました。

私は、父の入院時に、主治医の先生に、しつこいくらい『1ミリメートルでも苦痛がある、または、苦痛が発生する恐れのある医療行為は、全て止めて欲しい』と、念を押し続けていました。

それでも、病院は、電話で、最後の、そして、最期の判断を私に求めてきました。

私はその場で『水、食事はもとより、点滴も中止して下さい』と、返事をしました。

その後、姉は、私の決断を支持してくれましたが、私の家族はビックリしていたようです。

嫁さん:「『それ』って、『そう』いうこと?」

江端:「『そう』いうことだ」

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父は、生前から、自分の最期について、自分の意思を明かにせず、「全てを私(江端智一)に任せる」と言っていました

これは、ある意味、他人に人生の決定を丸投げする「ずるい」言動とも言えるかもしれません。

しかし、父には、私に対して、「私(江端智一)なら、その状況に応じた最適戦略を実行できるハズである」という信頼もあったと思っています

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そして、私は、この父の言葉を

「私(江端智一)が父と同じ状況になったら、私(江端智一)なら何を望むか」

を考え、それを

「回りの意見に左右されることなく、自分(江端智一)の意思で、その望みを実施しろ」

と語っていると、解釈しました。

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「病気」も「法律」も「制度」も「医師」も、父を『楽』にさせて上げることができない、この社会システムの中で、息子である私ができることは、

―― 例え『父殺し』の罪の意識を、一生引き摺っていくことになろうとも、

―― 父を『殺す』決断を下すこと

これが、私が導き出した答えです。




 こんにちは、江端智一です。

 「介護IT」シリーズの第4回です。今回は、介護プロセスの最終フェーズ、「死」について考えてみたいと思います。

 今回の前半では、「致死率100%」の私たちについて、「介護者」と「被介護者(要介護者)」としての両方の立場から、私たちが、「今」考えておかなければならないことを、私の経験から述べてみたいと思います。

 具体的には、

  • 介護者となった自分が、他人、特に親について「死」について判断が要求される場合

と、

  • 被介護者となった自分が、他人、特に子どもについて「死」についての判断が要求させる場合

について……。



 ――ダメですね。この書き方では、どっかの偉い大学教授や法律学者や政治家の言い方と大して変わりません。

 ここは私のコラムらしく、もっとダイレクトに書いてみましょう。

(1)あなたは、自分の親を殺せるか?
(2)あなたは、自分の子ども(または縁者)に殺される準備ができているか?
(3)あなたは、自分の希望する殺され方を第三者に伝えているか? 特に、自分の子ども(または縁者)に、自分の殺され方の選択肢や現行の制度、その手段や合法/違法性についてきちんと教育、または、話し合いをしているか?

について、お話ししたいと思います。

 今回のコラムも、こちらこちらと同様に、不快な気持ちになりたくない人、不愉快な気分を避けたい人は、このページで本コラムを読むのを中断してください(読み終えた後のクレームはご遠慮ください)。

 また、後半では、前回に引き続きAmazonで5000円程度で購入できる、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、以下ラズパイ)」を使った、実家の老親を見守る最小システムで、実家の親の状態を数値とグラフで「見える化」する方法の一つをご紹介致します。

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